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来週、ギリシャ問題やイラン核協議の合意期限、そしてイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)のカリフ制宣言一周年を迎える。
イスラム関連では、6月18日から、欲望の解放を抑制する聖なる月(ラマダーン月)に入り、イスラムの5行(信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼)のうち断食を、世界各地で多数のイスラム教徒が行っている。
6月26日、チュニジア、クウェート、フランスで起きたテロ事件が世界的に報じられている。この三つの事件に直接的な結びつきがあるか否かは、いずれの事件も捜査中であり、現時点では不明である。
ただ、6月23日にISの広報製作機構「フルカーン」がインターネット上で発信した音声メッセージと関係があるのではないかとの分析は可能だろう。
この点に鑑みれば、今後もラマダーン月に、イスラム過激運動家などがISの声明に応えてテロ事件を起こす蓋然性は高く、治安関係機関の緊張は続く。
■ ISの声明
ISが23日に出した声明のテーマは「我らが民よアッラーの呼びかけに応えよ」というものである。その中で、(1)背教者に痛手を与える、(2)戦闘の継続、(3)イラク政府と協力しているスンニー派への恩赦をうたっている。
「背教者」という言葉は、シーア派と欧米諸国(キリスト教徒、ユダヤ教徒など)と連携する人々を指すもので、この声明は、それらの人びととの戦闘を呼びかけるものである。
また、「我らが民」とは、現在の国民国家の枠を超えてISと意識連帯によって結びつく人々であり、各自が暮らしている場所で戦闘を行えという意味だと考えられる。
■ 声明の目的
ISはなぜ、この時期にこのような声明を出したのか。真意はブラックボックスである。
しかし、以下の3点が考えられるだろう。
第1は、カリフ制宣言一年の節目に、ISの存在感を改めて示す。
第2は、シリア地域での戦局における失地の回復を鼓舞する。
第3は、ISの幹部殺害が続く中、組織内を引き締める。
とりわけ失地の回復は、ラッカ地域での戦闘で一部領土を失った後、すぐにアイン・アル・アラブ(コバニ)の奪回作戦を展開していることが注目される。
■ 声明とテロ事件の関係
26日の三つの事件が声明と関係するかは現在のところ不明である。
しかし、最近、この三つ以外にも以下のようなテロ事件が起きている。
・6月22日、ナイジェリア北東部ボルノ州のモスクで、女性2人による自爆テロ。死者30人。ボコ・ハラムが犯行声明。
・6月23日、イラク中部のバラドルッズでスンニー派の地元指導者の集会に対し、自爆テロ。死者14人。ISが24日に犯行声明。
・6月24日、シリアの首都ダマスカス郊外のタッル市のモスクの近くで自動車爆弾によるテロ。死者13人。
・6月26日、ソマリア南部レゴにあるアフリカ連合(AU)の国連平和維持部隊(AMISOM)の駐屯基地が襲撃される。死者50人。アルシャバーブが犯行声明。
ラマダーン月に入り、ISの声明への呼応や、イスラム過激思想を持つ者たちの活動が相互に刺激し合っているようにも見受けられる。
■ 社会の反応
こうしたテロ事件が続くことで、各国では国民の「安全」を守るために、イスラム過激思想家のみならずイスラム教徒への監視が強まるだろう。
そのことによって、イスラム教徒排斥運動の再度の高まり、シーア派とスンニー派間の対立など社会の中の亀裂がむき出しになる可能性がある。
それはISが一番望む社会状況だといえよう。
このような環境をつくらないためにも、各国は、市民の公平性、公正性を高める政策形成が求められている。
また、一人ひとりの市民は、他者の声に耳を傾け、相互の自由を尊重する意識を持つことが求められているのではないだろうか。
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