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9月19日、政府は海上自衛隊のインド洋での補給活動に関し、新テロ対策特別措置法を閣議決定し、活動の延長の方向を示した。しかし、同法案は、臨時国会での衆議院の解散状況次第では、審議さえされないことになる。そこで、この状況下において日本人として考えるべき事は何かについて述べてみたい。
今後の日本の政治動向はマスメディアの報道などから見て、臨時国会に絡み次のようなシナリオが考えられる。(1)冒頭解散、(2)首相の所信表明演説、代表質問後に解散、(3)補正予算を通した後に解散、(4)補正予算を通し、新テロ対策特別措置法の審議入り後に解散、(5)臨時国会終了後に解散。また解散時期は、新内閣の支持率次第であり、高ければ早く、低ければ遅いとも言われている。
こうしたことに鑑みれば、新テロ対策特別措置法が成立する蓋然性はかなり低く、再び、インド洋での補給活動が停止することになる可能性が高い。
この補給活動は2001年1月12日から本年8月末まで(2007年11月〜本年2月の間、一時中断)、11カ国の船に49万キロリットルの給油を行い、国際的に高い評価を受けている「テロとの戦い」における海上阻止活動への支援活動である。しかし、日本社会では、「テロとの戦い」という言葉から、集団自衛権論争やイラク戦争論争とイメージを重ねた議論がなされ、実施目的、体制、計画、効果などの本質を十分議論できないでいる。
さらに、今年8月に私がバハレーンを訪問した際、日本の国会議員やジャーナリストが同国を訪問し、海上自衛隊の活動状況を見聞しているとの話を耳にした。これまで、こうした現地で得た情報で、日本国民が抱いている疑問に答える努力がどれだけなされたのだろうか。
例えば、昨年国会で話題となった米艦船が日本からの給油を受けた後にイラク作戦に参加した「転用問題」について、米政府は軍事的な問題でありながら使用明細や資料を日本の国会に提出している点、また、日本の補給活動再開後、米艦船への給油が低下している現状は、これまでに十分伝えられてきただろうか。
国会議員やジャーナリストの多くは、バハレーンなどの現地視察を通し、補給活動継続の意味を理解して帰国したといわれているが、そのことを日本国民に伝えることにはあまり熱心ではなかったようである。それは何故だろうか。
また、日本が補給活動により支援しているインド洋上での多国籍軍の活動は、国際テロ・グループのソマリア、イエメン、アフガニスタンなどの活動拠点間の移動や物流を海上で阻止するという本来の監視活動に加え、この海域での海賊行為対策ともなっている。この点の説明が政治的思惑からか、おろそかにされる傾向にある。それは何故だろうか。
この海域は、世界最悪の海賊事件多発海域と言われており、9月19日にもギリシア貨物船が乗っ取られた。今年55件目の事件である。国際海事局によると、海賊はアデン湾からソマリア沖に活動範囲を拡大している。このアデン湾を通行する船は年間2万隻を数えている。そして、2008年6月、国連安保理事会は海賊対策を強化する決議を全会一致で採択した。その決議内容は、(1)ソマリア政府による海賊船への追跡補足のための領海侵入の承認、(2)ソマリア政府への海賊掃討のための技術支援、(3)アデン湾での米海軍の監視作戦の強化である。
この海域での海賊は単なる物取り行為を行っているだけではなく、イスラム過激派武装グループが関与しているとも言われている。このような海賊やテロリストに日本船が出会った際、監視船によって守られ危機を逃れることができたケースは数度にわたっている。つまり、日本船の安全は、国際協調行動によって保たれているのである。
9月18日、米議会調査局(CRS)は、日本が政策決定の混乱期に入る可能性が高いとの分析をまとめ、インド洋の補給活動は少なくとも中断が避けられない、と指摘している。国際社会は、日本の補給活動について概ね同様の見方をしているだろう。さらに最悪のシナリオとして、日本の活動が終わることも考慮に入れているだろう。
日本社会では、警察や自衛隊が存在することで、国内の「安全」や「平和」が保たれていることは理解されていると見てよいだろう。しかし、国際社会の安全や平和は、誰がどのような努力を行うことで構築されているのかについての考察、認識は、深められていないのかもしれない。
ブッシュ政権が終わりに近づき、9.11米同時多発テロから7年が過ぎ、米国内でも「テロとの戦い」のあり方が問われ始めている。私は、日本においても、今こそ、「テロとの戦いとは何か」「国際協調とは何か」について国民レベルで再度、問い直すべきではないかと考える。

