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5月26日、約1ヶ月にわたってニューヨークで開催されていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議が閉幕した。10年ぶりに採択された会議の最終文書では、核軍縮について「付加逆性、検証可能性、透明性」の3原則が謳われた。今回の会議は世界の核不拡散体制にとって小さな一歩ではあるが、「核なき世界」に向けて国際社会が動き始めたことは確かである。
報道でも、今後の課題として①米国とロシアの核軍縮の行程を早めること、②中国をはじめフランス、イギリスの核兵器管理に関する情報公開性を高めること、③核兵器保有国である北朝鮮、インド、パキスタン、イスラエルのNPT加盟があると指摘されている。
なお、イギリスは26日、会議の最終文書が公表される前にヘイグ外相が、同国保有の核弾頭数は225発であることを明らかにした(これまで配備数は160発であることのみを公表)。すでに米国は弾頭数(5113発)を公表しており、今後も核保有国の情報公開が進み、信頼関係が醸成されることが期待されている。
一方、イランの核開発およびイスラエルの核兵器保有の実態という、中東地域の2つの不透明な問題に関しては、あまり進展が見られなかった。
これらの問題に関し、1ヶ月の会議期間中にいくつかの動きが見られた。
例えば、5月24日付ガーディアン紙が、1975年にイスラエルが南アフリカに核兵器を売却しようとした外交機密文書を入手、公表した。イスラエルは約200発の核弾頭を保有していると分析されているが、同国がこのような核兵器取引を行っていたことについて明らかにされたのは初めてであった。
イスラエルの核兵器保有に関しては、アラブ諸国側から、NPTへの加盟を含め国際社会に対し究明するよう求めているが、イスラエル側は地政学的観点から、NPT加盟や2012年開催予定の「中東非核地帯構想」に関する国際会議への参加に否定的立場を変えていない。
また、注目されるイラン核開発問題については、5月27日にブラジルとトルコがブラジリアで首脳会談を持ち、両国とイランの合意に基づくイランの核開発問題への対応(低濃縮ウランの国外移送計画)をベースとして、国連安保理による対イラン制裁を回避させることを確認した。さらに、トルコは6月にカナダで開催予定のG20首脳会議でイラン問題を取り上げるよう働きかける意向を示している。
こうした動きは、米国にとって、これまで核兵器の拡散防止問題として取り扱われてきたイラン核開発問題を、核兵器保有国が核管理をする現行の体制への挑戦手段として使おうとする試みだと思えるのだろう。5月27日、クリントン米国務長官は「米国とブラジルの間に深刻な意見の相違がある」と述べている。
中東地域の非核化問題は世界全体の安全保障に関わる問題である。しかし、石化エネルギーから原子力や新エネルギーへのエネルギー・シフトが進められる中で、本音と建前を使い分け、同問題を利用して自国の経済発展という国益を追求しようとする国家も現れはじめている。
G8がG20に拡大される際、多様な意見が議論されるようになると、「国際公共善」に関する意見集約は一層難しくなるだろうと懸念されていた。
その中、少なくとも日本は唯一の被爆国として、また原子力や新エネルギーに関する技術大国の1つとして、核の平和利用や核軍縮問題でより積極的な役割が果たせたはずである。しかし、7月の参議院選挙を前にした現政権は、6月末に発表予定の経済成長戦略や政策レヴューといった国内向けの政策の方がより重要と判断したように見えることが残念である。
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