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1月7日、防衛省で、陸上自衛隊が南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に派遣する施設部隊の隊旗授与式が行われた。
同派遣隊は1月11日に先遣隊を送り出すことになっている。その後、3月まで順次210人(1次隊)が、5月以降は交代要員としての2次隊約330人が南スーダンに入る予定である。
その任務は、2011年7月9日に独立した南スーダンの首都ジュバの道路や橋、空港などのインフラを補修することとなっている。
その南スーダンでは、2011年末からロウ・ヌエル族とムルレ族の間で民族対立が続いている。
1月2日付のロイター通信によると、ロウ・ヌエル族の武装集団(およそ6000人)が、東部シュングレク州のピポル郡(首都ジュバから340km離れている)を襲撃し、ムルレ族の住民3141人(女性とこども2182人、男性959人)を殺害した。
国連人道調整官の話では、同事件で約2万人以上が避難民として移動しており、健康状態が懸念されている。これに対応するため、1月5日に南スーダン政府は「人道危機」を宣言し、国際援助機関の緊急支援を求めねばならないまでの状況となっている。
また隣国スーダンのメディアによれば、昨年12月15日および18日に同国領内でイスラエル空軍が武器密輸関係者を標的とする空爆を行ったと報じた。このイスラエルによる攻撃は、スーダンがイランからガザ地区への武器密輸の中継点となっているため実施されたと見られており、2009年にも同様の攻撃が行われている。
この2つの出来事を見ても、陸上自衛隊が派遣される南スダンやその周辺地域は依然として不安定な治安状況にあり、そこでの平和維持活動の安全性は決して高いとは言えない。
このような地域に自衛隊を派遣する民主党政権の対外政策について、もう少し日本国民は関心を持ち、その意味や決定過程について認識を深めておくべきではないかと考える。
派遣隊全員が任務を無事終了し帰国することを願う。
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イラン制裁問題に関し、2011年12月31日にオバマ政権は国内法ではあるが、イラン中央銀行と取引がある外国金融機関に制裁を課す法案に署名した。また、欧州連合(EU)は、イラン産原油の輸入禁止を今月末の首脳会議で決定する方針である。
この問題に日本の政策立案者や決定者が注目しているのは、エネルギーの安定供給問題と国際協調という2つの政策課題があり、それらを解決するための政策案を策定することが求められるからである。
日本の対外政策がよって立つ基本理念は、憲法前文の精神に求められている。それは、(1)自由と民主主義、(2)平和主義、(3)国際協調主義、(4)人類への貢献である。
この基本理念を踏まえれば、日本の対イラン政策は次の方向性をとることになるだろう。
まず、平和主義の観点である。
憲法前文には「恒久の平和を念願し・・・・全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と謳われている。この点から、日本の政策は、国際社会がイランの核開発を脅威と認識し、ウラン濃縮活動の停止を国連安保理決議で求めていることに賛同し、世界平和の実現を目的として国際社会に働きかけるものとなるだろう。
次に、国際協調主義の観点である。
憲法前文には、「いずれの国も自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」「われらは・・・・国際社会において名誉ある地位を占めたい」とある。このことから、日本国内の特殊な事情を理由に国際的な秩序づくりに参画しないことは望ましくないとの考えが導き出されるだろう。
以上のことから考えると、日本の原油総輸入量の約1割をイラン産が占めており、その決済はイラン中央銀行を介しているという特殊事情を国際社会に説明し、特別な配慮を求めるといった対イラン政策は、基本理念にそぐわないと言えるのではないだろうか。
政策過程において、政策決定の中心である総理がすべての問題に注意をはらい、それらの政策案に目を通すことは困難である。このため、大臣が分掌し各省庁の各部門が事務を分担する。この時、省内での政策立案において対立が見られることがある。日本の対イラン政策もその1事例である。