※なお、新テロ特措法延長問題について、9月19日付「読売新聞」の論点に寄稿いたしました。

閉じる コメント(6)

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内閣や国会は国民にどうして海上給油が必要なのかを説明をしてない。
首相がTVで必要性を述べても良いのではないか。
又はネットを利用して説明をすべきと思います。
国会審議で充分と思ってるのか、、、と何時も思います。
何時も『大本営発表』です。

2008/9/20(土) 午後 11:00 Jhon-J

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(上)一点だけ事実誤認が見られます。

日本が支援する海上阻止行動(OEF-MIOに限定)はあくまでテロ対策であり海賊行為対策でありません。海賊対策については本来、各国の沿岸警備隊の守備範囲であり、その範囲内で対応しきれない案件について個別に各国軍隊が出動して補完的役割を担っているというのが実情です。しかしこれにOEF-MIOに関わる艦船が直接従事したという事実はありません。仮にOEF-MIOによる海上阻止行動が有効に行なわれているのであれば、先般起きたようなソマリア沖での米軍の緊急出動という事態は起こらなかったでしょう。

2008/10/7(火) 午前 10:57 UNEPS

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(下)たとえばEUは、今年9月19日の理事会決定として、やっと軍事面での調整を開始することを決定したとあり、この活動を6月に採択された安保理決議1816号に基づいて実施すると明記しています。つまり、海賊対策に関する実効的な国際的枠組みはまだ発動されておらず、まずEUという地域的枠組みで発展途上にあるということです。

ソマリア沖がOEF-MIOの作戦海域にあることから推察されたのかと思いますが、作戦海域にあることと任務内容に海賊対策が含まれるか否かは別です。したがって、海上阻止行動を海賊対策と同じ文脈で語るのは筋が違うのです。

さらにいえば、OEF-MIOは国連安保理により承認された軍事行動ではありませんので、OEF-MIOの任務内容と後発の安保理決議が求める要請内容は現時点では一致しておりません。

文責:参議院議員犬塚直史事務所・外交政策担当 勝見

2008/10/7(火) 午前 11:01 UNEPS

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ご意見有り難うございます。法解釈や現実認識の問題については、観点の違いでいろいろな考え方があると認識しています。
私は、グローバル化が進む中ではウルリッヒ・ベック博士が指摘されているように新たな国際公共を生成させる必要があると考えています。現実には従来の法や慣習では解決できず、多様な観点で最善策を協議を重ね施策しても、秩序や協力が生成できないこともありますね。

2008/10/8(水) 午前 8:18 [ cigvi2006 ]

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意見させて頂いた勝見です。

私の私案では、日本はOEF-MIOへの関与をやめてインド洋に展開している艦船をそのまま海賊対策に回すべきではないかと考えています。どうやらソマリア沖では、これからNATOを中心に本格的な軍事行動が展開されるようなので(TB先のコメント欄をご覧ください)、日本はこれのサポートに回ってそこで「情報の輪」に入って対テロ活動支援も行えばいいのではないかと思っています。代わりに、OEF-MIOからは完全に身を引き、「紛争当事者」から「和平当事者」へと転身してアフガンでの和解工作に乗り出すべきだと私は考えております。しかしそんな臨機応変な発想は政界のどこにもないようです。

2008/10/10(金) 午前 9:25 etranger3_01

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なかなか興味深いアイデアですね。私も貴殿に触発されて、アフガニスタン対応について本日のブログで書いてみました。

2008/10/10(金) 午後 10:02 [ cigvi2006 ]

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