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トルコのイスタンブールで5月31日にはじまった市民抗議行動は、首都アンカラやイズミルなど78都市に広がり、6月8日現在、市民3人が死亡4300人の負傷者が出ている。
抗議行動の根底には、イスラム的規範によるソーシャルプレッシャーを強めている公正発展党(AKP)への反発がある。
今回の抗議行動のきっかけとなったゲジ公園再開発については、6月2日にエルドアン首相が会見で、予定していたショッピングモール計画を断念し、兵舎およびモスクあるいはオペラハウスなどを建設すると発言している。この会見では再開発事業の撤回への言及はなかったが、軍への配慮をにじませながら、市民との妥協点を探る姿勢を示したとも取れないことはない。
6月5日、市民の抗議グループは、アルンチ副首相と会談し、以下の点を含む要求を伝えた。
1.ゲジ公園の現状維持
2.アタチュルク文化センターの取り壊し撤回
3.過剰な貢献講師の責任者の解任
4.拘束者の釈放
5.催涙弾使用の禁止
6.あらゆる広場が市民に開放されること
7.表現の自由に対する制限撤廃
これらの要求が出たことに対し、トルコ政府は、オリンピックのイスタンブール誘致や、EU加盟問題との関係もさることながら、「トルコが二流の民主主義国でない」(6月4日のダウトオール外相の発言)ことを国内外に示す必要がある。
経済的にも、株価の急落(6月3日に11億トルコ・リラ相当の下部が売却された)、トルコ・リラ安(1ドル=1.87リラから1.889リラに下落)と影響が出ている。
ここまでの抗議行動の特徴を、現地氏を参考にしてまとめると、次の点が挙げられる。
1.デモ参加者は(1)都会的な世俗主義的中間層市民、(2)若者層が中心で、自発的に参加(民族主義者行動党の支持者も含まれていると報じられている)。
2.動員方法については、ソーシャルメディアが大きな役割を果たしている。
3.抗議の対象は、エルドアン首相の(自信過剰ともいえる)政策運営に集中している。一部のメディアでは、同首相の辞任を叫ぶ人々がいると伝えている。
今後注目されるのは、初期の段階でエルドアン首相が事態を軽視し、状況を悪化させたという経緯がある中、同首相が市民とどのように和解するかという点である。
エルドアン首相は辞任しないと明言している。したがって、政府としては、抗議行動に過剰な公権力を行使した責任者の処罰と被害者に対する謝罪がまず検討課題となるだろう。一方、抗議行動参加者がそれで納得するかという問題がある。
今回のトルコ市民の抗議行動は、AKPが進めた酒類販売規制法案をはじめ国民的な議論となっている大統領制のあり方にまで大きく影響することは確かである。
欧米メディアの一部が「トルコの春」と表現したが、その命名は当たらないだろう。
オピニオン・リーダーでもあるイスタンブール大学のメフメト・アルタン教授は、100%の指示で政権を獲得したとしても、(市民の)基本的権利への介入の権限があるわけではない旨語っている(「トゥデイズ・ザマン」日曜ウェブサイト版http://www.todayszaman.com/news-317756-democratic-values-governments-credentials-put-to-test-in-turkey.html)。
トルコ市民が民意の発露を通して、「民主主義を深化させよう」とする動きにも見える今回の抗議行動の行方に、「アラブの春」と称される政変が起きた国々、来週に大統領選挙が予定されているイランをはじめ国際社会が注目している。
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