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昨年10月、長崎新聞社が声をかけてくださり、長崎と佐世保で「アラブの春」に関する中東情勢の講演をさせていただいた。
その時、最終被爆地として、世界の平和を願う長崎の方々の強い思いを改めて感じた。
 
それから10カ月経て、中東地域では、シリア、イラク、そしてリビアで戦火が広がり、イスラエルとハマスの間で再び戦闘が起きている。
その中で、無辜の市民の命が奪われ続けている。
イスラエル・ハマス間の戦いでは、87日時点でパレスチナの死者1800人以上、イスラエルの死者67人以上。シリア内戦による死者約17万人(20113月以来)。この1カ月間のイラクでの戦闘の死者は約1800人である。
 
30数年前に外務省主管の中東調査会に勤務をはじめ、大学に移った現在まで、中東地域での紛争や革命、テロ事件などを見つめ続けてきた。
そして、今年の夏も、広島、長崎の人々の「ノーモア・ヒロシマ」「ノーモア・ナガサキ」「ノーモア・ウォー」と訴える声は、中東地域の政治指導者たちに届かないのかとやるせない気持ちでいる。
 
イスラエルとハマスの武力衝突は、72時間の休戦が終わる前(現地時間の88日午前4時半)に、ガザからロケット弾が発射されたのを機に再び戦火を交え始めている。
また、イラクではイスラム過激派グループの「イスラム国」(IS)が、クルド人自治区の中心都市であるアルビルに迫ろうとする動きを見せた。これに対し87日、オバマ米大統領がISによる少数派ヤズディー教徒への大量虐殺(ジェノサイド)の阻止を目的に、限定的な空爆を承認、翌8日、米軍がISに対する空爆を実施しはじめている。
 
このように、自分たちの信念を押し通すために、他者との対立を強め、銃の引き金を引き、爆弾投下のボタンを押す人々がいる。
その結果、何千人もの人々が死に追いやられ、残された者に苦しみと憎しみの芽を蒔いていく。
 
平和は、勢力均衡に基づく協調によってつくられるとの見方がある。
イラクとシリアの「イスラム国」、パレスチナのハマス、レバノンのヒズボラ、さらにはウクライナの親ロシア派勢力など非国家の武装集団もこの論理で行動しているといえる。
そうだとすれば、国レベルで勢力均衡論に基づいた武力行使という対処療法をとることが致し方ないとしても、個人レベルでは非暴力の行動を起こす必要があるのではないだろうか。
 
長崎市の田上富久市長は、平和宣言で、ひとりの力は「ビリョクだけどムリョクじゃない」と語っている。
この考えに賛同する世界の人々が「つながる」ことが、国際社会の悲劇的現状を変えていく原動力になるのではないか。
戦火におびえる人々ともSNSなどを通してつながることができるようになった今、一斉に「ノーモア・ウォー」の声を上げてはどうだろう。
それは、被爆者をはじめ戦争による多くの被害者の方々の声を受け継ぐという意思の表明でもある。
また、今、日本人が「ノーモア・ウォー」と訴えることに意味があると考える。

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