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アイルランドの経済危機は、ポルトガル、ギリシャ、スペインに感染する恐れがあり、欧州金融市場の安定性を脅かしている、との声が高まっている。しかし、アイルランドの閣僚の中には、同国は来年の6〜7月まで政府事業に必要な資金を確保しており、EUやIMFからの緊急援助を受ける必要はないと述べている者もいる。
90年前、苦難の末に独立を勝ち取ったアイルランドの人々にとって、援助によって独立性を損なうことは耐え難いとの声もある。
こうした状況に直面しているアイルランドがリーマン・ショックの際にとった対応策は、果たして間違いだったのだろうか。
アイルランドでは、リーマン・ショックにより住宅相場が暴落し、税収は減少し、経済成長はマイナスとなった。同国政府はこれらに対処するため財政支出の抑制に取り組み、公共部門の人件費(教員、看護師など)をカットした。また、銀行に対しては不良債権の買い上げや資本注入などを行った。こうした対応について、11月18日付ニューヨーク・タイムズ紙は、「銀行家の理想を体現するもののように見えた」と評価している。
しかし、問題は、この銀行救済費用がGDPのおよそ3分の1に当たる約700億ドルに上ったことである。このため、財政赤字はGDPの32%となり、2014年にはGDPの150%にまで膨れ上がると予測されている。
現在のアイルランドの政権にとって、この政府支出をどうやって補うかが大きな課題となっている。その手段としては国債や支援が考えられる。
国債については、日本と異なり外資保有率が高く、2009年で85%(今年第2四半期では65%)である。そして、その利回りは高止まり傾向にある。
こうしたことから、将来不安であることは確かである。しかし、まだ独自の金融政策がとれる状況にあるように思う。
アイルランドの現在の最重要課題は、ユーロ通貨圏の他の国に経済危機を感染させないよう取り組むことである。
EUに加盟し、ユーロの単一通貨を利用する以上、ユーロ圏の深化のために自国の財政政策の独立性が低下することは受け入れねばならないことである。イギリスはそれを嫌い、通貨統合には加わっていない。
今後、EUはアイルランドに対し、財政支援をカードにして同国の法人税率の引き上げを提案することもあると言われている。アイルランドの法人税率の低さは、アイルランドが特色として打ち出してきた政策である。その国民国家としての特色を手放さざるを得ない状況に追いこまれる可能性も出てきた。
地域経済統合に加わった小国の政策運営の難しさがそこにある。
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