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5月16日、移民政策学会の年次大会が明治大学で開催された。発足1年余りのこの学会には多様な研究者や実務家からなる約250人が所属しており、興味深いテーマが取り上げられている。ちなみに、17日も多様な自由報告会に加え、緊急ワークショップ「雇用不安と在留管理」およびシンポジウム「日本の難民政策は変わっているか」など時宜にあったテーマが予定されている。 本日は、2つのミニシンポジウムが同時に開催された。1つは、「最近の入管政策の国際比較」であり、韓国、ドイツ、フランスについての報告で、もう1つは「日本の留学生政策の再構築」であった。どちらに参加しようかと悩んだ末、学務との関係もあり、後者を選択した。そこでは、この3月まで就任していた本学の国際交流センター長時代に悩んでいた問題について意義深い議論を聞く事ができた。それは、日本において「国際理解」や「多文化共生力」が不足している中で、少子高齢化社会が到来したからといって外国人労働者を本当に受け入れられる素地ができているのか、という問題であった。 外国人留学生の受け入れは、その最前線であり、問題点が端的に現れる場だといえる。現在「留学生30万人受け入れ計画」のもと、日本で高等教育を学ぶ外国人留学生を増やし、卒業後は日本企業に就職させるという留学生政策は、「高度人材受け入れ」の移民政策を念頭においての施策である。このように1つの政策に2つの目的を持たせることには無理がある。 そもそも、大学の国際化が進み、日本で学問を行うことに関心を持つ外国人が、日本の大学を留学先に選択することが通常のプロセスであろう。しかし、日本の政策は、外国の高度な人材や人材候補者に日本の大学や大学院で教育を受けてもらい、彼らを日本企業や社会に提供することを目指している。その一方、日本企業が採用の際に外国人に求めている日本語や日本事情の認識、日本社会でのコミュニケーション力や適応力などの能力は、大学や大学院で学ぶことだけで身に付くものではないだろう。もちろん多くの大学は、そうした能力を身につけるとくべるカリキュラムを整備しようとしているだろうが、「日本人と同様に考え行動する外国人」になってもらうことが果たして良いのかどうか、疑問である。 また、現在の政策で日本政府が大学に求めているのは、外国人教職員数の増加や英語での授業の開講数の増加などの課題に取り組むことである。しかし、外国人留学生が外国人教員から英語で授業を受けることを推し進めることは、「日本の大学で学ぶ意味」を見失わせかねない。また、日本企業は知日家を求めこそしても、そうした人材を求めているわけではないだろう。 やはり、外国人留学生政策は、一人一人が抱いている「夢」を日本で実現できるよう支援し、知日家、親日家を育てることに主軸をおくことが重要ではないだろうか。 今回参加したミニシンポジウムで、留学生政策および高度人材受け入れ問題について、日本の大学のみならず、地域社会、企業における多文化共生力を高める事が重要だとの意見があった。この点は、私も以前から折に触れて言及してきたことであり、大いに賛成である。ただ問題は、その課題に具体的にどう取り組むかである。大学、地方自治体、企業もそれぞれの現場が試行錯誤し、悩んでいるのが現状であろう。 文部科学省によると、2008年5月1日付の日本の外国人留学生数は12万3829人である。留学生30万人計画は、2020年を達成目標年としている。日本社会の受け入れ準備が進まぬまま、この政策を推し進めようとしても目標を達成することは難しいだろう。また、無理を通した負の副産物も生じることを改めて確認できたミニシンポであった。
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