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欧米メディアではイランのアスガリ元国防副大臣の失踪事件が取り上げられている(3月8日付ワシントン・ポスト、11日付サンデー・テレグラフ http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/middle_east/article1497034.ece など)。同事件に焦点が当てられるのは、同氏がイランの革命防衛隊とヒズボラの関係やイラン国内の核施設、軍事施設に関する情報を知り得る人物であり、その情報がこの時期に、イスラエル、米国にわたることは大きな意味を持っているからである。時を経れば、公開情報でも同事件のある程度の真相が確認できることになるだろう。
ここで少し観点を変えて、現在、日本で話題となっている情報活動機能強化から、この問題を考えてみよう。米国には「対敵情報活動行政官室」がある。ここでは、スパイ活動防止のための戦略に取り組んでいる。同室の責任者のジョエル・F・ブレナー氏は、FBIの長年の情報提供者であった人物が中国政府と繋がっていた例を上げ、工作員を寝返らせたり、支援者を補充したりした実例について語っている(3月6日付ワシントン・タイムズ)。果たして、このような情報活動や対敵情報活動を日本の関係者(外務省、防衛省、内閣府など)が行うことができるのだろうか。ワシントンでのロビー活動や、国際社会で日本のパブリック・ディプロマシーを強化するなど多くの課題を抱える状況でもある。 現在、日本政府の一部には、人的情報源から収拾される情報資料(インフォメーション)をより重視すべきとする考えもある。このような考え方によりヒュミント(人的情報)収集を強化するには、まず人材育成が大前提であり、時間と費用がかかる。また、同盟国や友好国から、日本が対敵情報活動の対象者となりかねない人物を送り込むのではないかと疑われるリスクも生じる。さらに、仮にアスガリ氏が欧米への情報提供者であり、欧米の支援により亡命したのだとすれば、同様のケースで亡命支援を日本政府が行うことができるだろうか。一方、ヒュミント収集に当たった人物が、関係国にスパイ行為とみなされ、身柄拘束された場合、日本政府はどのような対応が取れるのだろうか(その人物を見捨てざるを得ないケースがないとは言えない)。 9.11同時多発テロをはじめ欧州でのテロやテロ未遂事件では、イスラム過激派はコンピュータを駆使して情報収集を行い、綿密な準備をしてきたといわれている。この例で言えば、かなりの情報は公開情報で収拾可能である(8割ぐらいといわれている)。ブレナー氏も、コンピュータの活用による情報収集はスパイ育成のための経費やリスクを軽減できるメリットがあると指摘している。情報機能の強化は、もっと足元から見直すことが大切なのではないかと、この事件からも考えさせられた。 |
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2007年03月12日
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