中東地域情勢

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<シーア派ベルトの意義>
イスラムにとってもエルサレムは聖地である。そのエルサレムは第3次中東戦争(1967年)で全体がイスラエルの占領下に置かれることになった。そして、19807月、イスラエルはエルサレムを「永遠の首都」と宣言した。
そのエルサレムの解放のための戦いは、イスラムの人々にとって聖戦である。
 
イランが、レバノンのヒズボラ、シリア、そしてパレスチナのハマスとともに強硬的な対イスラエル闘争を展開するのは、この聖地の回復が目的だといわれている。
また、一方、聖地の回復には預言者ムハンマドとゆかりがあるヨルダンやモロッコ両王家や、聖地マッカ、マディーナを有するサウジアラビアをはじめとするスンニー派が多数を占めるそのほかの国の統治者も努力を払っている。
 
しかし、19792月にイスラムの理念を掲げ王政を打倒したイラン(イスラム共和国)は、シーア派の人々との連帯を深め、スンニー派諸国以上にエルサレムの解放と占領国イスラエルおよびその同盟国アメリカとの対立姿勢を強めている。つまり、自らの存在意義の一つがそこにあると考えているともいえる。
この観点からすれば、イランにとってシリアはレバノンのヒズボラとの結節点であり、レバノンのヒズボラ同様に対イスラエル戦線の最前線の地である。したがって、現在のシリア危機は、イランにとっては死活問題だと認識される。
 
また、イランにとってのシリア危機は別の側面もある。
イランは核開発問題について国際的に疑惑がもたれており、シリア危機後、国際社会は国際秩序づくりの観点からイランへの圧力を一層強めると予想される。イランはこの点からも、自国への圧力の中心となる米英仏の主導でシリア問題の解決が進むことを阻止したいと考えているだろう。
 
<イランの政策>
721日付のイランの「ケイハン」(Kayhan)紙が、718日のシリア治安閣僚らが爆殺された事件を受け、アサド大統領の政策選択として、被占領下にある土地(ゴラン高原)の解放を目的とした限定戦争か、抵抗枢軸(ヒズボラ、ハマス、シリア)を動員した全面戦争を行うシナリオを提示した。
その後、ブログ記事「動き出したイラン」(88日)でまとめたように、イランはジャリリ最高国家安全保障会議事務局長にシリア、レバノン(その後イラク)を訪問させた。そして89日にテヘランでシリア問題に関する国際会議を開催した。
 
シリアをめぐるイランの政策が見て取れる動きを以下に整理してみる。
(1)トルコ関係
7月下旬、トルコの反政府活動組織であるクルド労働者党(PKK)により、トルコのシェムディンリ(最南東部のハッキャリ県)で軍事衝突が発生。
89日付のイラン紙「レサラット」(Resalat)に、トルコが対シリア軍事作戦をとる場合、シリアはイスラエルにミサイル攻撃を行うことや、ヒズボラも対イスラエル攻撃を行う可能性があるとの警告記事が掲載される。
(2)レバノン関係
815日、シーア派民兵グループ「メクダド・グループ」による拉致事件(トルコ人1人、シリア人30数名との報道あり。サウジ人1人が含まれているとの報道もある)が発生。
シリア自由軍(FSA)によると、メクダドのメンバーであるハッサン・メクダドをヒズボラのメンバーの1人としてシリア領内で拘束している(なお、1500人近くのヒズボラのメンバーがすでにシリアに入っているとのコメントも見られている)。
今回のレバノンでの拘束事件はその報復だと見られている。
(3)イラク関係
ジャリリ氏の訪問などでシーア派の連帯を確認。
(4)欧米関係
イランのサレヒ外相が87日、ワシントン・ポストに寄稿し、」国際監視下でのシリアの総選挙の実施」を提案。
 
また、ダマスカスで、イランの参詣庁が正式に許可を出していない48人(イランの革命防衛隊メンバーが含まれている)が、シリア自由軍に拘束されたことや、トルコのシャムディンリでの戦死したPKK戦士がイラン出身者であったことからも、イランがシリア問題で軍事的関与を深めていることがわかる。
こうしたイランの動きについて米国は、814日、パネッタ米国防長官が記者会見で「イランの関与を停止するよう、イラン政府に要求した」と述べている。
 
<治安維持から戦争体制へ>
シリア情勢は、今や市民による反体制運動から新たな局面を迎えている。それは、アサド政権が崩壊の危機に瀕しているため、シリアへのイランの関与が深まっていることを意味している。
 
中東情勢に詳しいイギリス人ジャーナリストのパトリック・シールは今年2月に、(1)シリア軍の体制の強さ(アラウィー派が中心)、(2)新冷戦ともいえるロシア・中国の対応ぶりを挙げ、アサド政権は存続すると指摘した。
 
しかし、イランはそれだけでは同政権の存続は危ういと見ているのだろう。国際社会に「予想不可能な事態」になると連想させるような、(1)クルド問題での緊張、(2)シリアによる対イスラエル攻撃、(3)ヒズボラ・ハマス・シリアによる対イスラエル攻撃などの紛争のシナリオを明示している。
その要因を分析すると、(1)対イラン経済制裁御強化により国民の政府批判が厳しくなっている、(2)イランとシリア両国の財政状況が悪化している、(3)アサド政権が弱体化しているという状況が重なり、イランが現状打開に打って出ざるを得なくなっているとの事情が見え隠れしている。
 
<気になるシナリオ――ヒズボラの軍事行動の激化>
2006731日、国連安保理がイランの核開発を求める決議案を採択(1696号)、翌8月末の決議実施を求めるという動きを前に、712日、レバノンのヒズボラが動きイスラエル領を侵犯した。これを受けイスラエル軍はレバノンに侵攻、局地戦が勃発した(イスラエル軍のレバノン撤退は101日)。
また、この紛争の停戦案において、ロシア・中国と米国の対立が国連内で起き、ヒズボラの武装解除は実行されなかった。
このヒズボラを動かしたのはイランだと見られている。
というのも、このイスラエル・ヒズボラ紛争によってイランは自国の核問題から国際社会の注意をそらすことに成功したからだ。
 
今回のシリア危機で、イランは2006年と同様にヒズボラを動かし、シーア派対スンニー派の対立や、レバノン内での拉致事件によってトルコ、サウジ、カタルとの交渉ポイントを探るなど、シリアのアサド政権に対する国際社会の圧力を弱めようとしているかに見える。
そうだとすれば、シリア危機は、すでに国際紛争へと向かいつつあるのではないだろうか。情勢次第では、イスラエルを再度巻き込んだものとなる蓋然性がこれまで以上に高まっているようだ。
 

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