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11月1日、シリア情勢において主要反政府各グループが打倒アサド政権に向けて新たな統合体を組むことに合意した。
シリア政府の戦闘機による反政府勢力への空爆が前例のないほど増加しており、シリアからトルコに越境した難民は11月8日から9日の晩の間だけで1万1000人に上った(現在のところ、トルコにおけるシリア難民は約12万人)。
その中、反体制勢力は8日からカタールのドーハで、カタールおよびトルコの外相、アラブ連盟事務局長、米国国務次官補の参加のもと拡大会合を開催した。
その結果、11日に新たな反体制勢力の統一体「シリア国民連合」を結成した。同連合の議長にはイスラム法学者のムアズ・ハティブ師(ウマイヤド・モスクの元イマーム、52歳)が選出された。
シリア国民連合は今後、国際社会の対シリア武器支援や経済支援の窓口になる。
シリア情勢は10月31日に米国が「シリア国民評議会」に対する支持を撤回し、シリア国内の前線で戦っているシリア人の多くを代表する機構の設置に動いた(11月3日付「ニューヨーク・タイムズ」)。
また、中国も北京を訪問したアラブ連盟国連特使のブラヒミ氏との協議を通し、平和的解決に向けての4項目を提案している。この中国は、広い基盤を持った暫定統治機関の設置にはアサド政権の存在が含まれないとの考えを示した(11月2日付「アル・ハヤート」)。
今後の注目点は、ハティブ師のもとで60人からなる評議会メンバーが一体化を保てるかである。特に、アサド政権の基盤であるアラウィ派をどれだけ取り込めるか、また、これまで反体制派勢力の中核的存在であった「シリア国民評議会」のメンバーの不満を解消できるかどうかがポイントとなる。
一方、ロシアのテレビ局とのインタビューで、バッシャール・アサド大統領は、「私はシリアで死ぬ」と述べており、アサド政権を支える人々の力は今でも決して侮れない。
また、11日にはゴラン高原でシリアとイスラエルの間で砲撃が交わされている(39年ぶりの戦闘)。
さらに、NATO軍のラスムセン事務局長が12日にプラハで、シリア国境で戦闘が散見されるトルコに関し、NATOは同盟国としてトルコを保護、防衛するだろうと改めて述べた。
シリアの平和構築の道のりはまだまだ紆余曲折があると思われる。その意味でも、11月末の日本でのシリア問題会議の開催の重要性が増している。
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11月に入り、イランをめぐるいくつかの情勢変化が見られている。
11月1日、ペルシャ湾港海上空で米軍の無人偵察機がイラン軍機の攻撃を受ける事件が発生した。イランは、同月4日、南部のバンダレレンゲ港に革命防衛隊の軍事基地を設置し、ペルシャ湾での展開能力を高めている。
そうした中、イスラエルのINSSが11月10日、イスラエルがイランの核関連施設を攻撃した場合の国際社会の反応を分析した報告書を発表した。それによると、米国の対応については、オバマ政権はイスラエル側に立った行動をとるとの分析がなされている。
イラン問題では、イスラエルのバラク国防相が「デーリー・テレグラフ」(10月30日付)のインタビューで、イランが20%濃縮ウラン189㎏のうち38%を民生利用の原子炉で使用する核燃料棒に転換(今年8月)したことで、対イラン攻撃の判断時期は来春から来年の夏ころまでに検討すればよくなったと、状況を説明した。
その一方、この転換がなければ米大統領選挙前に重大な危機を迎えた可能性があったと言及した。
こうした情勢下、国際原子力機関(IAEA)も9日、イランとの協議を12月13日にテヘランで開催すると発表している。
仮に、イランが高度な核開発技術を有し、短時間で核兵器を生産できる能力レベル(ブレイクアウト)を持ちつつあるとすれば、IAEAの査察に協力的態度で臨むとも考えられる。
米国は8日に、国務省が対イランの追加経済制裁を発表する一方、駐イスラエル米国大使がネタニヤフ首相との会談をもった。
果たして2期目のオバマ政権の対イラン政策がどうなるかが注目される。
なお、『読売クウォータリー』No.23に拙稿「中東のパワー・シフトと紛争のリスク」が掲載されています。ご関心がある方はお読みいただければ幸いです。
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10月11日、EUが対イラン経済制裁に新たな内容を追加することで合意した。正式には15日の外相会での採決を待つことになるが、イラン産天然ガスの輸入禁止が折り込まれている。
このイランに対する経済圧力強化を前に、ワシントンの科学国際安全保障研究所(ISIS)は9日、イランが早ければ2〜4カ月以内に核弾頭1発分の高濃縮ウラン(90%以上)を生産できるようになるとの報告を出した。
また、6日にはイスラエル空軍機が撃墜した無人偵察機はヒズボラが送り込んだイラン製(イランにより製造され、レバノン国内で組み立て)のものでることが判明した。
さらに、米国高官によるイラン政府がネットワーク・セキュリティ会社関係者を使って対米サイバー攻撃を仕掛けているとの発言も報じられている。
中東地域ではシリア・トルコ関係の悪化、エジプトのカイロ(タハリール広場)での大統領支持者と反対派との衝突など、各地で不安定な状況が見られている。
そして、イラン、シリア、ヒズボラによる反イスラエル軍事行動がどのように展開されるのか、目が離せない状況でもある。
現在、イランは通貨レートの急落による厳しい経済状況の中にあり、市民による非暴力の抵抗運動が発生している。その中でEUが経済制裁強化を実施することになる。このため、イラン政権は外部に市民の関心を逸らせようとして何らかのリスクの高い行動に出ることが懸念される。
当面、イスラエルとイラン両国の動向が注目される。
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