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2008年5月の推薦図書

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本書は2001年9.11米同時多発テロ後、米国心理学会の要請でテロリズムを心理・社会的アプローチから分析し、理解を深めることに貢献する目的で編纂されたものである。各執筆者のパースペクティブは様々であるが、テロ行為について理解するためには文化的多様性の理解が不可欠との認識のもとでまとめられている。9.11テロ事件はわれわれの記憶から遠のきつつあるが、アルカイダをはじめ国際テロ活動は継続している。本書は、テロとは何かを考え続けることの必要性を改めて教えてくれる1冊である。
秋葉原無差別殺傷事件から2週間が経過しようとしており、これまでメディアで同事件に関する様々な見方、意見が報じられてきた。本日ニュースを整理していると、同事件関連の記事ではないが、あるトルコの記事(6月15日付ミリエット紙)に目が止まった。トルコのアンカラ商工会議所の「高等教育と就職」という報告書の内容を紹介したものである。
同報告書によると、トルコの20〜24歳の51万人の高等教育機関卒業者(兵役、入院、受刑者を除く)の内、18万5000人(36.3%)が無職の状態にあるという。また、職についていても収入不足や希望を見出せずに働いている若者もいると記されている。世俗主義をとっているが、国民の大多数がイスラム教徒であるトルコでは、若い世代に社会に対する絶望や不満が広がっていても秋葉原の事件のように、「誰でもよい」という無差別殺人にはつながらないだろうし、その加害者への共感(全面的ではないにせよ)を表明する若者が思いの他多数表れるという状況にはならないのではないだろうか。
この反応の違いはおそらく、生活を維持するための政治、経済といった制度よりも、自文化の中で育まれてきた価値観の差から生れるのだと考える。発達心理学では、こどもの社会化過程において10歳くらいまでに自然に、無意識の内に身に付く価値観が注目されている。トルコを含めイスラム社会では、自己をコントロールしイスラムの生活規範を守ることができるかが人物評価の“ものさし”となっている。一方、「自由」(行き過ぎると「身勝手」となってしまう)が大きな価値観を占める社会では、生活規範が崩れがちであり、他者との比較で優劣の評価が付けられている。
そのような「自由」過重視社会では、自己コントロール、言い換えれば「自分に負けない」という心のあり方は育ちにくいだろう。この心のあり方は、日本の武士道をはじめ伝統社会の中核をなしてきた。そして現在でも「〜道」などの伝統文化の中で継承されている。一方、一般の日本社会では「自分に負けない」心のあり方の継承性は薄れている。それは何故だろうか。
そのことを考えるヒントが、今年、日本人移民100年を迎えたブラジルにあるように思う。同国では、日本人移民の1世、2世が厳しい生活の中で「自分に負けず努力を続けた」生き方が教育の現場で理念として生かされ、高く評価されているとの報道があった。ブラジルでは、戦後、日本でGHQ(占領軍)が行った新聞や雑誌に対する検閲(江藤淳先生が明らかにした「閉ざされた言語空間」)を受けることがなかったからこそ、日本人の「自分に負けない」という価値観が継承され、それが体現され続けているのかもしれない。一方、日本では戦後、検閲に加え、「自由」「民主主義」をキリスト教文化という基層文化と関連付けることもなく祭り上げて語る知識人が多く排出されてきた。このように、現代日本の足元には、戦前の日本文化との、さらには欧米文化との、文化的断層が横たわっているのだろう。その活断層が今、日本社会を揺り動かしているのかもしれない。
秋葉原事件に関して、“若者の声に耳を傾け、若者を見つめよ”との意見が多く聞かれる。しかしその前に、人生の先輩として後人に何を語り、どのような姿を見せてきたのかを問い直さなければならないと自戒を込めて考えている。

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