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中東の社会変化

20103月、拙著『中東を理解する―社会空間論的アプローチ』(日本評論社)を出した。「はしがき」でも書いたが、同書は通常のイスラムやアラブ、中東地域の紹介本ではなく、今日の世界の社会空間の変化が、中東地域に生きる人々の意識にどのような影響を与えているのか、についてまとめる試みをしたものである。
現代社会で意識変化が生まれる主要な要因は、高度通信技術、高度交通システムなどの発達による人々の移動性の高まりであると考えている。
本書では、こうした世界空間での、人々の意識変化と社会変化の連環によって、中東地域という従来の地域概念では収まりがつかない社会空間を創出し、そこに生きる人々の意識、行動のこれまでにない連帯を生み出していることについて指摘した。
この指摘が、まさに今、チュニジアで見られている。その社会空間の変化が、さらに中東各地の社会空間に変化をもたらしている。
 
例えば、123日、カタルの衛星テレビ局アルジャジーラが、中東和平交渉におけるパレスチナ側の内部機密資料約1600点を入手した。同テレビ局は、この資料を「パレスチナ・ペーパーズ」(ベトナム戦争における米国の実情が判明した「ベトナム・ペーパーズ」に因む)と称して、内容の公開をはじめた。これはウィキリークスに影響されたと思われる。
これにより、パレスチナ社会で暫定自治政府への不信感をベースに新たな意識連帯が萌芽しつつある。
また、チュニジアの政変の影響により、イエメンではサレハ大統領の退陣を求めるデモが広がる動きを見せており、エジプトなどでも市民はチュニジアに続けとの声を上げている。
中東地域のあちらこちらで、人々の意識連帯が急速に拡大している。
 
拙著『中東を理解する―社会空間論的アプローチ』(日本評論社)では、まさに、このような国民国家の檻を超えて、人々の意識連帯が広がっていく現象が中東地域で見られていることを指摘した。その一方、イスラムやアラブといった国民国家とは別の檻から抜け出せずに生きる人々の存在にもついても言及した。
モスクワの国際空港でのテロやイラクでのテロは、こうした閉ざされた空間に生きる人々の中から出ている。
 
『中東を理解する』を執筆してから約1年が経ち、中東地域ではフェースブックやツィッターの利用が拡大している。そのサイバー空間において、社会の不正や不公平について語られる中で生まれている「ゆるやかな連帯」によって、中東各国で利益誘導型の政治にブレーキをかけるような活動が広がる可能性がより高まったと言ってよい。
そして、そのゆるやかな連帯は開かれたものであるため、市民運動のうねりとなりやすい。
実のところ、拙著執筆時に考えていたよりも、中東の社会空間の変化が早いので、少々驚いている。
この中東の変化を見つめながら、1年前、理解ある素晴らしい編集者に出会えたことと妻の協力によって『中東を理解する』を出版できたことを今更ながら有り難く思っている。
手前味噌になってしまったが、できれば、拙著を手にとっていただければ幸いである。

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