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319日、リビアにおいて仏英米をはじめとする多国籍軍により、国連安保理決議1973号に基づく対カッザーフィー政権への軍事力行使がなされた。
今回の軍事作戦は、17日の安保理決議の採択、19日のパリでの外相級会議(仏英米の外相、アラブ連盟事務局長などが参加)を経て実施された。
同作戦は「オデッセイの夜明け」と名付けられ、19日は、フランス軍機(約20機)がベンガジ周辺(100km150km四方)に展開するカッザーフィー政権の戦車・軍用車両を攻撃する一方、米英の艦船や潜水艦から110発以上の巡航ミサイル(トマホーク)が約20カ所の防空拠点に向け発射された。
リビア国営テレビは、この作戦で、リビア市民48人が死亡、150人が負傷と報道。
この多国籍軍の攻撃に対し、20日、カッザーフィー氏は国営テレビに出演して、これは第2の十字軍による侵略行為だと非難し、国民に武器を持って自国の防衛に立ち上がるよう呼びかけている。
また、安保理決議1973号の採択で棄権したロシアと中国は、軍事介入について遺憾の意を表明した。
 
以上に見るように、今回の軍事介入は、国連決議に基づき、アラブ連盟、アフリカ連合も承認する行為として、合法性は確保されている。
では、米国のパウエル元国務長官が軍事力行使の原則としていた緊急性、必要性、均衡性という観点で検証したらどうだろうか。
 
緊急性については、少し問題があるように思う。
カッザーフィー政権は、17日に安保理決議の受諾を宣言し、18日にはリビアのマフムディ首相が国連事務総長に直接電話をし、決議に厳密に従う旨を伝え、軍事行動をやめさせるよう国連に仲介を依頼している。
しかし、19日にはカッザーフィー政権が軍事行動(ベンガジへの空爆など)を実施したうえ、カッザーフィー氏が仏英首脳に向けて発したメッセージの内容(介入すれば後悔することになる)などから、同政権の停戦宣言は時間稼ぎであるとの見方が国際社会に強まった。
だが、国連の潘基文事務総長が求めた停戦宣言の「立証」の機会を、カッザーフィー政権に与える時間はなかったのかとの疑問が残る。
 
必要性については、「保護する責任」(人道的観点)に鑑みれば、妥当性があると評価できる。
 
3の均衡性は、市民の保護を目的とするのであれば、飛行禁止空域の確保のための攻撃にとどまるべきである。したがって、フランス空軍によるベンガジ周辺でのカッザーフィー政権の戦車・軍用車両への攻撃の妥当性には疑問が残る。
 
今回の多国籍軍による軍事行動の最大の疑問点は正当性の問題ではないだろうか。カッザーフィー側が停戦宣言を行った直後に、反体制勢力側がカッザーフィー氏の退陣要求を出して停戦を破棄したことに協調して、軍事行動が起こされたことである。これは、安保理決議の運用上、中立性が担保されていないと言えるのではないだろうか。
欧米のメディアでは、リビア問題について、チュニジア、エジプト同様の市民による社会・経済改革運動が力(軍事行為)によって抑え込まれているとの認識から報じられることが少なくない。そこでは、人道支援という普遍性の意識が働いていると言える。
しかし、米外交評議会をはじめ欧米のシンクタンクのいくつかは、現在のリビア情勢を、部族社会の内部対立の激化(内戦)と見ている。そうだとすれば、一方に偏った形で、人道支援のための軍事力行使をすることに妥当性はあるのだろうか。また、カッザーフィー政権が打倒されることで23の暫定政権が誕生する可能性があると分析していた。この分析からすれば、新たにできた政権自体が、自由で民主的な市民国家への道を歩むとは限らないことになる。
 
なぜ、欧米は反カッザーフィー政権勢力の側に立ち、軍事力まで行使するのだろうか。
仏英をはじめとする欧州諸国は、リビア問題が長期化することで、原油価格の高騰、アフリカからの不法移民の増加など自国の経済リスクが拡大することを懸念している。また、各国首脳が抱えている問題――英国のキャメロン首相:急激な財政再建政策への批判、フランスのサルコジ大統領:来年の大統領選、米国のオバマ大統領:来年の大統領選――に絡んだ思惑もある。さらには、国連決議を守らないイラン、シリアを視野に入れていることも考えられる。
こうしたことを踏まえ、多国籍軍は、国際刑事裁判所のカッザーフィー氏に対する措置を待つことなく軍事介入を決断したのではないだろうか。
 
国際社会は、2003年のイラク戦争以降、国際秩序のありかたを模索してきた。しかし、未だにその基準はつくられることなく、各国の指導者の思惑や国益が優先された形で国際介入がなされている。
こうした現実の中、また一つ国際紛争がはじまり、多くの人命が失われることを残念に思う。

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状況が良く解かりました これまでも 他国への軍事介入は 人道上とか言いますが 誰にとっての人道なのか 今回の日本の原発事故に対して 国内と海外の見方に 驚くほど大きな差があります 本当にその国民が望んでいるのか 避難も出来ずに惨殺されているのか
私もリビア介入には 疑問が残ります

2011/3/20(日) 午後 8:44 [ コロン ]


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