1979年のイラン革命以来、外務省内部で政策立案について、北米局や総合政策局と中東・アフリカ局との対立が生じることもあった。その背景には、日本が(1)安全保障を米国に依存してきたこと、(2)資源を持たざる国でありながら、第二次世界大戦後も資源外交をおろそかにしてきたこと、(3)イラン・北朝鮮の軍事協力に対する無関心さがあったことがあると言えるだろう。
そして、その結果、政府開発援助を使ったカルーン・ダムの建設やアザデガン油田開発などに関し米国の対イラン政策と摩擦が生じることもあった。
核開発問題をはじめとして、国連のもとでの国際秩序づくりは、北朝鮮における政治不安が高まっている現在、より重要なものとなってきている。
1月12日に予定されているガイトナー米国財務長官と野田総理の会談は、「対米配慮」という外交姿勢ではなく、「グローバルパートナーシップ」に基づいた対イラン政策をアピールしてほしい。
それによって、シーレーン問題への関与を示した昨年末の総理のインド訪問や、エネルギー問題に対応する玄葉外相の中東歴訪もより生きてくるのではないだろうか。
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新たな年を迎えました。
2012年は「政治の年」といわれるように、政治体制を決める選挙が世界各地で実施される。また、昨年12月の北朝鮮の政治指導者の交代により、日本の安全保障上、これまで以上に朝鮮半島を注視すべき時期に入った。
このような国際情勢の不安定さが増す要因に加え、エネルギー問題でも懸念材料が増えている。以下にこの点について考えてみる。
地球の人口は、2011年10月に70億人を超えた。これからも人類は数を増やし、生活を向上させる方向に進むだろう。今後しばらく、その中心地域はインドを含めたアジアである。現在、その人口動態のボーナスがアジア地域の経済成長を支えている。
しかし、このボーナスは気候変動問題、食糧問題、水問題、感染症といった地球規模問題などへの負の影響という「不安感」を人々に抱かせる要因になっている。
また、昨年の東日本大震災に伴う福島原発事故による原子力発電の継続問題が、地球規模問題の1つであるエネルギー問題に新たな課題を投げかけている。それは、再生エネルギーへのエネルギーシフトの早期達成の困難さに伴う原油・天然ガスの需要増にどう対処するか、というものである。
現在の国際情勢において、この課題の難しさを改めて認識させられる出来事が新年早々起きた。それはイラン海軍によるミサイル試射であり、国際的に多くのメディアが報じた。
問題は、イラン側が国際経済の不安定性を踏まえて、グローバルメディアの力を利用して原油価格を上昇(これにともない天然ガス価格も上昇する)させることができることを、国際社会に見せつけていることである。
イランは今回の試射を、国際社会が同国の核開発問題に対し、イラン中央銀行との取引禁止まで実施し始めたことへの対抗措置と位置付けているとも考えられる。
イランは、ペルシャ湾の出入り口であるホルムズ海峡を軍事的に封鎖できる能力(射程200kmの対艦ミサイルやレーダー追尾を避けられるミサイル)を示すことで、国際社会の対イラン経済制裁を強める流れを阻止することに加え、次のような政策効果も視野に入れているだろう。
(1)対イランの海軍兵力、空軍兵力の展開に対する警告
(2)イランが原油価格上昇に影響力があることを明示
(3)湾岸アラブ産油国に対イラン政策を変更させるための圧力
(4)原油価格上昇による石油収入の拡大
このイランの行動によって、国際社会は原油・天然ガスの供給が減少するリスク、先物市場での原油価格上昇による経済リスク、さらに保険料金の上昇に伴う輸送コスト上昇の経済リスクなどへの対応を迫られることになった。
そして、その対応が長期化することに加え、イランの(1)核開発の進展状況、(2)イラクでの影響力増加、(3)アフガニスタンでの反体制派への支援行動いかんでは、対イラン武力行使といった不確実な状態を想定する必要性が高まっていると言えるだろう。
2012年初頭から、日本は近隣の朝鮮半島問題に加え、エネルギー安全保障問題から生じるリスク連鎖に十分気を配るようにとの警告を受けたようだ。
