過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

620日付のトルコ紙ミリエットがコラムで、公正発展党(AKP)の総選挙での勝利に関する分析で、トルコ社会における部族制の終焉の状況について解説していた。
その記事では、「テレビの普及と共に異なる生活スタイルが紹介され、それを見た人々は部族に忠誠を誓うことをやめた。・・・経済的にも誰もが自立しているのだから、部族への古いつながりを維持する意味はなくなってしまった」(*)として、トルコの南東アナトリアでの部族社会の変化を紹介している。
 
かつて、イランの農村をフィールドにパーラビ王朝下の「白色革命」に関わる社会研究をなされた大野盛雄先生は、都市に出稼ぎ労働に出た青年が現金収入を得て農村に帰り、農業の機械化を推進したことで、長らく続いてきた村の勢力バランスが大きく崩れたことについて調査報告でまとめられている。また、そこにはイランが1973年の石油危機を機に、工業化社会に移行していった一つの局面が描写されている。
ここで紹介した部族や村落共同体といった人々の強い絆が形成されている集団は、絆によって構成員の相互補助が働く反面、その集団が有する習慣や上下関係などの秩序をつくっている機能によって、個人の自由を制限する「檻」をつくることがある。
人間は本性として、その自由に加えて自立性、移動性、柔軟性、そして緩やかな紐帯を結ぶ性質などを持っているとの仮説がある。仮にそうだとすれば、こうした集団の周りに張り巡らされた「檻」が緩み始めたとき、その本性によって、そこから抜け出す行動をとろうとする人が現れるのではないだろうか。
 
先進国は1990年代に、それ以前の労働生産性を踏まえた工業化社会から、知識が富を生むと考えられた知識社会に移行し、「モノから知識へ」「量から質へ」という生活スタイルのあり方を模索した。
この知識社会や工業化社会では、新聞、雑誌、ラジオ、テレビに登場する知識人と呼ばれる人々が世論をリードしていた。そして彼らの発言や思考方法が、人々が「檻」を越える後押しをすることもあった。
そして今日、情報が富を生み出すという情報化社会に入り、「知識から情報へ」「量も質も」という生活スタイルのあり方が追及されるようになった。この時代の世論は、マスメディアに加えツイッターやフェースブックといったソーシャル・メディアを通して生まれる意識連帯によって形成される傾向が強まった。こうして形成される世論は、今後一層、人々を「国民国家という檻」を越える行動へと導く力を強めていくように思う。
 
ここで、中東地域に再び目を転じてみる。
今年1月からの「アラブの春」と呼ばれる政治変動を引き起こしている、中東地域の市民の抗議活動は、同地域よりも情報化社会が進んでいるスペインやギリシャで起きている市民の抗議行動と同質なものだと言えるのだろうか。
この問いについて考えるには、まず、政治変動が起きている中東各国の社会開発段階をどう位置付けるか検討しなければならないだろう。
 
これらの国々は、情報化社会から隔たったところにある。そこでは労働生産性が高まらないという問題を抱えていたり、頂点に立つ政治指導者に、政治と経済の両方の情報、権力が集中する統治体制が存在したりしている。そうした中では、市民の意見が国家運営に反映され難い。
別の見方をすれば、市民の多くはある一定の教育水準に達しているが、社会の中核をなすエリート層は、そうした市民の知識や情報を使う方法を熟知していないと言えるかもしれない。
チュニジア、エジプト、リビア、イエメン、シリアなどで、何割かの市民の「集合知」によって政権打倒に向けた運動が展開されているが、なかなか新たな国造りが進まないのは、そのような要因によるのではないだろうか。
 
冒頭に紹介したミリエット紙の記事では、中東地域において、部族、民族、宗教など社会に存在する「檻」の中の秩序に従って生きてきた人々が、そこから出るという新たな選択をしていることが紹介されている。
「アラブの春」と言われている、市民による抗議活動が展開された国々ではどうか。国際社会との意識連帯を形成し、その活動をリードした人々がソーシャル・メディアを活用して人々を集めることまではできた。しかしその後、国造りに必要なビジョンづくりについて公議する手段としてソーシャル・メディアを応用することは、十分にできていないようだ。そこでもたついている間に、既得権益者が自らの立場を守るために良しとする伝統的な国民国家の「檻」を微修正し、抗議活動のリーダーたちをそこから抜け出せないようにしてしまったかに見える。
彼らがそこにとどまる限り、やがて抗議活動で連帯した市民グループは分裂し、旧体制の巻き返しが起きる蓋然性は高まると考えられる。どうやら、多くの犠牲者を出した市民の抗議活動も、その目的を問い直す時期を迎えつつあるように思う。
 
日本社会も、情報化社会を代表するツールであるソーシャル・メディアを活用し、市民の意思を取り入れ、政治や社会改革を推進していくことには未熟である。現在の日本政治のあり方を見ていて、中東社会で起きている政治変動を1つの鏡として、われわれ日本人もその課題に早急に取り組まねばならないとつくづく考える。
 

全1ページ

[1]


.
cigvi2006
cigvi2006
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

過去の記事一覧

検索 検索

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
お米、お肉などの好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!
ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事