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メリーランド大学公共政策大学院長のドナルド・ケトル博士は、その著書『なぜ政府は動けないのか』の中で、「転機」を迎えているアメリカについて、「同じ政府のままでは同じように失敗することになる」と指摘し、革新的なガバナンス手法の必要性を説いている。
その一方、マーケティングの権威フィリップ・コトラーはイノベーションについて、飛躍的なイノベーション(ラディカル・イノベーション)と同じくらいか、それ以上に小さなインクリメンタル(斬新的)イノベーションを絶え間なく生み出すことの重要性について述べている。
 
この1年にわたり続いている「アラブの春」と呼ばれる市民の体制への抗議活動を振り返ると、革新的に独裁的な長期政権を打倒する成果が上がっている。それは、中東諸国の市民の社会運動にとって大きな転機になっていると言える。
しかし、すでにその先駆けとなる動きは起きていた。拙著『中東を理解する』(20103月)の冒頭で指摘したように、スーダンの女性ジャーナリストのルブナ・アフマド・フセインが20097月に起こした「ズボン裁判」問題が同国の社会空間に革新的な変化をもたらしている。
 
この問題は、首都ハルツームのカフェでズボンをはいて食事をしていたルブナの行為が、イスラム法に基づくスーダンの法律に反するとして、逮捕されたことに端を発している。この逮捕に対し、ルブナがジャーナリストであり、国連職員でもあったことから、国際的連帯が生まれ、抗議行動が行われた。その結果、主権国家スーダンの司法に対する大きな圧力がかかり、ルブナの刑は軽減された。そして、このルブナの抵抗自体がスーダンの女性の地位や人権意識の向上に結び付く成果を上げた。
 
この事例のような市民の社会参加や自由を求める声は、2003年のイラクへの国際介入後の20046月のG8サミット(シーアイランド・サミット)で発表された「拡大中東・北アフリカ構想」(BMENAI)が実施される中でのインクリメンタル・イノベーションの1つとしてとらえることができるのではないだろうか。
日本の中東研究者の中には、BMENAIが中東諸国の政治・経済に革新的変化を生んでいないことから、政策評価としては厳しい論調がある。
そうした面がないわけではないが、社会開発の面では、中東諸国に「人間の尊重」にスポットライトを当てた改革に着手することを促している。このことで、識字率、デジタル知識の向上をはじめ人間の社会的能力が徐々にではあるが高められ、集団での抗議活動を生む潜在能力となっていった。
 
「アラブの春」はこうした国際社会からの圧力と、(1)2008年のリーマンショックの波紋、(2)食糧危機、(3)ユースバルジ(若者層が突出した人口構造)、(4)ソーシャルネットワークの普及などの要因とがあいまって、市民の社会運動へと結実していったと見ることもできる。
このように、「アラブの春」は革新的な政治変化ではあるが、2003年のイラクへの国際介入からの8年間という時間軸に沿ってみていくと、そこに歴史の連続性も見えてくる。

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