中東地域情勢

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<イスラム国の今後>
 
シリアとイラクにまたがる「イスラム国」(IS)の支配領域は、イスラエルの国土面積を超えるまでに拡大したと見られている。
また、この非国家主体の組織は、税の徴収や服装規制を行う一方、住民への食糧や医薬品などを配付するなど行政機能を果たしはじめている。
しかし、ISがとっている領域支配という戦略は、外国人義勇兵を集めやすい反面、軍事的な攻撃を受けやすい。
さらに、組織的統治を行うと、時間の経過とともに組織内で利害対立が生じる蓋然性が高くなる。
 
こうしたことを踏まえて、以下に、今後のISのシナリオを整理してみる。
2014624日付の筆者ブログ「イラク情勢を考えるポイント」http://blogs.yahoo.co.jp/cigvi2006/63103627.html を修正)
 
■ 組織の消滅のシナリオ
1.指導者バグダディーの死亡により内部から崩壊。
2.外国人義勇兵と住民の対立から内部分裂。
3.欧米を中心に形成された有志連合がISを攻撃、ISは軍事的に崩壊。
 
■ 組織の存続のシナリオ
4.有志連合が形成されず、米軍による空爆で、現状が維持。
5.有志連合との戦闘でISの支配領域は縮小するが、組織は残る。
6.地上戦で成果を上げられない有志連合が空爆で現在の防衛ラインの維持を図る戦術を取り、現状のまま戦闘が長期化
 
621日、ヘーゲル米国防長官は記者会見で「イラクでの米軍の関与は終わっていない」と語った。
この発言からも伺われるように、米国をはじめ国際社会は、単にISの勢いを失速させるだけでは、国際社会にとっての脅威はなくならないと認識しはじめているようだ。
 
<国際社会の対応>
 
ISの勢力拡大にともない、その支配領域から脱出するヤジディ教徒やキリスト教徒、さらにはイスラム教徒が続出している。
この状況に対応するため、88日、オバマ政権はヤジディ教徒の救援と北部アルビルの米国人の保護を目的に、ISの武装勢力への空爆をはじめた(5)
また、同月15日には、EU外相会議がイラク政府への支援を表明し、武器供与の具体策は「加盟国政府の判断」とした。
すでに13日にフランスがクルド人部隊への武器供与を決定しており、20日には、これまで紛争地への殺傷兵器の供給を禁止していたドイツも政策転換を表明し、供与することを決めた。
政治的にも国連安保理が15日、ISへの資金の流入、および、外国人戦闘員の流入防止を求める決議案を全会一致で採択している。
こうして、国際社会ではISが脅威であるとの認識が共有されつつある。
さらに、フランスや米国は対応策を検討する国際会議の開催を計画している(6)
 
<イラク、シリアの対応>
 
イラクでは814日、国内外から退陣を求められていたマリキ首相が辞任を表明、アバディ第1副議長のもとで挙国一致内閣の編成作業に入った。
また軍事面では、イラク中部のアンバル県では、スンニー派の25の有力部族がイスラム国の掃討を目的に政府軍に協力することで合意した。
そして、米軍の空爆の継続とクルド人部隊の装備が強化されたことにより、ISにより制圧された地域の奪還が図られている。
その一方、822日にディヤラ県で武装集団によりスンニー派のモスクが襲撃され、70名以上が死亡する事件が発生している。
同事件はシーア派によるものと見られており、スンニー派との間で対立が再燃すれば、イラク市民の統一的対応が求められるISとの戦いの障害となるだろう。
今のところ、ISとの戦いは、仮に米軍をはじめとする有志連合が形成されたとしても、同部隊が地上戦に参加することは望めないとの見方が大勢である。
したがって、大規模な対IS掃討作戦の実施は困難であり、局地戦のまま、戦闘が長期化する蓋然性が高いといえる。
 
一方、シリアでは内戦が継続し、死者数は19万人を超えている(20113月から本年4月まで)(7)
この内戦では、アサド政権、自由シリア軍などの反体制派、IS、クルドの主要4勢力の間の抗争が展開されている。
本年7月には、東部デリゾール県でのISの動きが活発化し、同県のほぼ全域を掌握した。
また8月に入り、ISがイラクでの戦闘により武器を獲得したことで、シリアでも勢力を強めている。
こうしたISの動きに対応して、817日、アサド政権は東部のラッカ周辺のISへの空爆を実施した。
ISの勢いが増している要因としては、兵員の増強も挙げられる。
「シリア人権監視団」によると、ISの戦闘員はシリアだけでも5万人(うち2万人は外国人)を数える。
さらに7月には6000人以上(うち1000人強が外国人)が戦闘員に加わったと報じられている。
この増加分には反体制派の武装勢力の離反者が含まれていると見られており、シリアにおけるISの勢力は着実に拡大している。
 
<当面の問題>
 
国際社会が抱えている当面の問題の一つは、シリア領内のISへの対応である。
ヘーゲル米国防長官は821日の会見で、イスラム国の脅威に対し「あらゆる事態に備える必要がある」と述べた。
また同日、米国のデンプシー統合参謀本部議長は、「シリア国内でもさまざまな対処をする必要がある」として、シリア領内での空爆にも言及した。
シリアでの空爆実施について、アサド政権やISによる人権侵害から一般市民を救うためには、地理的境界をあまり制限する必要がないとの考え方もできるだろう。
一方、米国の一部の研究者やイギリスの元軍関係者から、アサド政権との連携を模索すべきとの意見も出ている。
しかし、アサド政権との連携は、ランド研究所のウィリアム・ヤング研究員が指摘するように、ISへのイスラム教徒の参加に火をつける蓋然性が高い(8)
 
もう一つの問題として、外国人義勇兵のISへの参加問題がある。
同問題は、米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏がロンドン訛りの人物に殺害されたことで改めてクローズ・アップされた。
この問題は、エドワード・スノーデン氏が米国やイギリスの情報活動の実態を暴露した事とも関係している。
つまり、同氏の事件により、欧米諸国やアラブ諸国での治安当局の情報収集能力が低下し、イスラム過激派のネット上での広報・募集活動が以前よりも活発化していると見られるのである。
ISの戦闘に参加する外国人義勇兵の増加は、イラク、シリアでの戦闘の活発化だけでなく、戦闘経験者が帰国後に母国での反政府テロ活動を行う蓋然性が高まることにもなる。
 
ISの脅威の背景には、欧米社会におけるイスラム移民が抱える社会問題、アラブ諸国における富の格差の問題などがあると考えられる。
イスラムの「公平」「公正」の実現を求め、急進的な考えに染まる若者は今後も後を絶たないだろう。
したがって、ISに対する国際協調政策の形成の必要性、緊急性は高いといえる。
それとともに、9.11米同時多発テロ以来、指摘され続けてきたこうした問題の是正もまた急がれる。
 
5 軍事作戦は人道介入と自衛を目的としており、長期に及ぶものではないと説明されている。
6 オバマ大統領は、国連総会が開催される922日の週に安保理国首脳会議の開催を計画している。
7 国連人権高等弁務官のピレイ氏は822日、死者数191369人、難民300万人、国内避難民640万人と発表。
8 イギリスのハモンド外相も、822日のBBCのインタビューで、アサド政権との協力の可能性について「賢明でも有益でもない」と否定した。
 
 

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