過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

今日の中東地域の政治変動を考える時、次の2点の影響を考慮する必要がある。
1は、2003年のイラクのサッダーム・フセイン体制の崩壊である。このことにより、中東地域内でイランの存在感が強まった。また、中東地域の市民の中に長期政権下でも自分たちの力で政権打倒はできるのではと考える人々が出てきたことである。
2は、中東諸国と歴史的なグローバル経済とのカップリングが進んだ点である。このことで、政権構造改革で問題を抱えたチュニジア、エジプト、リビア、イエメン、シリアにおいて経済格差、雇用問題が深刻化した。また、これらの中で市民運動によって政権交代がなされた国でも市民の生活環境改善が図られず、政治不安が継続している。
 
この2つの観点を踏まえて、大規模な市民抗議活動から315日で1年が経ったシリアを見ると、1万人に迫る市民の犠牲者を出しているバッシャール・アサド政権の統治が続く蓋然性は、長期的には低いといえる。
しかし、現在のところ、シリアの現政権は同国各地で支持集会を開催し、その存在感を示せている。それは何故だろうか。この疑問に答えるためのヒントは、湾岸戦争後のイラクのサッダーム・フセイン政権の統治(19912003年)に見出すことができる。
 
この時期、イラクはクウェート侵攻に失敗し、国連の経済制裁下に置かれ、クルド人やシーア派の民衆蜂起も見られた。その難局を、サッダーム・フセインは権力が及ぶ範囲の縮小と、息子のウダイおよびクサイ、そして出身地域であるティクリートの地縁関係による強固な体制作りによって乗り切った。
また、外交的にも孤立化が進む中で、ロシア、中国、フランス等のパイプを活用し、国連の「石油と食糧の交換スキーム」の拡大から実質的に経済制裁緩和を引き出し、支配下の人々への資金物資の配分を遂行していった。そして、イラクという国民国家の中であっても自らの体制に帰属しようとしない人々を切り捨てたのである。例えば、今日、自治区となっているクルド地域である。
 
こうしたフセイン体制が崩壊の道を歩み始めたのは、大量破壊兵器に関する国連の査察問題に同政権が挑戦し始めてからである。
仮に、フセイン体制がこの査察を受け入れ、大量破壊兵器を持っていないことについて積極的に説明責任を果たしていれば、別の結果になっていただろう。そう分析する根拠は、政権を倒すには国内外の圧力が弱かったからである。国内では、当時イラクで運動を行っていた反体制派は今日のシリア同様に分裂していた。また国際圧力については、ロシア、中国が同政権を支援しており、国連安保理決議で新たな武力容認決議を採択できる状況にはなかった。
つまり、フセイン政権は、大量破壊兵器の査察問題での対応ミスによって軍事力を使っての国際介入を導いてしまい崩壊したといえる(もちろん、イラクへの国際介入の要因について、米国のネオコンの政策への圧力を強調する研究者も少なくない)。
何故ミスをしたのか。有志連合による対イラク武力行使の国際法的根拠は国連決議678号(湾岸戦争停戦に際して採択された武力容認決議)である。その決議は、1991年の停戦後12年の間、履行されていなかったため、何とか切り抜けられると過信したと考えられる。
 
シリアのアサド政権は、イラクのフセイン政権と(1)バアス党という政治構造、(2)少数派による指導体制、(3)宗派対立や民族対立の存在などの共通点がある。
現在、このアサド政権は、当時のフセイン政権同様に支配領域を縮小し、政権基盤の強化を図ろうとしているのだろうか。また、対外政策として孤立することを回避する外交を行っているのだろうか。
まず、前者の支配領域の縮小はまだ起きていないように見える。ただ、今後、人権保護地域がトルコとの国境付近のシリア領内に設置されるようになれば変化が生まれ、政権からの「切り離し」が進む蓋然性は高い。
また、対外政策については、フセイン政権よりもバッシャール政権の方が有利な国際環境にあるといえる。つまり、ロシア、中国に加えイランとの密接な関係があり、隣国レバノンにはイランの支援を受けているヒズボラが存在し、さらにはイスラエルの隣国であるという地政学的問題もある。
これらの点は、アサド政権の政策の幅を広げる要因となっている。
 
ここまで、イラクの旧フセイン政権とシリアのアサド政権を比較した。
バッシャール政権が、人権問題についての国際圧力に強硬な抵抗を示さず、憲法改正、国会議員選挙と“民主化”を進めると、イランや北朝鮮と同様に経済制裁下でも体制が維持される蓋然性は高まると考えられる。
こうした状況に変化が生じるとすれば、(1)国際社会が反体制運動の一体化を強く促し、武器支援を行う、または(2)反体制派が分裂しても、市民の自衛を目的に武器供与を行うことが実施された時であろう。
この2つのいずれが起きても、シリアが内戦化する蓋然性は高まる。
 
これらのことに鑑みれば、シリア問題について、国際社会は人権保護と、内戦や地域紛争に拡大していくリスクをどのようにバランスするかの答えが出せず、イラクのフセイン政権の時と同様に問題解決には長い時間がかかることになると分析できる。
仮にそうなれば、イラク同様に反体制派運動への弾圧が強化され、経済制裁の悪影響により無辜の市民の命が失われ続けるだろう。
また、そうなった時、イラクの時と異なる点は、イラン・シリア同盟がより強固になり、中東地域や国際社会はより大きな火種を抱えることになるという点だろう。 
そうだとすると、紛争時における「平和構築」の枠組みに含まれる「平和強制」という軍事力行使と同じような観点に立って、国際社会は国連安保理において、市民保護に限っての武力を容認する議長案をつくり、アサド政権への外交圧力を高めることを検討する時期にきているといえそうだ。

全1ページ

[1]


.
cigvi2006
cigvi2006
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

過去の記事一覧

検索 検索

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

お肉、魚介、お米、おせちまで
おすすめ特産品がランキングで選べる
ふるさと納税サイト『さとふる』
ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事