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イエメンのサーレハ大統領は、一端、湾岸協力会議諸国(GCC)の野党との調停案に署名し1か月以内に退任する道を選択したが、当日(5月1日)になって署名を拒否した。
一方、シリアとリビアでの政治指導者は、政府への抗議活動を行う勢力との対立を深めている。シリアでの死傷者が増加の一途をたどる中、市民の保護を訴える仏、英、伊、米やアラブ諸国などが参加する多国籍軍がリビアにのみ国際介入を行っていることの不自然さが、より鮮明になってきた。
この二重基準といえる対応を取り繕うように、4月27日、リビア駐在のジーン・クレッツ米国大使は、米国務省での記者会見で、リビア政府による反体制派に対する弾圧や攻撃で1万〜3万の死者が出ているという報告を目にした旨述べた。また、同28日にはライス国連大使が、カッザーフィー政権が兵士に、反体制側の住民に対し性的暴力を助長するような戦争犯罪に当たる行為をさせていると発言している。
その一方、米国内でもオバマ政権とはトーンを異にする発言が出てきている。
例えば、4月26日、米中央情報局(CIA)の前長官のヘイデン氏はカッザーフィー政権について、国際テロ組織アルカイダとの戦いでは米国の良きパートナーであったと述べている。
また、国際社会では、デンマークを訪問中のロシアのプーチン首相が27日、カッザーフィー政権は「ゆがんだ君主制で正常とはいえない」とした上で、「カッザーフィー氏抹殺を公言する者までいるが、裁判もなしに人を処刑する権利などあるのか」(4月27日付共同通信)と語り、さらに多国籍軍の攻撃は、リビアという小国のインフラをよってたかって破壊していると述べている。
そして、中国も27日、国連安保理のリビア情勢検討会議で、リビアの各方面に政治的対話で相違を解決するよう呼びかけている(4月28日付中国国営放送局)。
こうした中、リビアでは、4月27日、ミスラタで北大西洋条約帰国(NATO)軍が誤爆で民間人12人を死亡させる事件が起きた(4月1日にも13人が誤爆で死亡)。
さらに、NATO軍は4月30日夜にはトリポリのカッザーフィー氏の住宅を爆撃、リビア政府のイブラヒム報道官によると、この攻撃でカッザーフィー氏の6男のセイフアラブ氏(29歳)と孫3人が死亡した。攻撃を受けた家屋にはカッザーフィー氏と妻もいたが、無事だった。
NATO軍は25日にも、カッザーフィー氏の居住関係施設を空爆し、死者3人、負傷者45人を出している。
戦局が膠着する中、NATO軍は4月22日から複数の地域を標的に空爆を行っており、カッザーフィー氏の住宅があるバブ・アジズヤ地区もこの日に空爆されている(4月25日付AFP通信による)。
カッザーフィー氏は30日早朝、国営テレビで演説し、多国籍軍との前提条件なしの交渉を呼びかけていた。同政権は、これより前の26日にもロシアを通し、国連安保理の緊急会合を開催するよう働きかけており、NATOは今回の空爆後、カッザーフィー氏の家族を標的としたわけではなく、これからも作戦を継続すると表明しているが、今後、難しい対応を迫られることになりそうだ。
4月30日のカッザーフィー氏の演説と、同氏の家族の死は、リビア情勢の分岐点になる可能性がある。
そこで、各アクターの今後の動きを考えておく。
第1に国際社会では、ロシア、中国、インド、ブラジルなどが国連安保理で、決議1973号の本来目的に関し協議を求める可能性がある。
また、アラブ連盟、アフリカ連合の加盟国の中から、多国籍軍の国際介入は石油利権を得るためだとのカッザーフィー氏の30日のテレビ演説に同調する国が出てきて、反政府勢力との仲介努力を強める可能性もある。
さらに、欧米のメディアの中には、今回の空爆が国際法違反との主張を掲げ、リビアへの国際介入の意義を問うものもでてくることが考えられる。
第2にリビア国内については、カッザーフィー政権が掌握している西部一帯で、市民の武装化が進められており、地上での反体制勢力の進軍は一層難しくなるだろう。これにより、内戦が長期化する恐れが出てきている。
さらに、カッザーフィー政権が追いつめられ、形勢が不利ともなれば、本格的にヨーロッパを含め各地でのテロ攻撃作戦に出ることも考えられる。
一方、カッザーフィー氏の家族が空爆で死亡したことから、政権の中枢にいる者から離反者が出ており、同氏の行動を多国籍軍に内通している可能性もある。この点に鑑みれば、カッザーフィー氏の暗殺や政権内部からのクーデタも考えられる。
このことに関連して気になることがある。それは、フランスの哲学者でサルコジ大統領と「国民評議会」を結びつけたベルナール・アンリ・レビ氏が27日に公表した、カッザーフィー氏の退陣を要求した61の部族代表者の共同声明である。このことと空爆が合わさって、現在カッザーフィー政権側にいる部族の中から勝ち馬に乗る者が増えても不思議ではない。
5月5日にローマで予定されるリビア問題での関係国会議が、これまで以上に注目される。
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2011年05月01日
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