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最近の中東地域では、アルジェリアでの人質事件以外にも、イスラエル国会選挙、シリア滞在ロシア人のシリアからの退去、昨日23日にはヨルダン下院議会選挙、イラクでのシーア派を対象の自爆テロなど国際社会が注目するニュースが多く流れた。
国際社会は、イスラエル国会選挙(120議席)で、イラン核開発阻止を最優先課題とすると唱えるネタニヤフ首相が率いるリクードと右派のわが家イスラエルの統一会派「リクード・わが家」の議席動向に注目していた。選挙結果は、同会派が11議席減らして31議席となり、新党「イェシェ・アティド」(未来がある)が19議席獲得した。
この新党は、イラン核問題で対話重視を主張している。この点だけに注目すれば、ネタニヤフ政権の武力行使も辞さないという対イラン政策はイスラエル市民には十分受け入れられているとは言えないだろう。
武力行使により人命が失われることは、いずれの国においても受け入れることは難しい。
アルジェリア人質事件では日本人を含む少なくとも37人の犠牲者が、イラクでの自爆テロ事件では死者42人がでており、シリアでの武力衝突では1日に100人もの人命が失われ続けている。そして23日にはナイジェリアでの暴力事件で23人の市民が亡くなった(おそらくイスラム過激派ボコ・ハラムによる)。
そのアルジェリア人質事件は、現地も少しずつ平静さをとりもどしつつあるようで、同国政府の発表以外の情報資料も報道機関に流れ始めており、全容がおぼろげながら見えるようになってきた。しかし、やはり犯行動機はまだ明確になっていない。
そこで、少し情報資料を整理してみる。
1.犯行計画は、2か月以上前に立てられた(1月21日のセラル・アルジェリア首相の発言)。※犯人の一人の自供では2か月半前。
2.犯行グループ・メンバーは8か国に及ぶ32人以上(21日のセラル首相の発言)※32名のうち29名死亡、3名逮捕。また犯行声明では40名とされている。
3.首謀者はモフタル・ベルモフタール(アルジェリア人、1972年生れ)。※実行犯グループはカナダ人がコーディネーター、リーダーはアブドゥルラフマーン・アン・ニジェリー(別名アブ・ドゥジャーナ)。
4.犯行グループは2012年12月にベルモフタールが新たに結成(メンバーはベルモフタールに血判で死の忠誠を表明)。
5.犯行グループの要求は、犯行声明および報道によると(1)フランスのマリでの軍事行動の停止、(2)その後の声明で、米国で収監されているアブドゥルラフマン師とサディーキの釈放を要求、(3)また、アルジェリアが収監している100名のマリ人の釈放も要求している。(4)そして、犯行途中にアルジェリア政府に、人質とともに国外(リビア説、マリ説がある)への脱出を要求している。
今回の犯行が、アルカイダ指導者のザワヒリのメッセージを踏まえアルカイダからの承認を得て実行されたものか、ローカルな事情から行われたものなのかは現時点では不明である。おそらく確かなことは、ベルモフタールを北部マリの司令官から解任したイスラム・マグレブのアルカイダ(AQIM)との関係性は薄いということだ。
イスラム過激派グループが要人を誘拐しアルジェリア政府と交渉した事件は、2012年4月にも起きている。その時は、マリのガオ(*)で、ベルモフタールとも関係のあるイスラム統一聖戦運動(MUJAO)がアルジェリアの外交官7人を誘拐し、アルジェリアが収監しているマリ人イスラム教徒の釈放と1500万ユーロの身代金を要求した(1月22日付シャルクル・アウサト紙電子版)。同事件では、アルジェリア政府が要求を拒絶したため、人質全員が殺害された。
ベルモフタールが、結成したばかりで(密輸や誘拐の身代金などで得た)資金がない組織を抱え、身代金だけでなく、名声をイスラム過激派内で高めようとしたとも考えられる。そのためには、天然ガスプラントの爆破、マリ人収監者の釈放などとともに、企業の要人を誘拐しアルジェリア政府ではない民間企業と交渉を(アルジェリア国外で)行うことを企図したとしても不思議ではない。そうだとすれば、犯人グループが人質を取って国外脱出をアルジェリア政府に要求したことや、早期に5台の車で逃走を図ろうとした事実も理解できる。
以上のような推論の先に見えてくるものは、北・西アフリカのイスラム過激派勢力の今後の動向である。そのポイントとなるのは次のようなことだろう。
1.AQIMを内部対立から離脱したベルモフタールは、武装組織を結成できる人的ネットワークを持っている。そして今回、ジハード戦士の指導者として名声を得た。ただし、現在のところ実行部隊、武器、資金はあまり多く保持していないと考えられる。
