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予想を上回る日本の少子化のペースにより、社会保障(年金、医療、看護など)への影響がますます懸念されるようになっている。さらに、少子化は労働力不足や購買力の低下を生むとして、企業活動への悪影響も声高に語られ始めた。そこで、この対応について考えてみる。
日本の合計特殊出生率は、平成17年では1.25(東京は0.98)であった。平成16年の1.29をさらに下回り、5年連続低下し続けている。これにより、死亡者数が出生数(106万2604人)を2万1408人も上回り、自然増加数はマイナスに転じた(人口減少社会)。厚生労働省は、この原因として晩婚化、晩産化に注目している。平成17年の平均初婚は夫が29.8歳、妻は28歳であり、第一子の出産年齢は29.1歳となっている。一方、高年齢者人口(65歳以上)は、対前年比72万人増の2560万人と過去最高となった。また、同年の1年間のがんによる死亡者数は32万人で、これも過去最高である。このような状況に対応するため、科学技術白書では、(1)生産性を高める技術開発・技術革新の促進、(2)長い人生を豊かに暮らすことができる文化、芸術のための科学・技術開発を目標に定めている。その実現方法としては、サイボーグ技術や看護用ロボット、脳科学研究、高年齢医療の充実などが挙げられている。一方、出生率問題では、(1)乳幼児手当ての拡充、(2)所得税額控除、(3)妊娠中の検診費用の軽減などが検討されている。
このような政策実施には、地方自治体や政府の財政支出の厳しい現実が壁となり、有効な政策がまとめきれていない状況にある。また、各政策立案に際しては、生活維持体系としての制度や技術面に議論が集中する傾向がある。しかし、むしろ、生、老、死という文化的意味体系の変質を十分踏まえた上で、生活維持体系の改革に取組む必要があると考える。
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