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チュニジア、エジプトの政変、リビアでの内戦、イエメン、シリアなどでの市民抗議活動の激化と、中東地域を揺るがす社会変動は継続している。
424日、AFP通信はイエメンの与党である国民全体会議(GPC)のバカラニ副事務局長の話として、サーレハ大統領が、抗議活動を展開している市民との間の仲介に努めている湾岸協力会議(GCC)の解決案を受け入れたと伝えた。この報道が正しければ、中東地域で国家元首が市民抵抗運動によって退任に追いやられた3人目のケースになる。
 
サーレハ大統領が受け入れたとされる提案は公表されていないが、417日付ハイヤート紙などを参考にすると、①大統領は最長30日以内に議会に辞任を申し出る、②現副大統領もしくはその指名する人に権限を移譲、③野党主導の挙国一致内閣を結成、④2か月以内の新大統領選挙の実施、⑤サーレハ大統領への法的訴追を行わないことを含め十分に保護する、⑥サーレハ共和国防衛隊司令官(同大統領の息子)をはじめ軍・治安関係の要人とサーレハ大統領の親族の国外退去、⑦反政府側についたアフマル少将(第一師団司令官、同大統領の異母兄弟)の国外退去などが含まれている。
 
この1週間のイエメン情勢は、15日にサーレハ大統領がデモに参加する女性を批判し「家に留まるべきだ」と語ったことで、「名誉と尊厳の日」と名付けられた17日には、大統領の退陣を求めるデモは全土で数十万人規模に拡大した。
そして、18日には国民全体会議の中から市民抗議活動への支持者の議員が離党し(3人の閣僚経験者を含む)、新たな政治グループ「公正建設ブロック」を結成した。
 
こうして反サーレハの機運が高まる中で、GCC17日にサウジアラビアでイエメンの反政府勢力と、19日にはアブダビで政府側と協議し、21日にはGCCのザイヤニ事務局長自らイエメンを訪問し、仲介交渉を行っている。
425日、CNNは、サーレハ大統領はこのGCCの仲介交渉への合意の姿勢を見せた野党「合同会議(JMP)」の態度について、「汚い金を受け取った」「民主主義の枠外で権力を握ろうとしている」と批判し、合意文書には正式署名をしていないと伝えている。
 
サーレハ政権への抗議活動を非暴力で展開しているのはJMPなどの政党の他に、ソーシャルメディアを通じて連帯を強めている学生などの市民活動参加者がいる。
仮に、与党GPCと野党のJMPの間で合意が成立したとしても、サーレハ大統領や市民抗議活動参加者が、その合意に加わらない可能性がある(現に、若者層の指導的立場にある人物は、大統領の即時退陣を主張し続けていると24日付AFPは報じている。)。
また、仮に、政権移譲が行われたとしても、イエメン内政が安定化するには長い時間を要するだろう。
こうした状況下、同国に拠点を置く国際テログループ「アラビア半島のアルカイダ」の動向が気になるところである。
リビア情勢は、422日、イラク訪問中のマレン米統合参謀本部議長がリビアの戦局について、「手詰まりに向かっている」と語った。しかし、22日にはカッザーフィー政権軍はリビア第3の都市ミスラタ(トリポリ東方200km)から撤退している。
リビア情勢は、果たして手詰まり状態なのだろうか。
 
22日のマレン議長のリビア分析では、カッザーフィー政権の軍事力は多国籍軍の空爆によって、3040%低下しているとしている。また、21日(米国時間)、ゲーツ米国防長官は、人口密集地でも低空飛行で目標への攻撃が可能な無人機プレデター(ミサイル搭載)をリビアに投入し、戦局を変えると発表した。
米国がリビアでの軍事行動で関与を高める一方、仏英はリビアの反体制派の「国民評議会」への政治的な関係を深めている。特に、サルコジ仏大統領は20日、国民評議会のアドルシャリル代表とパリで会談するとともに、近くリビアのベンガジへの訪問を検討し始めている(22日付「ルモンド」はキャメロン英首相も訪問する可能性があると報じている)。
 
さて、このリビア問題では、アフリカ連合(AU)やトルコによる仲介案が、国民評議会の拒否により停滞する中で、人権保護を理由に多国籍軍の反政府支援が高まっている。このことは、安保理の運用の中立性に鑑みて問題がないのだろうか。
気になる点は、多国籍軍が関与を深めていく際に説明している内容の正確性である。換言すれば、現地情報は客観的に分析されているのかという点である。
国際社会は、湾岸戦争の際の米国議会でのクウェート関係者の証言や、イラク戦争の際の大量破壊兵器についてドイツへの情報提供者の情報源の確認の甘さなど、苦い経験をしている。
例えば、米国がプレデター投入など軍事関与を高める要因の一つとなった、カッザーフィー政権の市民へのクラスター爆弾使用の疑惑や、420日に英国人および米国人ジャーナリストが同政権のロケット弾により死亡したとの疑いなどの立証が未だできていないにもかかわらず、大きく報じられている。
 
フランスは、418日、北アフリカ移民の流入阻止を理由に、イタリアとの国境にある鉄道を一時封鎖した。イタリア紙「ラ・リパブリカ」は、このフランスの措置はEU内の人の移動の自由を定めたシェンゲン条約に反していると非難している。
また、EU内では、フィンランドで野党の「真のフィンランド人」が台頭(5議席から39議席)したことで、①ユーロ圏諸国の債務危機の対応が不透明になり、②EU諸国内で愛国主義政党が躍進する可能性が高まっている。
さらに、原油価格が6月のニューヨーク先物市場のWTI1バーレル=111ドル台をつけたことで、各国のインフレ懸念が高まっている。
これらの悪材料に鑑みれば、来年に大統領選挙を控えているサルコジ大統領がリビア問題の解決を急ぐのはうなずける。
 
各国の対外政策は、「正義」を実現するために実施されているわけではない。むしろ、国益と国際協調のバランスの中で政策立案はなされている。
「保護する責任」に基づく国際介入は、国益、国際協調、人間の尊厳の3要素のバランスのもとで行われることになる。その中で、時として「人間の尊厳を守る」という錦の御旗を隠れ蓑に、国益や個人の野心のために国際介入が実施されることもある。
このブログで何度も書いてきたことであるが、現在のリビア問題は、まずトリポリとベンガジ間に兵力切り離しの国連平和監視部隊を展開した上で、トリポリとベンガジ両地域の代表者に、①国民和解を導き出しリビアの一体性を保つ、②国民投票にかけて分離独立するかどうかを決定するという2つの選択肢について協議させることが、中立的道であると考える。
どうも、欧州諸国の一部にとって都合の良い統治者によるリビアの一体性の保持という結論ありきで、リビア問題の解決は進められているようだ。

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