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314日、北朝鮮は衛星(ミサイル)の打ち上げに失敗した。しかし、この打ち上げ行為自体が国連安保理決議違反であり、国際社会から厳しい非難を浴びている。
今日、確信犯的に安保理決議の履行をしていないのが、この北朝鮮とイラン、シリアである。そして、この3カ国に関する国連安保理の協議に深くかかわっているのが中国である。
では、中国は今後、この3カ国に関し、国連の場でどのような政策を取るのだろうか。
以下に考えてみた。
 
中国の対外政策では、(1)エネルギー資源の確保、(2)インフラ整備、(3)市場拡大、(4)武器輸出などが重要ポイントとなる。一方、このところ米国内で議論される中国のシーレーンただ乗り論や海軍力脅威論に呼応するような政策もみられている。
そうした状況において、注目される動きの1つが、41日に開催されたアジア政財界フォーラム(中国南部の海南島にて)で、李克強副首相(次期首相最有力候補)が国際協調路線を明言したことである。また、もう1点、中国政府高官が410日に、安保理決議1874号には中国も賛成しており、北朝鮮はそのことを「重く受け止めなければならない」と述べている点である。
この2つの発言からすると、中国は大きく「国益」を損なうことがない問題では、安保理での国際秩序づくりの抵抗勢力とはならないと考えられる。
 
今日、中国進出企業は、薄氏問題に加えて経済成長率の鈍化、野菜やガソリンなどの物価上昇など、同国の政治リスクの高まりに不安感を抱き始めている。その中で、中国が国際社会との対立を深める恐れがある政策を選択することは、国内政治をより難しくするとの配慮が働くと分析もできる。
したがって、中国は対外政策でも、薄氏問題でも強調しているように、社会主義法治国家として法律の尊厳と権威を守る姿勢を示すと思われる。
この点を踏まえると、中国は北朝鮮問題、シリア問題、イラン問題の順で国際協調度の高い政策をとる蓋然性が高い。
 
薄氏問題で傷ついた党と国家のイメージを、対外政策でどれだけ回復できるかは疑問だ。しかし、その中国の対外政策いかんで、国際社会の問題の解決の行方が大きく左右されることは確かである。
 
イラン問題と日本の政策
 
330日、クリントン米国務長官がサウジアラビアのリヤドを訪問し、アブドゥッラー国王と会談した。同会談では、シリアおよびイラン情勢に加え、原油増産が協議された。
オバマ大統領は、これを受け、「米国防権限法」に基づき、イランの中央銀行との取引を行っている外国金融機関に対する制裁を発動することを承認した。これにより、イラン産原油取引が制限されることとなった。さらに、EUがイラン産原油を積んだ船舶への再保険を禁止したため、中国、日本などの損保会社がイラン産原油取引に対する保険を行わなくなっている。
これらの措置によって、イランの石油収入は減少していくと考えられる。
 
こうした状況にあるイランに鳩山元総理が、日本政府や民主党の意向とは別に、訪問することとなった。この鳩山氏の行動については、野党のみならず野田首相、玄葉外相も国会答弁で批判的な発言を行っている。
一方、鳩山氏は議員外交も含めて、「外交の一元化」に対する批判的見解を表明した。
 
日本の対外政策は憲法前文に謳われている内容を理念として、その実現に向けて対外戦略、対外政策を立案し、外交政策、外交交渉を行っている。この主たる事務を担っているのが外務省であり、外務省の下での外交の一元化が継続されてきた。
しかしグローバル化の深化にともない、国際交流活動を自治体やNGOなどが行うようになり、また、政府内では外務省以外の省庁も外交を行うケースが増えてきた。
鳩山氏のイラン訪問も、こうした多元外交の一つだと言える。
 
さて、ここで問題となるのは、外交を担う人々がどれだけ「国益」や「外交理念」についての共通認識を持っているかである。これが不十分だと、外交は一貫性を失うことになりかねない。
果たして、鳩山元総理のイラン訪問の目的は何だったのだろうか。
どうも、米・イラン関係を仲介するといった国際益のためというよりは、日本国内の企業(石油関連企業)やエネルギー関連問題などの国内要因で動いたように見える。
 
かつて、日本の外務省は、米国・イラン関係のパイプ役を果たし、レバノンでの米国関係者の釈放に関与したことがある。しかし、今回、そうした役割を鳩山氏が担っているとは考えにくい。
なぜなら、米国はイランとの対話は自らできると考えているからだ。
そうだとすると、鳩山氏はイスラエルのイラン攻撃は本気であり、イランは国際的協議のテーブルに着くべきとの助言をしようというのだろうか。
今回の鳩山氏のイランへの議員外交は、国連安保理で対イラン制裁に消極的な中国訪問後である。北朝鮮のミサイル発射が間近に迫り、日米の協調が非常に重要な時期となっている。その時期に、米国が日本に対して疑念をもつような行動は国益にかなうとは言えないだろう。
沖縄の米軍基地移転問題と同じ轍を踏まないことを願う。

