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エジプト情勢は、ムバーラク大統領が次期大統領選の不出馬を表明したことで、ポスト・ムバーラクは誰か、が話題に上り始めている。
 
抗議運動側のスポークスマン・交渉人的存在となりつつある前IAEA事務局長エルバラダイ氏、アラブ連盟の事務局長を務め諸外国に人的ネットワークがあるアムル・ムーサ氏などの名前がマスメディアで挙がっている。
また、現閣僚の中では、副大統領のオマル・スレイマン氏、首相のアフマド・シャフィク氏、国防相のタンタウィ氏などが挙げられている。
 
これらの人物以外で、私が注目しているのは次の2名である。
1人目は、ガド党(ガドは「明日」の意)のアイマン・ヌーリ氏。
1964年、マンスール生まれ。20049月にガド党を設立した。ヌーリ氏はイスラム的価値観を重視するが、政教分離を掲げており、米国との関係も良好である。
与党NDPやムバーラク大統領の統治に批判的な発言を行ってきた。
20051月、政党設立の申請内容に虚偽があったとして逮捕されたが、立候補していた9月の大統領選後に裁判は持ち越された。その時に同氏の得票は7.3%で、ムバーラク氏(88.6%)に次いで第2位であった。その後、収監されていたヌール氏は、20092月に突如釈放された。20102月に2011年の大統領選への出馬を表明している。
 
もう1人は、軍参謀総長のサミ・アナン(※メディアに合わせてこの表記に統一します)氏である。1948年、カイロ生まれ。エジプトの468000人と推定される軍のトップである。同氏はムバーラク大統領に二男ガマル氏への政権移譲をしないように助言したと言われている。また、訪米中、エジプトが政情不安に陥りつつあることを知り日程を短縮して128日に帰国した。この訪米の際、アナン氏はマレン米統合参謀本部議長らの政府関係者とエジプト情勢について意見交換を行ったと報じられている。
 
以上、名前を挙げた人物の共通点は、米国と良好な関係にあることである。
これらの人々以外では、宗教活動家に注目を払う必要があるだろう。
 
中東では、市民の抗議運動によって政権交代が促されるという状況が続いている。
チュニジアでは114日にベンアリ政権が崩壊し、21日にはヨルダンでリファイ内閣が総辞職した。
そして同1日、エジプトではムバーラク大統領がテレビ演説を行い、即時辞任の意思はないこと、大統領再選を目指さないことを表明した。その演説の中で、同大統領は残りの任期中(9月まで)に、①憲法改正、②社会経済改革の確実な実施、③人権、自由を尊重した治安維持などを遂行する旨述べた。
これに対し、市民運動側からは大統領の即時辞任を求める声が少なくない。
 
さて、今後のエジプト社会が進む方向は、現時点では次のようなシナリオが考えられる。
①ムバーラク政権のまま軟着陸:
同大統領の意思を尊重する形で政権移行が進む。
②交渉によるムバーラク大統領の退陣
ムバーラク政権と市民運動の「代表者」が交渉する。このケースのポイントは、ムバーラク大統領が速やかに辞任し、副大統領のスレイマン氏を後継者(ただし新憲法下での選挙まで)とするという落としどころに現政権側がもっていけるかどうかだろう。
③市民による暫定政権樹立
これはチュニジアと同様のパターンで、市民運動側が全面的な変化を強く求めた結果、ムバーラク大統領と新内閣全員を退任させ、その後、スレイマン副大統領と市民運動側との交渉によって暫定政権が成立する。このシナリオで注目すべき人物はエル・バラダイ氏だろう。
④軍主導の政権樹立
市民の抗議運動が鎮静化せず、ムバーラク大統領側も妥協的政策を出さない状況が続く中で、軍による政権掌握がなされ、暫定政権が樹立される。このシナリオで注目すべき人物は参謀総長のサミー・アナーン氏である。
 
21日の市民運動の状況を報道で見る限り、最悪のシナリオである無政府状態に陥る蓋然性は小さくなっていると言える。
その理由は、①軍が市民と対立的関係になっていないこと、②市民運動の多数を占めている労働者、リベラルな若者(46日運動など)、ムスリム同胞団の各勢力の思惑が、ムバーラク政権打倒では一致していること(「いつまでに」「だれが」「どのように」といった具体的行動方針では合意をみていない点が課題となっている)、③本来エジプトの国民性は「急激な変化」を求めないと言われていることなどである。
これらのことに鑑みると、上記の②交渉によるムバーラク大統領の退陣、または④軍主導の政権樹立のシナリオとなる蓋然性が高いのではないだろうか。
 
このような中東の政権交代が、どのような国際社会のリスクになるのだろうか。
今日の世界的な問題となりつつある雇用問題やインフレ圧力の問題に対し、各国の政治指導者の経済・社会改革の政策選択の幅は狭まっている。
こうした状況に関係し、市民運動が高揚しているイエメン、スーダンで政治不安が高まることが考えられる。そうした政治不安リスクは、中東以外の開発途上国でも同様である。
また、チュニジア、エジプトの政変の要因の1つとなった食糧品をはじめとする物価上昇は、両国の政変によってさらに高まる傾向にある。それは、商品市場、株式市場、国債などの金融分野にも影響を与えている。
政治面では各国が国益や政権維持を図る方向に動き、規制強化やブロック化を強める恐れもある。そして、国内では偏狭なナショナリストや宗教関係者の声が強くなることも考えられる。
 
現在、中東地域で起きている政変を情報手段(フェイスブック、ツイッターなど)に注目するだけでなく、2008年のリーマンショック以降のパワーシフトという潮流との関係から見つめてみることも必要だろう。

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