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2月21日、国際原子力機関(IAEA)のイラン調査団が、調査内容の協議でイランとの合意が得られず、2日間の滞在で帰途についた。
協議がまとまらなかった原因の一つに、バルチン軍事施設の査察問題がある。IAEAは、2011年11月に発表した報告書でも言及しているように、イランが同施設内で核爆発を引き起こす実験を行った可能性があると見ている。同施設の査察に関しては、1月にもIAEA側が要請していたが、拒否されたという経緯がある。
イランは、今回の査察拒否と合わせて、18日にはイラン海軍の駆逐艦と補給艦の2隻をシリアのタルトゥース港に入港させ、19日にはイラン石油省が英、仏への原油輸出停止を発表するなど国際社会の反感を高めるようなメッセージを立て続けに出している。
原油価格は、イランの英仏向け原油輸出停止の発表により、20日にはドバイ原油のスポット(4月渡し)が1バーレル118.70ドル、北海ブレント原油は時間外取引で121ドルという高値を付けた。
EU諸国がギリシャなどの政府債務の信用問題への対応に追われる中での原油価格の上昇は、これら諸国の経済不安を高めることになる。
特に、イラン産原油の輸入量が多いギリシャ(輸入量のうち30%)、イタリア(同13%)、およびスペイン(12%)は、債務問題で注目されている国でもある。この点から、EUとして7月からイラン産原油の輸入禁止を決めてはいるが、原油価格の上昇が気になるところである。
イランがこのように挑発的姿勢をとっているのは、欧米の景気低迷やフランス、米国で大統領選挙が実施されるという弱点をついて、国際的緊張を高めて原油価格の上昇圧力を強めることで、核問題の交渉での妥協点を引き出そうとの考えがあるからだと分析できる。
それを裏付けるように、イランの交渉責任者サーイド・ジャリリ氏はEUのアシュトン外務安全保障政策上級代表に、新たなイニシアチブについて交渉を再開したいとの考えを書簡で示している。
このイラン側の思惑に反応するかのように、フランスのジュペ外相が同書間について「イランが核問題に関する交渉再開にオープンの姿勢を示したようだ」と述べている(2月16日ロイター通信)。
一方で、今回のイランの査察拒否により、イラン側のこれまでの交渉姿勢を問題視してきたイスラエル内で、対イラン軍事行動に踏み切るべきとの声が強まる可能性がある。
このイスラエルの対イラン軍事行動に関して、2つのポイントがある。
第1は、イスラエルがイランを攻撃した時、イランはどのような反撃をするかである。
イスラエル関係者は、自国への影響も含め国際社会へのリスク連鎖についてはあまり考えていないとの報道がある。
第2は、イスラエルの軍事行動がどのような成果を上げられるかである。
2月20日付ニューヨークタイムズ紙が報じているように、米国国防関係者は、イランの核施設を空爆によって破壊するには戦闘機100機を使用するといった大規模な作戦行動が必要であり、そうでなければ成果は上がらないと分析している。
さらに、仮にイスラエルがF-151戦闘機100機での攻撃訓練をしているとしても、イラン攻撃に際しては、空中給油ができるかどうか、もしくは他国の領空を通過できるかどうかという課題がある。このような軍事行動を行うには米国やサウジアラビアなどの支援が必要になる。しかし、これらの国は国連安保理の決議がないと支援は難しいだろう。
国際社会は、国際銀行信用協会(銀行間の決済ネットワークを運用)に圧力をかけてイラン中央銀行への経済制裁を一層強化しようとしている。
イラン側の強硬姿勢が続けば、今後、安保理がIAEAの理事会報告を受けて、国連憲章第7章に基づく経済制裁措置から武力容認措置への決議案を協議する蓋然性は高まる。
とはいえ、(1)3月のイラン国会議員選挙の動向、(2)イラン保守派の内部対立、(3)自由化、民主化を求める反体制勢力の動向、(4)ロシア、中国のイラン政策など決議案の採択を遅らせる不透明な要因は多い。
こうして見ていくと、イランの核問題の解決はまだまだ先に延びそうだ。その間に原油価格の上昇というリスクが大きくなる可能性は高い。
そうなると、原発停止が続く日本国内の電力会社は電気料金の値上げなしでエネルギーの安定供給ができるのだろうか。不安を抱くのは私だけではないだろう。
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2012年02月22日
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