米国防権限法について

326日、「米・イラン制裁法の影響」をテーマに、BSフジ「PRIME NEWS」に出演させていただいた。
当日、ソウルでは第2回核安全保障会議が開催され、国内でも参議院で安全保障に関し興味深い議論が交わされていた。
こうしたタイミングも含め、テーマ、構成などはよく考えられていた番組だったが、私自身、もう少し噛み砕いた丁寧な説明をすべきだったと反省している。
そこで、以下に、言及できなかった点も加えて「米国防権限法」について考察してみたい。
 
米国防権限法は、本来は米国の国防費にかかわる歳出法案である。その法案の中にイラン中央銀行(CBI)制裁条項が挿入された。この「制裁」という言葉から、どうも対CBIへの直接的制裁と受け止められがちである。法的には、第三国の金融関係機関が、米国の金融関係機関との取引を継続することを望むならば、イラン金融機関との関係を断つよう迫る間接的制裁となっている。したがって、法が適用される場所は米国であり、対象はイランと金融取引をする第三国金融機関である。
 
米国の対イラン経済制裁は、1979年の在テヘラン米国大使館占拠事件で関係が悪化し、米国大統領令として制裁がはじまる。その後、1996年のイラン・リビア制裁法(IRSA200年改正)、2010年のイラン包括制裁法(CISADA)などが米議会で成立している。
これらの法案は、キューバへの経済制裁を謳った「ヘルムズ・バートン法」、ミャンマー制裁法などと同様で、国内法で外国企業の対外活動に対する制裁を行うというものである。このため、国際社会では、同法はWTO協定を含む国際法上、許容される範囲を超えた「域外適用」になると指摘する声もある(日本も200710月に米国に対しWTO協定との整合性の問題がある旨指摘している)。
オバマ政権の対イラン政策は、強硬姿勢をとる共和党や在米ユダヤロビーから、及び腰だとの批判を受ける一方、国際社会からの指摘に配慮し、制裁法の運用には慎重姿勢で臨まざるを得ないという難しい立場にある。
 
ここで注目したいのは、2010年に米国議会両院で承認され、7月にオバマ大統領が署名したイラン包括制裁法案である。この法案の104条は、米財務省が主体となって、イランの革命防衛隊に関係する取引を行っている第三者金融機関の米国におけるコルレス口座が開設・維持されることを禁じる措置について定めている。
この施行規則については、米財務省が8月に開示したが、運用面で不透明な点もあり、国際的に問題があるとみられている。
この法案が成立した2010年において、オバマ政権の政策立案に影響を与えた国内要因のうちウェイトが高かったのは、11月の中間選挙であったといわれている。
 
オバマ政権は、201111月に米財務省主導で愛国者法第311条に基づいて、イラン中央銀行と第三者金融機関のコルレス口座を開設・維持を禁じる措置を発動しており、2010年の経緯とよく似た動きを見せている。しかし、オバマ政権の弱腰外交を批判する議会からは、201211月の米大統領選挙および上下両院選挙を前にして、より強硬姿勢を示すべきとの声が出ている。例えば、対イラン制裁を強める「イラン脅威削減法」が提案されたことが挙げられる(下院では可決)。これにより、オバマ政権としては、議会の要求に配慮するとともに、国際社会からの「域外適用」という非難を和らげられる対イラン制裁法を立案する必要性に再び迫られることになった。その議会との妥協が「米国防権限法」への署名である(12月上旬に議会に反対を伝えたが、同月31日には署名した)。
 
同法の特徴は、(1)石油価格の高騰を避けるため、実施まで6か月先送りすることができる行政権限を明記している、(2)大統領判断で、対イラン制裁の目標達成に協力的な企業国や「国家安全保障上の利益」につながる国については、制裁措置発動を撤回できる点である。
これを適用し、米国は320日、同法案の適用対象から11か国を除外するとの発表を行った。日本は英、仏、独、伊などともにその11か国に含まれている。
しかし、イラン産原油の主要種入国であり、輸入量削減に消極的であった中国、韓国、インド、トルコ、南アフリカは適用除外とならなかった。
 
