米国を見る目

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原油価格が1バレル90ドル台に突入する中で、ようやく国際社会で目に見えて動き出したものがある。それは、石油市場が売り手市場となりつつある中で、国家や企業が省エネルギー化やエネルギー・シフトに真剣に取り組み始めたことである。
米国の例でいえば、11月1日にSecuring American’s Future Energy(SAFE)が、ヤーギン元エネルギー長官、ルービン元財務長官、アーミテージ元国務副長官等の参加により、原油価格高騰時のシミュレーションを公開で実施した。そこでは、アゼルバイジャンとナイジェリアでの混乱とイランやベネズエラの原油供給削減があわせて起きることで、原油価格が1バレル160ドルを超えることになったケースを想定したロールプレイが行われた。
2003年3月のイラク紛争前に、チェイニー米副大統領やラムズフェルド国防長官(当時)が恐れていた「原油価格高騰下での売り手市場」というシナリオが現実のものとなりはじめている。一般的には、この状況になると、外貨準備が乏しい開発途上国などがエネルギー資源の安定的供給を受けることが難しくなる点、また供給側の産油国にオイル・マネーが蓄積され、経済・政治的発言力が増す点などが懸念されるといわれてきた。しかし、両氏はそれ以上に、そうした段階に至る前に、中国やインドがペルシャ湾岸諸国に接近することで、同諸国への兵器の拡散や反イスラエル政策が立案・実施されることなどを心配したようだ。米国のインドとの核支援もこの文脈の中にあるのだろう。
そして、11月1日、サウジアラビアのサウド外相がMEED誌に、湾岸協力評議会(GCC)がイランの核開発計画に対し、濃縮ウラン供給を行うと提案した(中東以外の中立国(スイスなど)でのウラン濃縮プラント建設で共同利用)。つまり、産油国が自国のエネルギーの原子力化を推進することで、石油・天然ガスの自国消費分をできるだけ国外販売にまわし、外貨を稼げるようにエネルギー・シフトしようとしているのだ。これは、イランの核開発の平和利用を方向付けることになるだけでなく、エジプトなど核開発を希望する他の中東諸国にも対応できる。また米国にとっては、ロシアが濃縮ウラン市場で優位に立つことを阻止することにもなるだろう。
国際社会が原油市場が売り手市場になっているとの認識の下、中東政策やシーレーン防衛に努めている。しかし、日本社会では、まだ、水も安全も安価に手に入り、エネルギーは国際市場で買えばよいのだと考える向きが強いのではないだろうか。世界の人口増加や生活水準の向上で、食糧もエネルギーも国際的に売り手市場になっていることは確かである。
米国が「民主主義」や「自由」を打ち出し、そうではない体制のレジューム・チェンジを提唱する意味は、民主主義ではない国家が、売り手市場の資源争奪戦の中で力を増していくことを恐れているからかもしれない。
チェイニー副大統領の2003年のシミュレーションがあまりにも長いリードタイムであったので、国際社会の多くの人はその認識を共有できなかったのかもしれない。しかし、現在の“100ドル原油”を目前にした状況で、国際社会は「売り手市場」の意味を真剣に受け止め始めているように思う。こうした観点からも、産油国からも感謝される海上輸送の安全保障に関係した国際協力を行う必要があるといえるだろう。インド洋上の海上阻止活動の意義はこうしたところにも見出せるのではないだろうか。


☆2006年2月28日のブログ「イランの核開発問題における日本の役割」http://blogs.yahoo.co.jp/cigvi2006/27136946.html もご参照いただければ幸甚です。

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