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英仏米独の政治指導者にとって、7月初めは、ギリシャの国民投票(7月5日)、イラン核協議の期限(7月7日)と厳しいチキンゲームの日々となっている。
ギリシャ、イランの両国からは、交渉で変に妥協するとプライドが傷つくといった趣旨の発言が聞こえてくる。
ここで語られている国民国家という集団のプライドとは何だろうか。
国家という集団に帰属意識を持つ個人のプライドなのだろうか。
国民投票に国家の将来を委ねたギリシャ政府とは異なり、イランの政策選択では、最高指導者ハーメネイ師をはじめとする「イラン革命体制」維持派が強力な主導権を握っている。
イランにおいては、その人々のプライドを傷つけないことが重要だといえる。
イランの核問題は、今年4月の枠組み協議で、(1)ウラン濃縮活動の制限(10〜15年間)、(2)核兵器開発疑惑施設への査察、(3)合意における対イラン経済制裁解除などで、妥協点を見出している。
しかし、6月に入り、ハーメネイ師が、これらの妥協点の細部について独自の解釈を語り始めている。
とりわけ、最終合意の署名と同時に全制裁を解除、および軍関係施設への国際原子力機構(IAEA)の査察を拒否するという2点を強く主張している。
イランはすでに、4月の枠組み合意後、凍結資金の一部を回収しており、経済的に一息ついている。
また、仮に経済制裁が一括解除されたとしても、現行の原油生産量282万バーレル(6月現在)を4年前の360万バーレルに戻すには1年近くかかると見られており、この回復速度は、制裁が段階的解除となったとしてもあまり変わらないとの分析もある。
したがって、イランにとって重要なのは、プライドと関係する査察問題の方だろう。
おそらく、イランはこの交渉で、IAEAが2011年に核兵器開発疑惑を指摘した報告書に関する検証を棚上げにしようとしているのだろう。
そして、核の平和利用を主張し、短期間で核兵器をつくることが可能な状態に核開発を持っていくよう努めていると見られている。
そのため、イラン側からは、核交渉がまとまれば、過激派組織「イスラム国」(IS)問題や中東地域の安全保障について協議ができるとの、新しい交渉条件も持ち出されている。
これに呼応するように、米国やロシア側からは、過去を問題視しない選択肢を見出したいとの発言が出ている。
こうした米国の対イラン政策に反発するかのように、サウジアラビアはムハンマド国防相がロシアを訪問している。
また、フランスとは大型武器契約を取り交わした。
そこには、サウジアラビアの政治指導者の、イランの核兵器保有に対する懸念とともにプライドが見て取れる。
そのことが、サウジに軍拡や核兵器保有を選択させる蓋然性は低くない。
イラクの故サッダーム・フセイン大統領は、1980〜88年のイラン・イラク戦争、91年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争と、3度、国民を戦争に連れて行った。
その折、同大統領は、アラブ人の誇り、アラブ人の名誉といった言葉をしばしば使った。
こうした誇りや名誉が、フセイン政権の大量破壊兵器査察問題での妥協を阻む要因の一つとなっていた。
イランのハーメネイ師も、イラン革命体制を支えた革命防衛隊の誇りや名誉を傷つけるような選択肢は選ばないだろう。
そうなると、国際社会は、イラク・シリアでのISに対する軍事行動でイランが協調することと引き換えに、イランの査察問題で妥協せざるを得ないだろう。
このシナリオは、短期的にはISの封じ込めをもたらすものであるが、長期的にはイランvs.サウジアラビア、イランvs.イスラエルの対立の溝を深めることや、中東地域での核開発競争を招く結果になる恐れがある。
いずれの国においても、プライドよりも長期的な地域の安定を願う国民は少なくないのではないだろうか。
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