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2011年の中東地域の一番の話題は、チュニジア、エジプト、リビアとドミノ倒しのように長期政権が崩壊したことである。
そして、11月23日にはイエメンのサレハ大統領が権限を副大統領に移譲する文書に署名し退任の意向を示した。
さらに、シリアではアサド政権に対する市民の抵抗運動が9か月以上を経た現在も続いている。
こうした政治変化以外にも、5月1日には米国の特殊部隊シールズがパキスタンでアルカイダの指導者オサマ・ビンラディンを殺害したことも大きな出来事である。
アルカイダは、ビンラディンの後任の指導者としてエジプト人のザワヒリ容疑者を選択した。現在、アルカイダの力は衰えたとの分析が主流ではあるが、イエメンに拠点を置くアラビア半島のアルカイダ、アルジェリアなどのマグレブ(北アフリカ)のアルカイダなどの活動が依然として見られている。また、カダフィ後のリビアでアルカイダが拠点づくりを進めているとの報道がある。さらに、米軍撤退に合わせてイラクでもテロ活動を活発化させているようだ。
2012年は、この2つに、イラク、アフガニスタンの平和維持の動向、対イラン制裁の動向などが加わり、中東地域の不安定性が増す蓋然性は高い。
したがって、本ブログでも気を引き締めて、これらの情勢に関する情報、見方などを掲載できればと思っている。
本年は、東日本大震災の被災地支援活動の関係などもあり、かなり長期にブログを休みました。ここにお詫び申し上げます。
2012年が希望の年となるよう、心より祈念申し上げます。
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2012年の国際社会は本年よりも、政治指導者にとって政策目標や目標値を定めることが一層難しい年になるだろう。
なぜなら、政策決定に関与するアクターがこれまで以上に多様になることに加え、「自由」と「平等」といった、相対する究極的価値基準の選択に迫られる可能性が高まると思うからだ。とりわけ「アラブの春」と呼ばれる政変が起きた国の政治指導者たちは、国づくりの難しさを経験することになるだろう。
現在のところ、チュニジア、エジプト、リビアなどの政変後の中心的政治勢力がイスラムという価値基準(神のもとでの公正と公平)を政策形成、意思決定に取り入れる動きが目立つようになっている。これは、政策形成においては目標集団の特定化やニーズの確認を心がける(政策マーケティング)ことが当然とされている先進諸国の多くとは異なる方に向かう動きといえる。
さらに、全国民を対象として政策が実施されることが少なくないため、マイノリティ(宗教、民族)への対応問題が生じてくる。すでに、エジプトのコプト教徒の反発や世俗的政府を望む人々の懸念がメディアで話題となっている。
このマイノリティ問題では、マジョリティとの摩擦の状況に焦点を当てることも重要だが、国づくりの観点からは、政府が各政策をマイノリティにどのように強制(coercion)しているかに注目する必要がある。
この点について、アメリカの政治学者のセオドア・ローウィ(Theodore J. Lowi)は(1)強制がどのように適用されるか、(2)強制がどのように起こり得るかを考察し、関与するアクターとの関係性を分析する必要があると指摘している。
この考えを踏まえると、アラブの政変を起した国で、仮にイスラム教徒の多数を中心においてイスラムによる社会規範を全国民に強制することになれば(例えばタリバンの実質支配下のアフガニスタン)、イスラムの正義の名のもとでの正義が繰り広げられることになる。
政変が起きたアラブ諸国は現在、選挙制度や行政機関などの改革を行う政策を実施している段階にある(構成的政策)。しかし、これらの国は今後、社会問題に対応して個人や企業の活動を制限する政策(規制政策)や階層間や企業・個人間での資源分配を決める段階を迎えることになる(分配政策)。
この時、各政策がマイノリティのニーズにどのように配慮できるかが政治を安定させるカギとなる。その際、政策立案者が自覚すべきは、イスラム教徒が多数を占める社会空間に生きていることで、自分自身がイスラム的社会規範の順守というソーシャルプレッシャーの中で社会化されているという点である。
この自覚こそが、多文化共生が実現された安定的国づくりの第一歩となる。
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