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4月8日、オバマ米大統領とメドベージェフ・ロシア大統領がプラハで核兵器削減の軍縮条約に調印した。このことが中東地域にどのような影響を与えるのかについて、当然考えねばならないだろう。
ここでは短期的に生じると考えられる2点について述べておこう。
1つは、イスラエルの核兵器に関する問題、そしてもう1つは、イランの核開発阻止のための国際協力の問題に関することである。
前者については、ネタニヤフ・イスラエル首相が4月12日からワシントンで予定されている核安全保障首脳会議への参加を取りやめ、代理としてメリドール副首相の出席を決めたという影響が既に出ている。
オバマ大統領の提案である「核なき世界」の実現は、同大統領が自ら語っているように、長い道のりではある。しかし、米ロが削減に動いたことは、核兵器保有国にとって当然圧力となる。
イスラエルでは1960年代に核兵器開発が行われ、67年戦争(第3次中東戦争)で実戦配備されたと推測されている。2007年にはオルメルト元首相が核兵器保有について言及しており、08年にはカーター元米大統領がイスラエルの保有核兵器数は150発以上であると発言している。
こうしたイスラエルに対し、今後、オバマ大統領をはじめ国際社会としては、最低でも核拡散防止条約(NPT)への加盟を要請すると考えられる。
イスラエルと米国間には現在、中東和平問題においても入植地での住宅建設計画の凍結問題を巡り意見の対立が見られている。
ネタニヤフ政権となってから、国際的な秩序形成を無視するイスラエルという印象が国際社会に広がりつつあり、その中で米・イスラエル関係も悪くなっている。
4月9日にジョーンズ米大統領補佐官(安全保障担当)は、ネタニヤフ首相の安全保障会議欠席について「(両国の)関係が良好であることにはかわりはない」と述べている。
米国中間選挙に向けて、オバマ政権も国内のユダヤ関連団体の動向が気になるところであり、イスラエルとの軋轢を増したくはないだろう。
しかし、オバマ政権がイランの核開発問題に強い姿勢で臨む一方、イスラエルに対しては柔軟な姿勢を示せば、国際社会における同政権の外交の信頼性は低下するだろう。
したがって、オバマ政権の対イスラエル政策の舵取りは今までになく重要となっている。
次に、第2番目のイランの核開発問題への影響について考えてみる。
8日行われたオバマ、メドベージェフによる条約調印後の共同記者会見において、両首脳は、イランが安保理およびドイツのコミットメントグループの提案に応じないことは遺憾であり、対イラン制裁の追加の必要性がある旨、言及した。
イランのアフマディネジャド大統領は、その翌日に行われた9日の「原子力技術の日」の式典で、従来のものに比して6倍も高い能力の遠心分離機の開発に成功した、またナタンツの濃縮施設の分離機を増大させた(8600機から6万機)旨を表明している。
イラン側はあくまで強硬姿勢を貫くことを表明したわけである。
イスラエルとイランは、相互に相手を脅威と感じ、軍事的対応も検討している。
イラン側では、アフマディネジャド大統領がこの外的脅威を利用し、反イスラエル、反米をスローガンにして、革命防衛隊を中心に勢力基盤の強化を行っている。中東地域では、それが紛争発生の蓋然性を高める要因となっている。
この要因を取り除くには、国連を舞台に安保理が両国に「対話と圧力」の行動をとらねばならないだろう。例えば、次のようなことが考えられる。
イスラエルに対しては、南アフリカやリビアのように核兵器を放棄するプロセスを示すことを要求し、その果実として中東域内諸国との相互承認、相互不可侵、安全保障措置などを内容とする“中東安全保障条約”の締結を提示する。
一方のイランに対しては、ウラン濃縮停止の果実として、イランのエネルギー産業への経済制裁の一部解除を提示する。
「核兵器なき世界」は、これまでのような政策選択では実現することが出来ないのは確かである。オバマ大統領のノーベル賞授賞の意味は、今回の米ロの核軍縮条約締結だけで十分とはならないだろう。
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2010年04月11日
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