米国はこの法案で、イラン産原油の顧客を減らし、顧客がイランとの価格交渉で有利になる状況を作り出したといえる。実際、イランの新聞では、値引きを迫る中国に対する厳しい批判記事が掲載されている。
この他に同法案のポイントとなるものとして次のが挙げられる。
1つは、米国防権限法に対し、表面的には厳しい反発姿勢を示している中国やインドではあるが、それぞれの国益の観点から米国とイランの重要性を比較すれば、対イラン政策を変更する可能性があるという点である。
2つ目は、米大統領選挙を前にして、米国の対イラン制裁のレベルが明確になり、先行き不透明要因の1つが消えたことである。
3つ目は、サウジアラビアが、増産姿勢を表明しており、イラン原油に代わる供給先が確保できるとの安堵感が国際社会に流れていることである。
4つ目は、イランが、安保理常任理事国プラス・ドイツ6者との協議開催を要請しており、トルコなどのイラン外交も活発化している点である。
これらのポイントから、イランの革命防衛隊のホルムズ海峡やサウジアラビア東部州での暴発的行為がない限り、石油価格は下方に動く条件が整いつつあるといえる。
 
しかし、原油価格の高止まりの影響で、日本でもガソリン価格がリッター当たり160円を超えるなど経済への悪影響が出ている。原油価格を巡っては、イラン要因以外にも、リビアでの部族衝突、イラクで多発するテロ事件、ナイジェリアや南スーダンでの政治不安の高まりなど不安材料が多数ある。さらに、EUのイラン産原油取引に関する保険・再保険禁止に伴う影響もある。
こうして見ると、日本で原子力発電がほとんど停止する中、イランをはじめ中東情勢の安定化は日本のエネルギー安全保障に直結するのだと再度認識させられる。このことを踏まえて、日本の対外政策のあり方を今一度見直す時かもしれない。
 

人間の命を考える

国連の安全保障理事会は321日、対シリア議長声明を全会一致で採択した。議長声明は安保理メンバー国が、悪化するシリアの人権状況を前にしたアナン前国連事務総長の緊急人道支援への提言を推進するというものである。
一部報道では、米国がすでに、シリアに人道支援要員受け入れを求める安保理決議案の作成の意思を示していると伝えられている。
少なくとも、この議長声明がシリアでの「人間の尊厳」を確立する第一歩となるよう国際協力を推し進めなければならないことは確かである。
 
「尊い人間の命」という観点では、フランス南西部トゥールーズで起きたユダヤ人学校でのアルジェリア移民の青年による教師、児童殺害事件(319日)やアフガニスタンのカンダハルでの米国兵士による銃乱射事件(311日)など、何故だ、と思わず声がでてしまうような事件が続いている。
冷たい引き金を引く瞬間、人はわれを忘れるのだろうか、爆弾やミサイルの発射ボタンを押す瞬間、人は神に祈るのだろうか。
一方、無辜の市民を標的にすることも厭わなくさせてしまうほど、国家や民族への帰属意識を高める空間が存在していることに戦慄を覚える。
 
アフガニスタンでは、1979年のソ連の侵攻以降、戦いは止まない。現在の同国の情勢は、北大西洋条約機構(NATO)が作成した報告(4000人のタリバン捕虜の証言と27000回の尋問より)によると、同国治安部隊の一部がパキスタンのタリバン支援に関与していることや、タリバン幹部は同組織が円滑に勝利し政権に返り咲くことに確信を持っているという。
アフガニスタンの治安機関は、軍が184000人、警察145000人に上るまで人員の整備がされている。しかし、そこに所属する人々の識字率は低く、集団として連帯行動が十分とれないなど治安能力の向上には時間がかかる。
一方、このような訓練には費用もかかるが、復興支援国会議での支援額を提示したものの、実質は支援をしていない国もあり、財政面での問題も生じている。
 
今後、銃乱射事件の報復で高揚したタリバン側の攻撃が強まることが予想される中、前線にいる国際治安部隊の兵士たちの緊張感はより高まっていると思われる。
その一方、米国国内ではアフガン人16人を殺害したロバート・ベールズ2等軍曹の軍事法廷においては、被害者の遺族やアフガン市民の怒りとは別に、「戦場が作る狂気」が語られることになるだろう。そのことで、米国の世論では厭戦機運が一層高まると思われる。
その中、オバマ大統領は選挙戦を戦うと同時に「オバマの戦争」と呼ばれるアフガニスタンでの戦いを続けられるだろうか。
 
近代国家においては、市民は国家に自らの安全など多くのことを委ねている。しかし、ユダヤ人学校関係者への銃撃事件が起きたフランスにおいても、イラクやアフガニスタン、シリアなどにおいても、国家が市民の安全を守ることが難しくなっている。
そして、日本においても、東日本大震災と安全・安心を委ねてきた政府への信頼が消えた。
世界的に、国家と市民の間で信頼関係を結びなおす必要性が生まれているように思う。

