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米国では、この半年で3月にはベア・スターンズ、9月にはリーマン・ブラザーズとメリルリンチが市場から姿を消した。その要因は、危機を回避するためにつくられた金融商品が、逆に危機を拡散させたことだと指摘できるだろう。そして、この危機の根底には、規制緩和により証券業務と銀行業務の垣根を取り外してしまったところに問題があるのではないかとの分析もある。それというのも、証券業務は金融ビジネスではあるが、顧客の預かり資産と自己勘定とを分別管理しており、銀行とは比較にならないほど資本基盤が弱い。したがって、証券企業がメガバンクとの競争の中で勝ち残るために無理な経営をすることもあると指摘されている。
さて、このような世界的な金融分野での激変は、短期的には原油価格の下落や湾岸アラブ産油国の株式市場の急落という影響を中東社会に与えている。では、中期的には同地域にどのような影響を与えるのだろうか。以下に湾岸アラブ産油国を例にとって見てみる。 昨年来、米国の金融制度が揺らぐ中で、米ドルへの不信感が高まった。このことで商品先物市場に投資資金が流れて原油価格が高騰、今年7月11日には1バーレル147ドルという市場最高値をつけた(WTIでの10月物の9月16日の終値は91.15ドルにまで下がっている)。これにより中東産油国の石油収入が拡大し、湾岸アラブ産油国では建設ブームが起きている。 その一方、ドル安により湾岸アラブ産油国が抱えるドル資産の価値が下がっている。また、自国通貨を米ドルと連動させるドルペッグ制をとっているため、ドル安は自国通貨の価値も下げることになる。このため、輸入品を中心に物価が上昇している。例えばアラブ首長国連邦の2007年のインフレ率は11.1%に上っている。このインフレは庶民(特に外国人で稼ぎ労働者など)の生活を直撃している。その反面、インフレ下での投資により蓄財する人々も出ている。 イスラム世界では、こうした投資により利益を得ている人々はグローバル化における格差社会を助長していると捉え、イスラムの公正に反すると主張する者もいるという。その一方で、ハイリスク・ハイリターンの商業行為として認め、イスラムでは、それにより得た富をどのように配分するかが重要なのだと見る者もいる。前者の中には、イスラム過激派武装グループに加わる者もいる。また、後者の中にも分配の公平性を求めようと政治運動を行う人々も出てきているという。 こうして見ていくと、湾岸アラブ産油国ではテロやクーデタの可能性が少しずつ高まっていると言えるのかもしれない。また、女性を含めた政治参加への要求、さらに民主化、自由化を求める動きへという現在の政治体制に影響を与える出来事が起こる可能性も出てきている。そして、こうした市民の政治・社会参加を十分意識しつつ、湾岸アラブ産油国の指導者たちも、各国の未来像を描きはじめているようだ。 米国での金融規制緩和は現在の経済危機を招いたのだが、その中で、個人の規範認識のあり方も変化させている。グローバル化の中、生活規範としてのイスラムがどのような影響を受けるのかにも注目したい。 |
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今晩は。
原油の収入が増えると別の面でテロやクーデターの脅威にさらされる原因になるとは。
2008/9/17(水) 午後 9:34