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国営シリア・アラブ通信(SANA)は1月6日、ダマスカスで自爆テロとされる爆発があり、死者26人、負傷者63人が出たと報じた。自爆テロは、死者44人を出した昨年12月23日に次いで2回目である。
同事件についてシリアの国営テレビは、国際テロ組織アルカイダ系勢力の犯行だと伝えている。一方、反体制派組織のシリア国民評議会(SNC)はアサド政権の犯行との見解を表明している。
シリアでの市民抗議活動は、国連の推計によると2011年3月に始まって以来、同政権の弾圧により市民約5000人が死亡しており、治安関係者の使者も約2000人に上っている。
この問題への対応として、アラブ連盟は現在シリアに監視団(100人)を派遣しており、1月8日にも外相会議を開催し、今後の対応を決定するとの報道がある(1月6日付CNN)。またアラブ連盟は、同問題に関し同月5日にカイロを訪問した米国のフェルトマン国務次官補と協議を行っている。
そこで、以下にアラブ連盟が今後シリア問題でどのような政策をとるのか考えてみる。
ここでは、政策は「政策決定の場に参加するアクター間の利益の相互作用の産物」であるとする(多元主義的政策観)。
まず、アクターは国際的には(1)アラブ連盟、(2)国連、(3)米国・EU、(4)イスラエル、(5)トルコである。
これらのアクターの利益を制約する要因としては、アラブ連盟と国連が昨年3月からシリアに対して発している「いかなる暴力も容認できない」との表明が挙げられる。これにより、リビアで行われたような「保護する責任」のもとでの国際的軍事介入は難しいものとなっている。
その背景には、軍事介入による問題解決は、リビアの事例でも見られたように、短期的なものでない限り協調行動に不協和音の発生や財政負担が重くなるというリスクがあるとの米国・EUの認識がある。また、アラブ連盟もイスラエルもポスト・アサド体制におけるイスラム主義勢力の台頭を恐れている。そして、トルコは国内への難民流入を阻止しシリアとの緊張関係を緩和するための「緩衝地帯」が設定できれば、それ以上のリスクをとる必要はない。
したがって、国連、米国・EU、トルコは、アサド政権による市民への弾圧を止める手段として、アラブ連盟による監視員の増員を要請する政策を優先することになる。これは自国への飛び火を恐れるアラブ連盟諸国およびイスラエルの利益とも一致すると考えられる。
このように分析すると、アラブ連盟はシリア市民の人道問題の監視を強化する政策を選択する蓋然性が高い。
しかし、シリア情勢はその閉塞状況の打開を求め、離反した自由シリア軍が政府機関を標的とした攻撃を激化させる蓋然性が高まっていると言える。そして、それによりアサド政権が市民弾圧をエスカレートさせ負のスパイラルが生まれるという最悪のシナリオも見えてくる。
国際社会の政治指導者たちは、このようなシリアの「人道危機」の高まりを認識する洞察力を持っている。しかし、現在のところ国際社会は、再度、国連安保理においてシリア問題における「保護する責任」を踏まえた制裁決議案を採択するための行動をとろうとしていない。
その理由としては、国際社会では2012年が選挙の年に当っていること、財政危機を抱える各国政治指導者たちはリーダーシップを発揮できない、などがあるだろう。
そうだとすれば、シリア問題だけでなく、イランの核開発問題、米軍撤退後のイラク、アフガニスタンの安定化問題の解決も、短期的には難しいと言える。
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