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中東地域では、シリア危機に加え8月24日の国際原子力機関(IAEA)とイランの協議が物別れに終わったこと、8月20日以降にレバノンのトリポリで反シリア派と親シリア派住民の武力衝突が起きたことなど、不安定さが増している。
特にイランの核兵器開発疑惑については、イランが遠心分離機を増設し、すでに30%濃縮(今までは20%)を数か月前に実現し、今後60%濃縮を計画しているとの報道も見られている。
もしかすると、イランの核開発は、イスラエルが対イラン攻撃を実施する「レッドライン」としていたところをすでに超えた可能性もある。
注目すべきは、24日の協議でも争点となったテヘラン郊外のパルチン軍事施設を、26日から始まっているテヘランでの非同盟諸国会議開催(首脳会議は8月30〜31日、およそ120カ国)という舞台でどう活用するかである。
一部報道では、エジプトのモルシ大統領が同会議参加の傍ら、ブシェールの核施設を見学する予定だと伝えている。
イランはこの非同盟諸国会議でIAEAや国連安保理常任理事国プラス・ドイツとの間で疑惑があると指摘されているものを覆い隠し、“マジック・ショー”を見せ、核開発の正当性をアピールすると思われる。
その道具の一つとしてグローバル・メディアも活用するだろう。
すでに、26日の準備会合のオープニングスピーチでサーレヒ外相が、非同盟諸国会議メンバーは、同メンバー国に対する一方的制裁に立ち向かうべきと語っている。
そうした報道を見たイスラエルの一般市民は、ネタニヤフ首相やバラク国防相の「対イラン攻撃の主張」に耳を傾けるようになるのだろうか。
オバマ米大統領やEUがイスラエルの対イラン攻撃を回避させる努力を続けている間に、イランは着実に核開発を進展させているようだ。
こうした構図は、シリア問題でも見られている。
8月24日の国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)の報告にあるように、シリアから近隣諸国への難民は20万人に達し、同国内でも120万人が避難生活を送っている。
死者は国連調査で1万8000人に上っている。
さらに、23日から25日の3日間で、アサド政権はダマスカス近郊の町タラヤで、テロ集団の残党の浄化を名目に、市民を虐殺したと報じられている(200人の遺体が発見されたという)。
これまでのシリア問題については、米英仏や国連が主導し、中国、ロシアが反発しながらも問題解決の糸口を見出そうとする構図があった。
しかし、イランが明確にアサド政権を擁護する動きを示す中で、トルコ、サウジアラビア、エジプトの外交スタンスが大きく変化しているようだ。
今後、シリア危機解決に向けての外交努力では、アサド政権の存続をカギに、イラン、エジプト、サウジアラビア、トルコといった中東域内大国が主導し、ブラヒミ特使を含め国連を活用していくようになる可能性がある。
これはイランにとっては、シリア問題に関する会議のメンバーにさえなれなかった時点から見て大きな外交成果である。
仮にアサド政権が存続することになれば、イランは中東地域の大国として覇権争いを一歩リードすることになる。
それは、米国のイラク、アフガニスタンからの撤退後、中東地域での「力の空白」を誰が埋めるかという、ロシア、中国も参加するパワーゲームが表面化してくることを意味する。
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中東地域情勢
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