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新年おめでとうございます。
1996年からゴラン高原の国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)に参加していた自衛隊部隊の33人が昨年12月31日に帰国した。シリア情勢の悪化によって日本の国連平和維持活動(PKO)の1つの撤収である。
シリア問題の解決は現在も難航しており、昨年末のブラヒミ特別代表のロシア訪問が期待通りの結果をもたらすことはなかった。その最大の要因は、ロシアとブラヒミがアサド政権の処遇に関し今後1年の続投を認めるという条件を持ち出して、シリアの反体制勢力との妥協を図ろうとしている点である。
この条件を、「アサド政権の残虐性を明確に非難し、同市の退陣をはっきりと呼びかける」と訴える反体制派の「国民連合」のハティブ議長が飲むはずはない。
シリアでの戦闘による昨年の死者は4万5000人以上(12月26日時点)、国内避難民は200万人、周辺国への難民は54万に達している。
ロシアの対シリア政策は、平和構築の観点から分析すると、「停戦と移行政権樹立をリンケージさせる」というものだと言える。
その実現のために、ロシアは米国を巻き込み1月中にロシア、米国、ブラヒミ会談を予定し、その流れの中でエジプト、サウジアラビア、トルコなどの周辺諸国も巻き込もうとしている。そして、移行政権のもとで大統領選挙、国民議会選挙という政治プロセスを動かす一方、国際的な経済支援会議において緊急人道支援、復興支援の計画づくりを進めて「平和の果実」を提示しようとしていると考えられる。
つまり、まず、平和強制という国際介入なしに停戦状態に持ち込む――国連をはじめとする平和監視軍のもとで兵力を引き離し、休戦維持から停戦へと向かわせる。その後、政治プロセスを進めるとともに経済復興に着手するという3分野で平和構築を行っていこうとの計画案であると分析できる。
この案に問題点はないだろうか。
仮に、アサド政権が再び「真剣な対話」を広範な国民に呼びかける一方、ロシアがアルカイダの勢力浸透を防ぐためだとして米国やEUに協力を要請したとする。その場合、「国民連合」と、アサド政権のどちらが正当な政権なのかという点で鋭い対立が生じるだけでなく、「国民連合」を承認した米国、EU、アラブ連盟諸国などの行為自体の正当性も問われることになる。穿った見方をすれば、ロシアの提案の狙いはそこにあるとも考えられる。
まして、ロシア側から流されている案――アサド政権の退陣に言及せず、移行政権(暫定政権)が全権限を持ち、シャラ副大統領の下で国民対話を進めるとの事態収束案――は、あまりにも現実性を欠いている。
ロシアのラブロフ外相の発言(12月21日)によると、アサド大統領は中国とロシアが圧力をかけても退任しないという。ならば、シャラ副大統領に国民対話を進めさせても意味がない。
より現実的な案としては、停戦までの平和構築、政治プロセス、経済復興の主導権は「国民連合」にとらせて、それを国連安保理常任理事国やアラブ連盟がサポートするというコミットメントの体制を構築するというものではないだろうか。
ロシアはアサド政権の転覆が、イラクのように新たな内戦のステージをつくると見ている。確かに、その蓋然性は高い。
しかし、そうだからこそ、しっかりとした「脱アサド家」の移行体制づくりを急ぐべきではないだろうか。
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中東地域情勢
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