緊張高まるイラン情勢

中東地域では、イラクのフセイン体制の崩壊によって、イラク南部からイラン、シリア、レバノンとイスラムのシーア派が多く分布している三日月形の地域の存在感が増している。中心となっているのはイランである。
 
そのイランが核兵器を開発できる環境を着実に整えている。これは他の中東地域諸国にとっては脅威である。特に、これらのシーア派地域の指導者たちがエルサレム(イスラムの3大聖地の1つ)の解放を主張していることから、イランが核兵器を持つ可能性があるということは、イスラエルおよびその同盟国である米国にとって安全保障上の死活的問題であり、大きな脅威である。
また、イスラム法(シャリアー)の法根源の解釈がシーア派と異なるスンニー派の湾岸諸国にとっても、イランの核開発や軍拡は脅威だと感じている。
一方、国際社会は、これら湾岸諸国が自己防衛の観点から核兵器の保有という政策選択をする恐れがあることを懸念している。国際社会は、イランによる核兵器保有は世界のエネルギー供給の中心地帯で核拡散が起こるドミノ現象を招くと想定しているからこそ、国連安保理を中心にイランのウラン濃縮活動の阻止に努め続けているといえる。
 
その阻止行動の中で、最近、注目される動きがあった。
それは、世界の金融機関の決済情報サービスを提供している「国際銀行間通信協会」(SWIFT)が、EUの経済制裁の対象となっているイランの金融機関(30社以上)へのサービスを317日から停止したことである。また、EUの保険会社は7月以降、イラン産の原油や石油製品を積んだ船舶への保険サービスを行わない方針を示している。
これらによって、イラン経済は資金繰りが難しくなり厳しい局面に追いつめられることになる。
 
314日、ロイターは、ロシアの「コメルサント」紙(14日付)を引用し、米国がロシアに対し、イランが申し入れた6か国との協議(安保理常任理事国およびドイツ)が「最後のチャンス」になるとイラン側に伝えるよう依頼したと報じた。
この報道に合わせるように、米国の民間研究機関から、イランが核兵器用起爆装置の実験をしたとの疑惑が持たれているバルチン軍事施設内の建物の衛星写真が公表された。なお、イランは今年1月、2月に国際原子力機関(IAEA)の同施設への訪問を拒否している。
また、315日付「タイムズ・オブ・インディア」紙は、インドのイスラエル大使館の公用車爆破事件で、イラン人3人に逮捕状が出たと報じている(3人は国外に逃亡)。
こうして見ていくと、イランは6か国との協議を前に、早くも苦しい立場にあるといえる。
 
国際エネルギー機関(IEA)によると、イランの2月の原油生産は日量338万バーレルとなり、2002年の水準となっている。今後もEUによるイラン産原油の全面輸入禁止により、イランの輸出水準は下降することが予測されている。
そのことは、イラン国内の物価高騰と合わせて、イラン革命体制のあり方への批判として現れつつある。
同国のイスラム体制は、こうした状況への対応として、314日にアハマディネジャド大統領を国会喚問し、責任を負わせる環境を整えつつあると考えられる。
 
こうしたイランの指導体制内の対立が、「最後のチャンス」を生かすことに繋がっていくのだろうか。また、このような状況で、国際的に追い詰められる中で、革命防衛隊の一部が暴発しホルムズ海峡およびその周辺で何らかの事件が起きる危険性をコントロールしきれるだろうか。
 
314日、ワシントンでの米英首脳会談後、オバマ大統領はイラン問題に触れ、「外交的に解決する余地は小さくなりつつある」との発言を行った。
イランと、北朝鮮やシリアとの関係が報じられる中で、イランに対する国際世論も厳しさを増しつつある。例え「交渉」が実現したとしても、イランにとってはハードルが高いものとなるだろう。
 
現在、国際社会は対イラン交渉において、交渉窓口を開く以外に、公海(ホルムズ海峡)の安全航行を堅持するため、インド洋での軍事力を増強している。加えて、313日にイスラエルのミサイル艦がスエズ運河を通過し紅海に入ったとの情報もある。6か国とイランとの協議の状況いかんでは、イラン問題が一気に緊張するとも考えられる。
その背景には、イラン問題が決着に向かえば、行き詰まりを見せているシリア問題や北朝鮮問題に影響を与えられることがあると考えられる。
一方、イランへの軍事圧力強めることは、イラン側がペルシャ湾の封鎖を試みることや、サウジアラビアをはじめ湾岸産油国のエネルギー関連施設へのテロ行為を行うなどのリスクが高まることでもある。
 
最悪のシナリオは、中東からのエネルギー供給が途絶えることだろう。果たして、国際社会はこのリスクをコントロールできるのだろうか。
 

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