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3月26日、「米・イラン制裁法の影響」をテーマに、BSフジ「PRIME NEWS」に出演させていただいた。
当日、ソウルでは第2回核安全保障会議が開催され、国内でも参議院で安全保障に関し興味深い議論が交わされていた。
こうしたタイミングも含め、テーマ、構成などはよく考えられていた番組だったが、私自身、もう少し噛み砕いた丁寧な説明をすべきだったと反省している。
そこで、以下に、言及できなかった点も加えて「米国防権限法」について考察してみたい。
米国防権限法は、本来は米国の国防費にかかわる歳出法案である。その法案の中にイラン中央銀行(CBI)制裁条項が挿入された。この「制裁」という言葉から、どうも対CBIへの直接的制裁と受け止められがちである。法的には、第三国の金融関係機関が、米国の金融関係機関との取引を継続することを望むならば、イラン金融機関との関係を断つよう迫る間接的制裁となっている。したがって、法が適用される場所は米国であり、対象はイランと金融取引をする第三国金融機関である。
米国の対イラン経済制裁は、1979年の在テヘラン米国大使館占拠事件で関係が悪化し、米国大統領令として制裁がはじまる。その後、1996年のイラン・リビア制裁法(IRSA、200年改正)、2010年のイラン包括制裁法(CISADA)などが米議会で成立している。
これらの法案は、キューバへの経済制裁を謳った「ヘルムズ・バートン法」、ミャンマー制裁法などと同様で、国内法で外国企業の対外活動に対する制裁を行うというものである。このため、国際社会では、同法はWTO協定を含む国際法上、許容される範囲を超えた「域外適用」になると指摘する声もある(日本も2007年10月に米国に対しWTO協定との整合性の問題がある旨指摘している)。
オバマ政権の対イラン政策は、強硬姿勢をとる共和党や在米ユダヤロビーから、及び腰だとの批判を受ける一方、国際社会からの指摘に配慮し、制裁法の運用には慎重姿勢で臨まざるを得ないという難しい立場にある。
ここで注目したいのは、2010年に米国議会両院で承認され、7月にオバマ大統領が署名したイラン包括制裁法案である。この法案の104条は、米財務省が主体となって、イランの革命防衛隊に関係する取引を行っている第三者金融機関の米国におけるコルレス口座が開設・維持されることを禁じる措置について定めている。
この施行規則については、米財務省が8月に開示したが、運用面で不透明な点もあり、国際的に問題があるとみられている。
この法案が成立した2010年において、オバマ政権の政策立案に影響を与えた国内要因のうちウェイトが高かったのは、11月の中間選挙であったといわれている。
オバマ政権は、2011年11月に米財務省主導で愛国者法第311条に基づいて、イラン中央銀行と第三者金融機関のコルレス口座を開設・維持を禁じる措置を発動しており、2010年の経緯とよく似た動きを見せている。しかし、オバマ政権の弱腰外交を批判する議会からは、2012年11月の米大統領選挙および上下両院選挙を前にして、より強硬姿勢を示すべきとの声が出ている。例えば、対イラン制裁を強める「イラン脅威削減法」が提案されたことが挙げられる(下院では可決)。これにより、オバマ政権としては、議会の要求に配慮するとともに、国際社会からの「域外適用」という非難を和らげられる対イラン制裁法を立案する必要性に再び迫られることになった。その議会との妥協が「米国防権限法」への署名である(12月上旬に議会に反対を伝えたが、同月31日には署名した)。
同法の特徴は、(1)石油価格の高騰を避けるため、実施まで6か月先送りすることができる行政権限を明記している、(2)大統領判断で、対イラン制裁の目標達成に協力的な企業国や「国家安全保障上の利益」につながる国については、制裁措置発動を撤回できる点である。
これを適用し、米国は3月20日、同法案の適用対象から11か国を除外するとの発表を行った。日本は英、仏、独、伊などともにその11か国に含まれている。
しかし、イラン産原油の主要種入国であり、輸入量削減に消極的であった中国、韓国、インド、トルコ、南アフリカは適用除外とならなかった。
米国はこの法案で、イラン産原油の顧客を減らし、顧客がイランとの価格交渉で有利になる状況を作り出したといえる。実際、イランの新聞では、値引きを迫る中国に対する厳しい批判記事が掲載されている。
この他に同法案のポイントとなるものとして次のが挙げられる。
1つは、米国防権限法に対し、表面的には厳しい反発姿勢を示している中国やインドではあるが、それぞれの国益の観点から米国とイランの重要性を比較すれば、対イラン政策を変更する可能性があるという点である。
2つ目は、米大統領選挙を前にして、米国の対イラン制裁のレベルが明確になり、先行き不透明要因の1つが消えたことである。
3つ目は、サウジアラビアが、増産姿勢を表明しており、イラン原油に代わる供給先が確保できるとの安堵感が国際社会に流れていることである。
4つ目は、イランが、安保理常任理事国プラス・ドイツ6者との協議開催を要請しており、トルコなどのイラン外交も活発化している点である。
これらのポイントから、イランの革命防衛隊のホルムズ海峡やサウジアラビア東部州での暴発的行為がない限り、石油価格は下方に動く条件が整いつつあるといえる。
しかし、原油価格の高止まりの影響で、日本でもガソリン価格がリッター当たり160円を超えるなど経済への悪影響が出ている。原油価格を巡っては、イラン要因以外にも、リビアでの部族衝突、イラクで多発するテロ事件、ナイジェリアや南スーダンでの政治不安の高まりなど不安材料が多数ある。さらに、EUのイラン産原油取引に関する保険・再保険禁止に伴う影響もある。
こうして見ると、日本で原子力発電がほとんど停止する中、イランをはじめ中東情勢の安定化は日本のエネルギー安全保障に直結するのだと再度認識させられる。このことを踏まえて、日本の対外政策のあり方を今一度見直す時かもしれない。
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2012年03月28日
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