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アラブ社会と「人権」

国際刑事裁判所(ICC)は国連安保理の要請で、リビアでの市民抗議活動へのカッザーフィー政権の対応について捜査していたが、627日、「人道に対する罪」の容疑でカッザーフィー指導者、同氏長男のセイフ・イスラム氏、情報機関トップのアブドラ・サヌーシ氏(義弟)への逮捕状を出した。同裁判所による中東地域の指導者に対する逮捕状の発出は、2009年のスーダンのバシール大統領に次ぐものである。
今年3月から本件の捜査に当っていたモレノ・オカンポ主任検察官は、罪状について、3人が共謀の上、カッザーフィー指導者が市民への攻撃を命令し、セイフ・イスラム氏が攻撃のための傭兵を徴収し、サヌーシ氏が攻撃実行に関与した証拠があると述べている。
 
この逮捕状に基づき裁判が行われることは、国際社会が大切な価値として認識している「人権」およびそれを守る行動意識としての「保護する責任」を果たすという観点で重要な意味を持つ。すなわち、法的拘束力を持たない「世界人権宣言」(1948年に発表)の第1条「個人の普遍的な自由と平等」を具現化する行為だと言える。
しかし、この観点に立って、現在の中東情勢全体を見ると、2つの矛盾が目に付く。
 
1は、シリアに対する国際社会の対応である。
シリアのアサド大統領は、「国民対話」の枠組み作りを提唱し、バアス党の一党支配の改正をはじめ反体制派との交渉姿勢を示している。しかし、同国で3月から市民抗議活動が活発化して以来、死者は1100人を超え、収監者はおよそ1万人(627日付CNN)に達しており、トルコへの難民は12000人以上と言われている。
このようなアサド政権の市民への対応に対し、国際社会は欧米を中心に、シリアの要人などに対し経済制裁をかけるにとどまっている。
 
2は、スーダンのバシール大統領に関する問題である。
ICCは、同大統領に対しスーダン西部のダルフール地方の虐殺の廉で20093月に逮捕状を発出しているが、スーダンはICCの権限を定めた「ローマ規定」に加盟していないため、同国内では逮捕状を執行し、身柄拘束をすることができない。この状況は、リビアも同様である。
さらに、ICCのあり方に賛同せずローマ規定に加盟していないアラブ諸国は、バシール大統領の訪問を受け入れる国もでている。このローマ規定に加盟していない中国も、バシール大統領を627日から公式に受け入れている。
このバシール大統領の訪問を要請した中国に対し、人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、ダルフールでの被災者に対する侮辱であると批判、またアムネスティー・・インターナショナルは国際戦犯の避難所になると表明するなど国際的に厳しい声が挙がっている。
しかし、こうした国際人権団体の声について中国側は、28日、外交部が定例記者会見で、国際法上の問題はないと反論している。
 
確かに、中国はローマ規定の締約国ではない。また、中国はICCのバシール大統領に関する決定について保留の意思を表明しており、法律的な批判には当たらない。
ただ、今日、国際社会では基本的人権として、生存権だけでなく社会権まで視野に入れた国家の責任を求めている。
その中、中国が自国の資源外交の継続(スーダンの原油輸出先の83%が中国向け)という「国益」を鮮明に打ち出すことは、同国の長期的な対外戦略にとってベストの政策選択と言えるだろうか。
 
中東地域に目を向けると、アラブの国々はバシール大統領、カッザーフィー指導者、バッシャール・アサド大統領の人権問題に対して、こうした中国と同様に国益ベースの対応を取ってきた。果たして、これらの国々は市民の人権をどのように考えているのだろうか。
「世界人権宣言」以来、「人権」は誰かが誰かに対し認める権利ではなく、「生まれながらにして持っている」ものであるとの認識が広く受け入れられるようになっている。
自国内の「人権」について、中国やこれらの国々は内政干渉だとして国際社会の批判を受け付けない。
「アラブの春」と呼ばれるアラブ社会での市民抗議活動の源流の1つに、そうした認識に対する人々の反発があると言えるのではないだろうか。

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