2.リビアとアルジェリアの南部、マリ北部のトアレグ部族が居住する地域では、「アンサール・ディーン」、「西アフリカ統一聖戦運動」以外にも「アンサール・シューラ」「アンサール・シャリーア」などのイスラム武装組織の活動が見られる。これらがベルモフタールとの連携を強める蓋然性が高まっている。
3.アルジェリア政府が国内のイスラム過激派組織に対する治安強化をはかることへの反動が起きる可能性がある。
これらを踏まえれば、北・西アフリカでイスラム過激派の活動が活発化することが予想される。
国際社会におけるイスラム過激派の動向は、アフガニスタンでは米国とタリバンの間で対話が進んでおり、またイエメンでは同国と米軍の共同作戦によってアルカイダの重要指導者の1人サイード・アル・シャフリーが死亡したとの報道がある(1月22日付アル・アラビーヤ電子版。ただし死亡が確認できないとする報道もある)。
確かに、米国の無人偵察機の活用、国際的な資金ルートの締め付けなどにより国際テロの件数自体は減少傾向にある。
しかし、北・西アフリカにおいては「アルジェリアの危機の10年」(1992年より)、そして2011年のリビアのカダフィ政権の崩壊により、サヘル(サハラ砂漠南縁部)を震源地としてイスラム過激派の活動は活発化している。
国際社会はテロとの戦いにおいて、パキスタンと、マリを中心に広がるサヘル地域の不安定性を拡散させないよう、国際協調体制をとる必要性を再認識させられた。
日本もその体制づくりで役割を果たすことが求められることは確かだろう。
*マリの反政府勢力アザワド解放民族運動が独立宣言をした都市。
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中東地域情勢
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こんにちは、初めまして去年水口先生の授業を受けてました。とても興味深い授業でした。本題ですが、今回のアルジェリアのテロ事件についてです。今回のテロの発端は、マリ内戦でのフランス軍介入が原因と良くニュース、新聞等で耳にします。しかし私が思うに今回の発端は、フランス軍介入と中国のインフレによるアフリカ諸国の進出だと思います。ご存知だと思いますが、近年の中国人労働者が多くインフラの為アフリカ諸国に進出して来ました。中国は、資源を独り占めしたい為他国より数十倍の労働者が進出してます。アフリカ諸国の政府は、歓迎だと思いますが、市民からしたら、ありがた迷惑な話だと思います。特にイスラム諸国は同じイスラム教との信頼性が高い為、中国のウルムチ地方の政府による独立弾圧。ウルムチ地方の方々はイスラム教が多い為、イスラム諸国からの視点は、中国政府によるイスラム教弾圧だと見なされます。
2013/1/25(金) 午前 10:26 [ 元大学生 ]
申し訳ありません。続きです。今回のテロ事件もそういった件の復習と考えられると私は思います。テロリストの視点からは、日本人=中国人と言った感じで殺害されてしまったのでしょうか。アフリカの内戦で使われる武器、兵器の大半は、中国からの提供または、密輸入と知りました。自分の貧しい知恵で書いてみました。水口さんは、今回のテロ事件は中国のインフラ等の介入の件も含まれてると思いますか?もしお時間があればご返事下さい。
2013/1/25(金) 午前 10:29 [ 元大学生 ]
ご意見ありがとうございます。確かに、中国がアフリカの資源を得るために、アフリカ地域への武器輸出と安い労働力でのインフラ整備を最大限に使っていることはご指摘の通りだと思います。こうした中国の活動に対する現地の不満の表れとして、誘拐事件が起きていることがしばしば報じられています。たとえば最近では、12月にスーダンで4人の中国人労働者が誘拐される事件がありました。今後もこうした事件は続くでしょう。ただ、今回のアルジェリア人質事件は犯行グループが、明らかにアルジェリア政府が重視している天然ガスプラントおよびその関係者を計画的に狙ったものですので、中国人と日本人を同一視しているわけではないでしょう。
2013/1/25(金) 午後 10:42 [ cigvi2006 ]
ナイジェリア在住日本人の方によれば、危険なアフリカに中共政府は囚人を多く送りこんでいおり、誘拐されても身代金を払わないので、ナイジェリアでは誘拐ビジネスが三分の一に減り、ほかの外国人も狙われやすいので、少し助かる、とのことです。イスラム教を信じるウィグルを残虐に扱っている中共政府が、どういう形でか、この事件に関わっているのではないか、という推理をする人もあり、100%否定できないともおもいます。安倍総理が東南アジアを訪問している最中でもあり、中共政府の世界的謀略工作とくに日本に対する動きはけして侮ってはいけない問題とおもいますが、いかがでしょう。
2013/1/27(日) 午後 11:29 [ 通りすがりですが ]