全体表示

[ リスト ]

オバマ米大統領は910日(日本時間11日午前10時)シリア問題についてホワイトハウスから米国民に向けて説明を行った。その中で同大統領は、サンクトペテルブルグでのG20会議でロシアと協議したシリアの化学兵器を国際管理するとの提案についてシリア政府が前向きに回答してきており、今後、国連安保理での協議で具体化させるとの考えを示した。
この演説で、シリア問題の政治解決にほのかな明かりがともったように見える。
 
そこで、前回99日のブログ「議論が深まらない『保護する責任』」において、安保理決議の内容に言及した上で「速やかに採択すべき」と述べた点について補足したい。
同ブログでは、国際社会がリビアでは文民を保護する目的で国連安保理決議1973号に基づき武力介入を行った事例を参考に、シリア問題でも優先すべきだと述べた。そして、(1)国際刑事裁判所への人権侵害の実態調査の付託、(2)化学兵器の廃棄を求める(3)アサド政権に市民の保護を求めるべきだと述べた。この3点を挙げた理由について簡単に整理しておく。
 
ポイント1: 3回に及ぶ国連安保理決議案の否決
国連安保理において、2011年にはじまったシリア問題に関する決議案が過去3回、否決されている。第1回は2011104日(S/2011/612)で、賛成9、棄権4、ロシアと中国が拒否。第2回は201224日(S/2012/77)で、賛成13、ロシアと中国が拒否。そして第3回は2012719日(S/2012/538)で、賛成11、棄権2、ロシアと中国が拒否である。この3回の採決において、ロシアは決議案がアサド政権打倒に結びつくことへの懸念から、中国は内政不干渉の原則の重視から拒否権を発動し続けた。
この点を踏まえると、「化学兵器の廃棄」「市民の保護」の2点については、ロシアおよび中国との協調が可能だと言えそうである。
現在、フランスが安保理に提示している決議草案は、(1)化学兵器の廃棄(①15日以内の情報公開、②速やかな国連査察団の受け入れ、③国際管理下での施設・危機の解体)、(2)約束不履行時の措置、(3)化学兵器使用者の国際刑事裁判所への訴追が盛り込まれていると報じられている。
ここで問題となるのは、昨日のブログでも触れている国際刑事裁判所の活用である。アサド政権を訴追することは政権打倒と結びつくからである。したがって、この点でロシアは慎重な姿勢を示すと考えられる。
 
ポイント2: 「保護する責任」を打ち出さない理由
「保護する責任」の概念は、1990年以降「破たん国家」が増加し、その中で人権侵害が行われてきたことで考えられた。こうした状況を踏まえ200112月に「介入と国家主権についての国際委員会」(ICISS)が発表した報告を基に国連で議論が積み重ねられた。
そこでは国民を保護する責任は、第一義的にはその国家にあるとされている。そのため、国際社会はその国の保護能力の向上を支援することが期待されている。
リビアの場合、反体制派が形成した政府を国際社会が早期に承認したため、国際支援は「新政府」の保護能力を向上させることに注がれた。しかし、シリア問題では現在のところ、自国民への軍事攻撃を行っているアサド政権を支援するしかないことになる。
また、国連を舞台に協議されてきた「保護する責任」は国連安保理を通じ、国連憲章7章に基づいて集団的行動として実施されることになっている。したがって、シリア問題では、ロシアと中国の拒否的な姿勢が続く限り、「適切な時期」に「断固たる方法」でシリア市民を保護するための決議を通すことは難しい。
 
以上の点から、シリア問題では「保護する責任」ではなく、「化学兵器からの文民保護」の観点から政策が立案されることになる。
ただし、オバマ大統領が言及した1925年のジュネーブ条約は化学兵器の国内使用について厳しく規定したものではないとも言える。したがって、国際規範を犯したとの観点でアサド政権に対応を迫るためには、安保理決議が必要となるだろう。
国際社会はシリアの化学兵器使用疑惑に関し、どうにかシリア、ロシア、そして中国から妥協案を見出せそうな状況になった。
ここを糸口に、シリア問題の政治的解決を導き出せるかどうかの最初のハードルは、安保理決議案の作成である。そのカギは、地域機関であるアラブ連盟との密接な連携が保てるかどうかであろう。
 

閉じる コメント(0)

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事