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1113日(金)、フランスのパリ市内で同時多発テロ事件(少なくとも6カ所)が発生した。
同日夜、フランスのオランド大統領は2005年のパリ近郊での暴動事件以来、およそ10年ぶりとなる「国家非常事態」を宣言し、国境を封鎖するなど厳戒態勢をとった。
14日、オランド大統領は緊急安全保障会議後の記者会見で、犯行は「イスラム国」(IS)の軍事部門によるものと述べた。
一方、ロイター通信によると、IS側も、同組織のAl- Hayatメディアセンターが「フランスは空爆に参加している限り平和ではいられない」とのビデオメッセージをインターネット上に掲載した(作成日時は不明)。
さらに、AFPによると「十字軍フランスに聖なる攻撃を実行した」と犯行声明を出している。
現在のところ、死者は130人近くに及び、犯人側は8名が死亡(うち自爆7名)している。
 
■ ISが置かれている状況
113日放映のABCテレビのインタビューで、オバマ米大統領はISについて次のポイントで語っている。
1.ISは領域をイラクでは広げられておらず、シリアでは一進一退。
2.外国人戦闘員の流入阻止については進展があった。
3.指揮命令系統の完全破壊はできていない。
 
■ 具体的戦局
戦線の近況についての次のような報道からは、ISが劣勢になりつつあるといえる。
1.13日にイラク北部シンジャルをクルド勢力が奪還。
2.イラク軍がラマディでの攻撃を進めている。
 3.有志連合によるISの要人への空爆(13日に「ジハーディ・ジョン」を殺害)。
 4.シリア政府軍がアレッポ近郊の空軍基地を奪還。
ISには、空爆に加え地上戦でもイラクとシリアの両方で圧力が加わっている。
 
■ ISおよびその連帯する組織の最近の行動
ISに関わる組織が最近起こした(と思われる)事件/行動には次のようなものがある。
 1.エジプトでのロシア航空機爆破テロ事件で「イスラム国シナイ州」が犯行声明を出す。
 2.1112日にロシアを攻撃することを予告するビデオを投稿(13日いCNNが配信)
 3.1112日にレバノンの首都ベイルートで2件の自爆テロ。40人以上が死亡、200人以上が負傷。「イスラム国レバノン」が犯行声明を出す。
 
■ 関連する国際会議
シリア・イラク情勢に関連する最近の国際会議(予定を含む)は次の通り。
 1.マルタの首都パレッタでのEU・アフリカ諸国による首脳会議が、紛争・政情不安の解消に取り組む政治宣言を採択し、閉幕(12日)。
 2.14日、オーストリアのウィーンで、シリア和平に関する多国間会議が開催。作業部会は先立つ12日より開催され、テロ組織と合法的反体制派の区別化について協議。
 3.15日より、トルコのアンタルヤでG20が開催(オランド大統領は欠席。代わりにファビウス外相を派遣)。
 
■ 注目される摘発
1112日、欧州検察機構はイタリア、イギリス、ノルウェーでイスラム過激派の13名の身柄を拘束したと公表。
イタリア警察特殊作戦班は、イタリアの他にイギリス、ノルウェー、フィンランド、スイス、ドイツでも、このネットワーク傘下の組織が解体されたと述べた。
同組織は、イスラム過激派の戦闘員の勧誘や、外国の戦地に戦闘員を送り込む役割を担っていた(1113AFP配信)。
 
■ コメント
1130日からの地球温暖化対策を話し合う国際会議COP21を前に、警備体制が強化されつつあったパリで、少なくとも8名のテロリストが同時多発テロを実行した。
死亡したテロリストのうち1名がシリアのパスポートを保持していたとも報じられている。
しかし、このような同時多発テロは、オランド大統領が述べたように、フランス在住者による支援や共犯がなければ実行は難しいと考えられる。
1月のシャルリ・エブド事件でも指摘されたように、フランスで暮らすイスラム教徒の移民2世、3世の中にはフランス社会に不満を持つ若者も少なくない。
また、イスラム過激派のネットワーク、リクルーターも存在している。
今回も、彼らがモスクや刑務所などで出会い、少人数の過激グループを形成し、ISやアルカイダなどと接点を持つことで犯行計画が密かに練られ、実行の機会を待っていたというケースであった可能性はある。
今回の事件が起きたのは、ISにも圧力がかかっている状況であり、多くの重要な国際会議が開催されるというタイミングであった。
さらに言えば、中東・アフリカからの大量の移民がEU諸国に流入し、各国が政治的に不安定化しつつある中で起きた。
テロの実行は、EU市民の不安が高まり、政府の移民政策への不満を強めるという効果があったと考えられる。
今後も、有志連合に参加して空爆を行っている国に対してISが同様のテロを行う蓋然性は高い。
ロシアの空爆によってシリア領内にいたISの戦闘員が各国に拡散している現在、テロへの対策がこれまで以上に難しくなっていると分析できる。

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