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中国の対中東外交

昨年の1月にチュニジアでベンアリ政権が打倒されて以来、2月にエジプトのムバーラク大統領、10月にリビアのカダフィ最高指導者が退陣した。そして11月にはイエメンのサーレハ大統領も権限移行案に署名した。こうして、中東ではこの1年間で国家指導者が後退する変化が続いている。
 
これまで本ブログで、この政治変化が起きた要因として、(1)人口動態に見る突出した若者世代の存在(ユースバルジ)、(2)ソーシャルメディアの普及と市民の連帯意識の形成、(3)不公正、不公平な・経済社会状況(汚職などの腐敗構造、格差の見える化)、(4)教育水準の向上などを指摘してきた。
 
一方、国内外でいわゆる「アラブの春」に関する多くの著作が出版され、イスラム復興運動やアラブの民主主義の現状が紹介されている。
このようにアラブ諸国の政治・社会の変化をフォーカスして説明することは、オーソドックスな研究手法であり、今後も多くの成果が挙げられることが期待される。
 
ただ、「着眼大局、着手小局」という言葉がある。この言葉が適当かどうかわからないが、次の2点を確認しておきたい。
 
(1)米国でのシェールガス(シェール層から採取される天然ガス)生産に拍車がかかっている。その開発技術の向上と普及は、米国の中東でのエネルギー依存度を低下させた。また、シェールガス開発については今後、カナダ、オーストラリア、中国などでも活発化することが予想されている。
そのことで、米国の戦略における中東の位置づけは、長期的には低下すると考えられる。
(2)中東地域の経済分野の中で、商品を移動させることで利益を得るトレーダーのビジネスを中心に中国との経済関係を強める国が多くなっている。そのことで、中東地域での中国の存在感が高まっている。
 
例えば、中国はイランの核開発問題において、イラン産原油の約22%を輸入しており(EUのイラン産原油輸入量の総計を上回る量)、対イラン経済制裁のカギをにぎる国となっている。
また、今年1月の温家宝首相の湾岸諸国訪問において、イラン・シリアの同盟的関係に対し明確に対決姿勢を示し始めているサウジアラビアとは、精油所建設をはじめ経済協力関係の強化を図っている。
そのサウジであるが、ファキーフ労働層によると、2015年までに300万人の雇用が必要となる。さらに昨年からの市民の抗議行動への対応策として多額の財政出動をしている(例えば、75万人の職のない国民に月2000リヤルの失業給付を行っている)。
このサウジへの中国企業の進出や、エネルギー資源分野への投資によって両国の互恵関係が強まってきている。
これらのことから、中国は、シリア・イランと対立するサウジの間の仲介役を担うことができる存在になりつつあるといえる。
 
さらに、近く中国の習近平氏がトルコを訪問すると報じられている。トルコは、イランの核問題についてはブラジルと共に独自の外交努力を行ってきた。また、シリア問題でも国際会議を提案するなど、重要な役割を果たそうとしている。
仮に、中国がトルコと共にイランおよびシリアの問題解決に何らかの成果を上げることができれば、中東・アフリカ諸国に対して国際社会での主役が交代しつつあることを明示することになる。
そうなれば、中国は中東・アフリカという市場と地下資源の獲得という国益を得ることになる。
 
中国は近年、イスラエルとの関係強化を進めている。中国は対立関係にあるイランとイスラエル、湾岸諸国と等距離外交を展開している。
そのことから見ても、中国がシリア問題について国連でロシアと拒否権を行使したことは、単にロシアとの同調行動というだけではないだろう。それは、中国が中東・アフリカでの国益を明確に認識した上での外交戦略だと見ることができる。
今後、イランおよびシリアの問題への中国の外交に注目したい。
 
それにしても、こうした中国の対中東外交に鑑みれば、資源なき国家としての日本の中東・アフリカ外交は少々心もとなく見える。
 

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