中東地域情勢

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シリアに対する軍事行動の問題は、イギリス議会で参加が否決されたこと(829日)、その後、オバマ米大統領が演説で「議会承認」に言及したこと(831日)により状況が変化している。
そこで、注目点について確認した上で、今後のシナリオを修正してみる。
 
<注目点1> 米国議会は軍事行動を認めるか?
現在、オバマ大統領をはじめ米政府関係者の議会への説明が行われているが、米国のマスメディアの分析では、上院では承認されるが、下院での承認は難しいというものが多い。
注目される発言は次のようなものである。
 (1)ジェームズ・インホフ上院議員(共和党、軍事委員会)は、「我が国の軍の力は現在、かなり劣化している」と言及し、予算縮小を進める中での軍事介入は承認されないとの見方を表明。
 (2)ピーター・ギング(共和党、テロ対策・情報小委員会委員長)は、「大統領は主張の根拠を明確にしていない」としながらも、軍事加入を支持。ただ、共和党内の動きに懸念があると語る。
 *(1)、(2)とも91Fox News Sunday
 (3)ランド・ポール上院議員(共和党)は、「上院は通るだろうが、下院は五分五分」として、軍事介入には反対を表明。(91NBCテレビ)
 (4)マイク・ロジャーズ下院議員(共和党、下院情報委員会委員長)は、「これは国家安全保障の問題だ。オバマ大統領と議会の対決でも、共和党と民主党との対決でもない」と述べ、軍事介入を承認する姿勢を示した。(91CNNテレビ)なお、ロジャーズ議員は、米情報機関によると、アサド政権は化学兵器を9回使用していると語っている(英国議会資料では14回使用となっている)。
 (5)なお、マケイン(共和党)、グラム(共和党)、レビン(民主党)のようなタカ派議員やイスラエル友好議員連盟(CIAC)は、軍事行動の効果が不十分である点を指摘し、オバマ大統領の軍事介入のあり方を批判している。
米政府は、来年に中間選挙を控えている議員たちの動向がつかめず、票読みは難しい。
特に、民主党内ではリベラル派の、共和党内ではリバタリアン(小さな政府を目指す自由主義者)の議員の動向の把握が難しい。
<注目点2> 議会の承認が得られなくても軍事介入を実施できるのか?
92日付フィナンシャル・タイムズの社説「シリア情勢で賭けに出たオバマ氏」で言及されているように、オバマ大統領は831日の演説で「I will seek authorization…‥」と述べており、議会の承認を「必要とする」のではなく「要請する」としている。
したがって、オバマ大統領は、1973年成立の戦争権限法に基づいて意思決定ができる(軍事行動開始から48時間以内に議会報告をし、議会は90日以内に承認すればよい)。
なお、議会が軍事行動を否決したものの、大統領が軍事行動を行った事例としては、1999年のクリントン大統領のコソボ空爆がある(上院は承認、下院は否決)。
<注目点3>国防費も歳出削減の対象となっているが、対シリア作戦の戦費に影響があるか?
ゲイリー・ラフィッド元海軍大将(20113月の対リビア攻撃の作戦関係者)は、「長期化しない限り補正予算は必要ない」と述べている。ただし、シリアの防空能力の破壊や飛行禁止区域の設置などの追加措置が生じた場合は、戦費が急激に膨らむ。(9313:41ロイター通信)
このこととも合わせて、議会周辺でも来年度予算案と政府債務上限の引き上げ問題の解決を求める声が出はじめている。
なお、オバマ大統領が議会に求める草案では、軍事行動の期限、攻撃対象地域の限定が明記されておらず、戦費の面からも議案修正が求められる可能性がある。この点について、政府も修正の用意がある旨を表明している。
<注目点4>対シリア軍事介入へのアサド政権の備えは十分か?
バッシャール・アサド大統領はフィガロ紙とのインタビュー(92日付)で、具体的な反撃については言及しなかったが、「火薬庫が爆発すれば、誰もコントロールできなくなり、大混乱と過激主義が広まる。地域戦争の危険がある」と警告した。
シリア側からの報道を整理すると、次の点が注目される。
(1)政府施設の周辺には対空砲を配備。
(2)軍隊は標的となる公算が高い主要基地から避難。
(3)一般市民が攻撃対象を視察、同地域にテントを張って座り込む(人間の盾)。
(4)レバノンのヒズボラが地中海に展開する米艦船を攻撃する。
時間の経過とともに防空体制は整備されており、ロシアの軍事顧問やイランの軍事顧問の存在が注目される。
なお、米軍は地中海東部に5隻の駆逐艦を配備したほか、空母ニミッツと駆逐艦4隻、巡洋艦1隻を紅海に向かわせている。
 
オバマ大統領による議会への軍事介入の承認を要請の前には、第1に議会と世論、第2にG20を舞台とした国際世論、第3に軍事行動の目的と成果の整合性という3つの高いハードルが存在している。
以上のことを踏まえて、今後のシナリオを考えてみる。
 
<今後のシナリオ>
 
1.武力介入がないケース <蓋然性は小>
米議会で草案が否決。オバマ大統領がその結果にしたがい、軍事力行使を断念。
シリア国内では政府軍が攻勢に出る。ただし、反体制派を鎮圧するまでにはいかない。
 
2.武力介入実施のケース
有志連合(米・仏)。(1)米議会の承認あり、(2)米議会の承認なし(上院のみ承認)。
2−(1)のケース: <蓋然性は大>
攻撃期間と対象が米議会により制限されることで、シリア側の被害は小さくなる可能性がある。
作戦目標は、シリア国内に緩衝地帯を設置すること。一方、シリア側はゴラン高原での戦闘、ヒズボラの対米艦船攻撃を行う可能性も生まれる。
なお、議会承認を得たことで、シリアの反撃で戦闘がエスカレートした場合の対応(飛行禁止空域の設置など)や、民間人に被害が出た場合への批判、世論への対応が比較的容易になる。
2−(2)のケース: <蓋然性は中>
シリア軍に対し、空爆という方法で軍関係施設および軍隊に対し一定期間(数週間程度か?)にわたり攻撃を実施。シリア内戦の戦局が変化。最終的にはアサド政権崩壊を目標とする。
 
3.政権交代のシナリオ
(1)バッシャール・アサドの暗殺にともなう政権崩壊。<蓋然性は中>
(2)アサド家とその関係者の国外亡命。<蓋然性は小>
(3)米・ロが共催で国際会議を開催し、アサド大統領の退任後、大統領選挙の実施を決める。<蓋然性は中>
 

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