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2016年の中東を考える

2015年の中東情勢を振り返るにあたっては「イスラム・パワー」について再考する必要があるだろう。
 
そのためには1979年に遡らなければならない。
同年2月、イランでイスラム革命によりパーラビ王朝が打倒され、「イラン・イスラム共和国」が誕生した。
このとき、国際社会は、中東地域で欧米の政治システムや王制・首長制とは異なる、イスラムのもとでの政治体制が構築されたことに驚き、動揺した。
その革命の波紋は、ソビエト連邦によるアフガニスタンへの侵攻、イラクによるイランへの侵攻(イラン・イラク戦争)という出来事を生じさせた。
これらは米・ソのもとで、イラン革命を「一国革命」として封じ込めようとする動きだったといえる。
 
当時、中東諸国では社会的に不公正、不公平が顕著になりはじめており、アラブ・ナショナリズムやアラブ社会主義では解決できないとの認識も人びとの間に広がっていた。
イランのパーラビ王朝は急激な近代化を推し進めたため、富の格差の拡大を人びとが目の当たりにする社会をつくってしまった。
またイランでは厳しい生活環境の中で、身近な集団の生活規範であるイスラムに解決策を求める人びとが少なくなかったことも確かである。
このような状況は、中東諸国において今日まで続いている。
 
2011年の「アラブの春」とよばれる一連の政変で、イスラム勢力が台頭したこと、過激派組織「イスラム国」(IS)が誕生したことも、大局的にみれば、1980年代初頭に欧米の国際政治学者たちが「イスラム・パワー」として分析したイスラム潮流が、2008年のリーマンショック後の国際経済の低迷を機に再び表面化したものと捉えることができる。
現在、国際社会はこのイスラム・パワーに、「自由」「民主主義」のイデオロギーと軍事力を持って対応している。
果たしてそれで、国際社会は安全・安心を得ることができるのだろうか。
 
イラン革命以降、湾岸地域において起きた、イラン・イラク戦争、湾岸戦争(1990年の危機〜91年)、イラク戦争(2003年〜)という三つの戦争は国際社会に大きな影響を及ぼし続けてきた。
また、その中で、アルカイダ、ISなどのイスラム過激派グループが生まれ、テロの脅威は世界中で拡大している。
今、イスラム革命、イスラム・パワーを再考すべき時といえるだろう。
 
さらに過去に遡りフランス革命を想起すれば、当時の周辺国にとってその革命思想は受け入れがたいものであった。
イラン革命の思想も同様に、同国の周辺国、さらには国際社会にとって到底受け入れられるものではなかった。
そのイランは、来年、核開発問題で包括合意に達して経済制裁が解除され、外国的にも国際社会に復帰する可能性が高い。
イランは現在、イエメン内戦、シリア内戦にかかわっており、原油価格や聖地メッカ巡礼事故問題などでサウジアラビアとの対立を深めている。
また、イスラエルのエルサレム占領からの解放運動を提唱し続けている。
 
79年にイランという国民国家の領域内で起きた王政打倒以降のイスラム勢力の台頭と、現在起きているイラク・シリアという国民国家にまたがり領域支配をしているISの影響力拡大のパワーの根底的源にはイスラム統治思想がある。
それらの思想的正しさの問題は別として、再び顕在化しているイスラム・パワーが、国際経済との相互依存を深め、欧米的な政治・社会改革を進め、富の格差が広がっている中東各国で、今後どのような現れ方をするだろうか。
とりわけ、国際金融と深く結びついているオイルマネーを動かす湾岸アラブ産油国が気になる。
これら諸国では石油収入の減少の中、国民サービスが低下する可能性がある。
そうなった時、イスラムを核とした運動が台頭するのだろうか。
 
2016年は、イスラム過激派の動向に加えて、人びとの生活に根差しているイスラム思想にも注目すべきだろう。

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