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主要国8カ国会議と中東

527日からフランスのドービルで開催された主要8か国(G8)の首脳会議が、宣言を発表して2日間の協議の幕を閉じた。
同会議では、世界経済、原子力安全問題、東日本大震災後の日本との連帯問題と合わせ、中東地域の政治変動に関連して、インターネット問題と平和及び安全の問題が話し合われた。
注目点は、インターネットについて(1)社会・経済の成長に不可欠である、(2)市民にとって自由、民主主義、人権を促進する有益な手段であるとし、サイバー空間での言論、表現の自由を保障することに言及したことである。
また、中東地域での市民抗議活動を支援する観点として、自由と民主主義の価値の普遍性を取り上げた点も注目される。
 
さて、今回の首脳会議で、各論として協議された中東地域の問題について、G8の首脳たちの見解と、「シンクタンクのシンクタンク」と形容されることもある米国の外交問題評議会のリチャード・ハース会長の考えを比較してみることにする(同会長の『フォーリン・アフェアーズ』6月号での、中東地域の問題についてのインタビューを参考にした)。
 
1はリビア問題である。
首脳会議では、(1)リビア政府軍の武力行使の即時停止、(2)カッザーフィー指導者の退任を求めるとしている。これに対し、ハース氏は、停戦を強く求めるべきと指摘しており、その理由として、これ以上多くの人命が失われないようにすべきと述べている。
ハース氏の論理は、リビア問題において政策の目的と手段の間にギャップが存在しており、それを調整する方法には、目的を引き下げること、または手段を強化することがあるというものである。その上で、手段強化を選択した場合、より多くの人命が失われる蓋然性が高まるとしている。
首脳会議の出席者も、同様の論理に基づいた思考をしていると考えられるが、ハース氏とは異なり、武力行使の強化によるカッザーフィー政権打倒という政策選択をしている。
この政策選択の違いは、自由化、民主化の実現について、どのような時間軸で思考しているかによるものではないだろうか。
私の見解は、リチャード・ハース氏と同様に、長期的視野で中東地域の民主化、自由化を考えて政策立案・決定を行うべきというものである。
 
2の問題はシリアについてである。
首脳会議ではシリアの指導部に対し、(1)武力行使や脅迫の即時停止、(2)この要請に応じない場合はさらなる措置を検討するとしている。これに対し、リチャード・ハース氏は経済制裁、公的な声明、反体制派への支援ではバッシャール・アサド政権に大きな影響を及ぼすことにはなり得ない、と指摘している。
おそらくシリア問題では、両者ともに、シリア市民がどの程度までリスクを覚悟して抗議活動を続けられるのか、一方、バアス党、軍、部族は体制側とどの程度一体性を保てるのかを見定めたい、と考えているのではないだろうか。しかし、ハース氏はバアス主義のシリア体制の強固さをより重く見ているように思う。
このようにシリア問題への対応が慎重になるのは、次に取り上げる中東和平問題や、シリア・イラン関係が良好であることを勘案してのことである。
私の見解は、850人以上の市民が死亡し、8000人以上が身柄拘束されているといわれる現在の状況に鑑みれば、リビアに対するのと同様に、刑事司法裁判所への訴追を国連安保理で早急に要請すべき、および国連人権委員会の現地調査活動を一層強化すべき、というものである。それは、イスラエルへの暗黙の圧力にもなると考える。
 
3は中東和平問題である。
首脳会議は、(1)交渉による解決をはかるべきであり、そのために交渉のテーブルに着く、(2)既存の合意を順守する、(3)一方的措置を控える、(4)ガザの状況の緩和を求めている。一方、リチャード・ハース氏は、現状認識として、エジプトの将来がどうなるかを憂慮しており、シリア、ヨルダンが不安定化する可能性があることも鑑みると、イスラエルの安全保障を脅かす要因が多いと指摘した上で、イスラエルに中東和平交渉で妥協を求めるのは不毛であり軽率だと述べている。
これらから、両者の問題認識はほぼ一致していると言えるだろう。言い換えれば、中東和平問題では、パレスチナ・イスラエル間の二者協議という政治交渉スタイルをとり、包括和平方式は選択しないということである。
かつて1991年に、ベーカー国務長官時代、米・ロシアの共同主催のマドリード和平会議が開催された。「アラブの春」と言われる市民抗議活動による歴史的政変が見られている現在、私見としては、マドリード和平会議同様に、国際会議方式で再び問題点を検討した上で、関係者の和平交渉を推進すべきではないかと考えている。
 
4はイエメン問題である。
首脳会議は(1)サーレハ政権の市民抗議活動に対する武力行使を非難する、(2)イエメン市民の正当な切望を受け入れることを要請している。これに対し、ハース氏は、サーレハ政権の国内統治力に懸念を持っており、テロリストの温床となるような地域が、イエメン内にできていると見ている。また、新政権が誕生した場合、それが米国のテロとの戦いにおける戦略的パートナーになる蓋然性は低い、と指摘している。
この問題でも両者は共通の認識をしており、サーレハ政権の存在の行方より、テロの脅威(アラビア半島のアルカイダの活発化)が高まらないことを重視している。
私も同様に、イエメンと対岸のソマリアにおいてテロの温床地域ができることは、テロの脅威の増大に加え、海賊行為の増加にも結び付くと考えている。したがって、サーレハ氏が退任した後には、国際社会はイエメンへの関与の重要度を高めるべきと考えている。また現在の状態においては、何としてもイエメンの内戦化を回避すべく努力しなければならない。
 
中東地域の社会・政治変化はチュニジア、エジプトでも継続している。また、バーレーン、ヨルダンでも市民抗議活動が見られている。さらに、現在の歴史的と言える中東地域での変化は、長期的に見れば、自由化・民主化改革が遅れている湾岸アラブ産油国にも影響を与え、変化をもたらすだろう。
今回の中東の変化は、人口動態においてユースバルジ(2530歳の年齢層が飛びぬけて多い状態)があること、ソーシャル・メディアの発達、高失業率、不公正性の高まりなど、解決が容易ではない要素が根底にある。さらに、イランの核開発問題、国際テロ問題などがある。
リチャード・ハース氏の政策立案に向けての観点の立て方は、米国の国益に重点を置いており、現実性が高いものとなっている。一方、G8に出席した首脳たちの観点は、政策協調が前面に出ていることに加え、危機の連鎖への認識が必ずしも十分ではないように思う。
現在の中東地域の社会・政治変化は、米国でもG8でもコントロールできない状況あるのかもしれない。

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