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3月2日、イランで任期満了に伴う国会議員選挙が実施されている。一方、ロシアでは3月4日の大統領選挙を前に、プーチン首相の選挙活動が活発化している。
選挙を実施する両国の社会的共通点としては、(1)一部の知識層や中間層からなる反体制デモが行われている、(2)リーマン・ショック後、国民の所得が伸び悩んでいる、(3)物価高が市民生活に影響を与えている、(4)行政機構内で汚職や縁故主義が見られる、(5)インターネットへの監視を強めている、(6)生活格差が拡大しているなどが挙げられる。
また、両国共通のキーワードは「体制」ではないだろうか。
ロシアには、全体主義から資本主義への移行期に起きた混乱の苦しみが今でも国民の記憶に残っていることで、社会の現状に不満を抱きつつも体制変化のリスクを恐れる人々が少なからずいる。その人々と既得権益者と合わせると、体制支持者は半数近くになると見られている。
イランでは、1979年のイラン革命体制(イラン・イスラム共和国)におけるイスラム法学者の統治体制(ベラヤティファギ)を守ることに強く固執する革命関係者を中心とする既得権益者と、社会生活レベルでの自由化を求める市民の意識の溝が広がりつつあると思われる。
さらに政治指導層内部では、対外的危機(例えばイスラエルによる攻撃、欧米の内政干渉)をアピールすることにより、不満を高めている国民の意識を外に向けようとするアハマディネジャド大統領の路線と、イスラム体制を強固にすれば外圧に対応できるとするハーメネイ最高指導者との路線対立が2011年4月から表面化していた。
この保守派勢力内の路線対立の影響は、アハマディネジャド大統領の勢力基盤だと見られていた革命防衛隊内部にも広がっている。
この両陣営の対立の様相が今回の国会議員選挙で変わろうとしている。それというのも、国会議員候補者資格審査において、イスラム法学者の影響力が強い憲法擁護評議会が大統領側の候補者を非資格としたため、定数290人の多くが保守派でハーメネイ師路線の議員によって占められる結果となることが予想されているためだ。
イランの一般市民は、このような状況の選挙にあまり意味を見出していない。
また、アハマディネジャド政権は、その政策が「ねじれ国会」によって承認を受けられない状況が生まれ、2013年6月の大統領任期まで1年以上を残してレームダックとなると考えられる。
こうしたイランの政治状況は核開発問題に関する国際協議にどのような影響を及ぼすだろうか。
一般的には、保守体制が強化されることから、交渉は困難になるとの分析が大方ではないだろうか。
しかし、故ホメイニ師やハーメネイ師(最高指導者)をはじめイラン革命を起こした政治指導者たちが貫いてきたことは、「革命体制の堅持」である。例えば、その目的のために、ホメイニ師はイラン・イラク戦争において「苦渋の選択」だとの表現を使いつつ平和を選んだ。
国際社会が、この点を認識し、イラン革命体制の権威を傷つけないような交渉ができれば、核開発問題の解決の糸口が見つけ出せるのではないだろうか。
その際、イラン革命以来、イランと米国の間で何度となく話し合いのパイプをつないだ日本の外交の経験が生かせるのではないかと思う。
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