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シリア問題で3つの変化が見られている。
第1は、2月16日に国連総会でアラブ諸国が主導し、欧米や日本など70か国以上が共同提案したシリア非難決議が、賛成137、反対12、棄権17で可決されたことである。
第2は、2月15日にアサド大統領が大統領令を出し、同月26日に新憲法案を巡る国民投票を実施すると提示したことである。
第3は、2月16日に米国のクラッパ―国家情報長官が上院軍事委員会の公聴会で、イラクからシリアに国際テロ組織アルカイダのメンバーが流入していると証言したことである(同日、パネッタ米国防長官もこの点への懸念を表明)。
第3の点については、シリアにはテロリストの手に渡ると国際的に安全保障上のリスクが高まる対空ミサイルや生物・化学兵器など国際監視を必要とする兵器が存在していることがポイントである。そして、アサド政権の統治能力が弱まっていることが懸念を高めている。
第2の大統領令については、(1)バアス党は「国家を指導する党」であると憲法で規定していた項目が削除されたことが注目される。また、大統領の任期を2期(14年)までとするなどの改革案も含まれている。
第1の決議の目的は、総会決議が賛成多数で採択されたことで、シリアでの武力停止を働きかけることだと考えられる。総会決議は安保理決議と異なり、加盟国への拘束力があるものではない。しかし、採択により、フランスのジュペ外相が述べているように、安保理での制裁決議の再提案や、アサド政権関係者を国際刑事裁判所に訴追することへの道が開かれたことは確かである。
以下は、TBSの番組ニュースバード(2月14日放映)への出演の際に、今後のシリア情勢に関する国際社会の対応についてまとめたものである。
1.人道支援・難民保護
2.国連・アラブ連盟の合同監視団派遣
3.国際会議開催
4.国連総会での非難決議の採決
5.経済制裁の強化(有志)
6.シリア国民評議会の強化
7.国際刑事裁判所の活用
8.政治勢力の対話を呼びかけ
9.反体制派への武器支援
10.シリア国民評議会の正式承認
11.空爆による国際介入
この11項目のうち1〜4は国際社会が「現時点で実施可能」なものであり、5〜8はアサド政権が今後も市民への武力行使を続けた場合に「実施すべきこと」であり「現時点で具体的な検討を行うべきこと」である。そして9〜11は国際社会として、バッシャール・アサド大統領が交渉によって退陣しない場合、「最終決定すべきこと」であると考えた。
国際社会は、アサド政権がここ数日中に国民投票を名目に国内でどのような治安活動を展開するかによって、これらの項目を組み合わせて検討、実施していくと考えられる。
シリア情勢を分析する際、イスラエルがシリア政権の崩壊した場合のリスクについて懸念していることや、イランの支援を受けているシーア派武装勢力であるレバノンのヒズボラ(神の党)の存在、さらにはレバノン国内のシーア派とスンニ派の対立など地域紛争が拡大することへの脅威論が頭に浮かぶ。そして、そのことにより国際社会は対シリア政策で慎重な姿勢をとっているとの指摘がある。
ただ、この指摘に新たな要素を加えると、少し見え方が変わってくる。
その要素とは、(1)アルジャジーラをはじめとする衛星テレビなどのグローバルメディアによって、アサド政権や反体制派の動きなどシリア情勢が「見える化」されていること、(2)ソーシャルネットワークサービス(SNS)により、シリア問題の解決を求める市民レベルの連帯意識が国境を越えて形成されつつあることである。
これらの要素が、アラブ諸国をはじめ世界各国の政治指導者が、慎重ながらも問題解決に向けて動く動機となっている。
かつて1982年2月に、故ハーフェズ・アサド大統領が行なったハマでの大虐殺の時とは、そこが違う。
バッシャール・アサド大統領や弟のマーヘル司令官が、父親と同じ手法で市民弾圧をすることで弱まり始めた権力を回復できると考えているとしたら、それは大きな誤認であったと思う日がくるのではないだろうか。
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2012年02月17日
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