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ISに対する米ロの外交

本日、TBSニュースバード「ニュースの視点」(15:00生放送、21:00再放送)の「トルコの対『イスラム国』(IS)方針転換」という企画に出演させていただきました。
企画された鈴木信行さん、キャスターの佐々木真奈美さんに感謝いたします。
番組は、米国が昨年イラク領内のISの空爆を開始した88日から1年を経た現在、国際社会はISや国際テロにどう対応しているのかを視聴者に伝えるものとなっています。
私の説明不足があった点を自省し、補足的に以下を書きました。
 
■ ロシア外交
89日、ロシアのラブロフ外相が、国営テレビを通じてプーチン大統領がISに対する新提案を関係国に説明中であると紹介した。
本日のTBSの番組で次のような外交について触れたのだが、私の説明で、その重要性が十分伝えられたかどうかおぼつかないので、補足しておく。
 
<シリアを取り巻く外交>
6月19日          プーチン・ロシア大統領とムハンマド・サウジ国防相が会談(於ロシア)
6月29日          プーチンとムアッリム・シリア外相が会談(於ロシア)
7月 7日          マムルーク・シリア国民安全保障会議議長とサウジアラビア首脳が会談(於サウジアラビア)
7月31日          レバノン紙「アフバール」が7/7の会談を報道
8月 3           カタールのドーハで、ラブロフ・ロシア外相、ジュベイル・サウジ外相、ケリー米国務長官が会談。シリア問題で政治的変化の必要性で一致。
8月 5日          ムアッリム・シリア外相、イランを訪問
8月 6日          ムアッリム・シリア外相、アラウィ・オマーン外相と会談(オマーン)
8月 6日        オバマ大統領「シリアで政治的解決への窓が少し開いた」と発言
8月 7日          イラン革命防衛隊のスレイマニ司令官がロシア訪問
8月 7日          国連安保理、シリアでの化学兵器使用に関し、決議2235号採択
8月 8日          「ハヤート」紙が7/7の会談を報道
※ 9月末までに「モスクワ3」開催の予定
 
619日のプーチン大統領とムハンマド・サウジ国防相との会談では、プーチン大統領がシリア問題に関し、アサド退陣を迫っているのはトルコとサウジだけだとして、退陣問題よりもIS掃討作戦で共同戦線を形成することが先決だと説得を試みた。
これに対し、ムハンマド国防相は理解を示した。
その理由は、サウジの軍事費が対前年比で17%増加しており財政の負担となっていることもあると考えられる。
この会談を受けて、プーチン大統領は外交を進めているとみられる。
 
77日、シリアの治安関係者とサウジ首脳の会談が実現した。
会談の内容は、サウジ側から(1)ヒズボラ勢力、イラン、イラン寄りのシーア派民兵を国外退去させることを条件に、サウジは反体制派支援を停止、(2)今後のシリアをシリア国民に委ね、大統領選挙、国会選挙が進められることなどが提案されている。
この77日の会談について、レバノン紙「アフバール」(731日付)とアラビア語紙「ハヤート」(88日付)が取り上げている。
両紙の記事内容は、会談の場所や会談について承知していた人物が誰なのかという点で違いが見られるが、この会談が行われたという事実、会談により83日のカタールでのロシア、サウジ、米国という3か国外相会談への流れがつくられたことは確かのようだ。
一方、シリアではアサド大統領が725日、立法令32号を施行し恩赦を決定し、翌26日に、人民宮殿で「一部の地域の放棄」の可能性などの内容を含んだ、注目される演説を行った。
 
以上のような流れから、ロシアはアサド政権が衰退しつつある中、ISに対する共同戦線を形成し、国益(シリアの軍港の使用権および債権を守る、チェチェンの反体制派グループとISとの関係の分断)を守ることを主眼においた対外政策をとっていると分析できる。
当面のロシアの目標は9月末までにシリア和平会議の「モスクワ3」を開催することである。
これを実現するためには、イランの動きが一つのカギとなるが、ロシアはイランに対して、対空システムS300を含めた武器輸出というカードを持っている。
 
■ 米国とトルコの包括交渉
8月2日、米国防省はIS掃討のための戦費が昨年8月から本年7月末の間で約32億ドル(約3968億円)を超えたと発表した。
現在、1日当たりの戦費は約940万ドル(約11億円)に達している。
これは、昨年の89月の1日当たりの戦費が560万ドルよりも増加している。
米国は厳しい予算削減措置の中で、この1年間、シリアとイラクで6000回の空爆を行い、ISに対する戦いを支えてきた。
また、86日のCNNによると、今秋、2カ月程度、中東地域に米空母が1隻も配備されない事態が生じるという。
現在、活動しているセオドア・ルーズベルトが10月中にペルシャ湾を離れる。
同艦に替わる空母の到着は冬季になる見通しである。
このような米軍の状況を打開し、ISに対する空爆を継続、強化するには、トルコの南東部の基地を使用することが望ましい。
「ハヤート」紙(85日付)が報じたように、米国は今回の基地使用交渉において合意に至るまでに8カ月の外交努力を行っている。
このように、米国の対IS政策は、ロシアと同様に国益を十分考慮したものとなっている。
イランとの核交渉も、ロウハニ大統領が核での合意がシリア情勢の政治的打開に結びつくと語っているように、対IS政策の一環であるとの見方もできる。
 
間もなく、米軍はトルコの基地を利用し、ISの要人の殺害や、資金源を断つことを目的とする本格的な作戦を開始する。
また、シリアでは、87日にラタキアで起きたアサド大統領の甥であるスレイマン・アサドによるハッサン・シャイフ空軍大佐殺害事件などで、同政権から離反する者が増えてくることが考えられる。
シリア北部に「安全地帯」を設置する目的の一つは、離反者や難民の受け皿をつくることだと見られている。
さらに、シリアでの化学兵器使用問題に関し、その責任者を追及する国際社会の動きも強まることが予想される。
こうした中で、米国とロシアが対IS政策で協調し、新たな中東での秩序づくりが図れるか、注目すべき時期に入りつつあるように思う。

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