中東地域情勢

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811日、イランでは北西部で300人以上の犠牲者を出した地震への対応について、被災者からイラン政府への非難が起きている。
また813日には、エジプトで、モルシ大統領が対立していた軍最高評議会議長のタンタウィ国防相、アナン参謀総長を解任し、改正憲法宣言も撤廃するという出来事が起きた。
両方とも、今後の動向が大いに注目される。
 
さて、明日、TBSニュースバードで15:00から「ニュースの視点:シリアへの軍事介入の是非を問う」が放映される(※)。同番組は、米国の独立報道番組「デモクラシー・ナウ」が29日に放映したパトリック・シール(英国人ジャーナリスト)の解説がベースとなっている。
半年前と現在ではシリア情勢も変化しているが、ハーフェズ・アサド前大統領を題材にした著作があるシール氏の分析観点は、今後のシリア情勢を考える上でも参考になると思われる。
 
そのシリアについて、13日、ジェッダで開催されたイスラム諸国外相会議において参加資格が停止させられ孤立が深まっている(14日の首脳会議で正式決定予定)。
一方、反体制派勢力は、同11日にクリントン米国務長官のトルコ訪問以来、シリア軍用機の飛行禁止空域や安全地帯を設置することを強く主張し始めている。
さらに、ヒジャブ前首相をはじめアサド政権の離反者が同政権の軍事力の実状や火薬庫の状況を語りはじめている。また、情報戦が繰り広げられる中で、ロシア高官(Mikhail Bogdanov外務副大臣)が、マーヘル・アサド(バッシャール大統領の弟)が、両足を失っていることや同大統領が退任準備をしているなどと語ったとサウジのアルワタン紙が報じた(814日付ハーレツ紙がレポート)
こうした状況下で、830日にシリア問題で安保理が閣僚級会議の開催を予定しているが、ロシア、中国はどう動くのか、注目したい。
 
なお、バッシャール・アサドの特別顧問のブサイナ・シャーバーンが14日、北京を訪問すると中国が発表している。
 
※私も少しコメントさせていただいている。
 

動き出したイラン

イラン国営通信は86日、イラン政府がシリア問題で同国近隣諸国による会合を計画していると報じた。
この発表を前に、シリア・イラン関係情勢において次のような事件が起きている。
(1)731日、シリア反体制派グループがイランの支援を受けているレバノンのヒズボラの戦闘員を拘束。
(2)82日、同じく、イラン戦闘員の身柄を拘束。
(3)84日、同じく、ダマスカス郊外でバスに乗っていたイラン人巡礼者48人を拘束。
 
イランにとって、シリアは同盟国であるだけでなく、レバノンのヒズボラとイランを結ぶ結節点として戦略的に重要な国である。
仮に、今後、シーア派体制となったイラクでイランの影響力が今以上に拡大すれば、レバノン、シリア、イラク、そしてイランによって形成されるシーア派ベルト地帯は、サウジアラビアをはじめとする湾岸アラブ産油国にとって一層の脅威となる。
このため、シリア問題は、反体制派を支援するカタール・サウジと、アサド政権を支援するイランとの対立構図ともなっている。
 
そのイランが7日、ジャリリ最高安全保障事務局長にシリアを訪問させた。このジャリリ氏とバッシャール・アサド大統領との会談はシリア国営テレビで放映され、アサド政権はヒジャブ首相の離反で動揺していないとのアピールがなされた。
ジャリリ氏は、イランの最高指導者のハーメネイ師の側近で、欧米との核開発問題の交渉にあたるなど次期大統領候補との評判もある人物である。
同氏はダマスカス訪問に先んじてレバノンを訪問し、ヒズボラの指導者ナスラッラー師と会談を行っており、「アサド後のシリア」について協議したと報じるメディアもある。
 
同じく87日には、イランのサレヒ外相がトルコの首都アンカラでダウトオール外相と、巡礼者48人の解放問題をはじめとするシリア問題について協議を行っている。
さらに、同日、ハミード・バガーイー副大統領がエジプトを訪問している。
 
こうしたイラン外交の目的を推察すると次のようになる。
(1)拘束されている自国民の解放に向けた努力およびアサド政権支援の明確化
(2)アサド政権の権力移譲に関する調整
(3)ヒズボラ、シリア、イランによる対イスラエル軍事行動への協議
 
その一方、米国との関係では、731日にオバマ米大統領がイランに対する追加制裁措置を発表している。これに対しイランは、84日に射程300㎞の新型ミサイル(ファテフ110)の発射に成功したとの報道が流れている。
国連安保理は中露の拒否権行使で機能不全を起こしているものの、欧米諸国は有志連合ものとで対イラン制裁を強化している。
こうした欧米の動きは、イランからは、アサド政権の崩壊の次は自国の体制崩壊を狙っているものと見えるだろう。
 
以上のことから、今回のイランの政策選択は、上記に挙げた(2)を意識しつつ(3)を目的とするものであるとの見方ができるのではないだろうか。

シリア問題と国際社会

かつて国際社会は、リビア東部のベンガジの市民がカザフィーの軍に取り囲まれ、人間の尊厳が損なわれるとして軍事力による国際介入を実施した。
現在、シリアのアサド政権はアレッポ(人口およそ200万人)に戦車や攻撃ヘリなどを終結し、同市の鎮圧作戦を開始する直前にある。
83日、国連総会でシリア問題に関し、即時停戦を求める決議案が採択された。しかし、リビアと同様に国連憲章7章に基づく武力行使を視野に入れた決議案を採択する状況にはない。
 
一方、シリア国内では6日、ヒジャブ首相がアサド政権を離反し、反体制派に加わる旨宣言した。また、未確認情報ではあるが、他の閣僚や軍高官の中に離反する者がいるとも伝えられている。
 
こした外的および内的要因がアサド政権にどのような変化をもたらすだろうか。
そのポイントは、ロシアが上記の2つの要因をどう評価するかである。
プーチン政権にとって、シリアは着実に重荷となりつつある。アサド政権の残虐行為は、国際社会の人道介入に反対している政府においても政策変更のターニングポイントとなる可能性がある。
したがって、これから行われるであろうシリア政府によるアレッポへの総攻撃での市民の犠牲いかんによってはロシアが立場を変える蓋然性は低くないだろう。
 
仮にロシア、そして中国が政策を変更すれば、アサド政権の崩壊は加速度的に早まることは確実である。
このことに鑑みれば、対シリア支援国の政策変更を促す目的で、支援国を対象に、要人の入国を禁止するなどの制裁案を準備するのも一案ではないだろうか。
 

シリア情勢の波紋

内戦が激化しているシリア情勢は、アレッポでの戦闘という大きな山場を迎えている。
ここで注目されるのはトルコの政策である。
同国のエルドアン首相が720日、ロシアを訪問し同国首脳らとシリア情勢について協議している。また、同26日にはダウトオール外相がアンカラで、シリアを離れたメナス・トラス准将(元国防相ムスタファ・トラスの息子)と協議した。
 
このようなトルコの外交の根底には、アサド政権後のシリアの体制があまりにも不確実な点や、イランの要人たちから断固としてシリアの現体制を守るとの発言が出ていることが関係していると考えられる。
では、こうしたシリア情勢の悪化と関連する中東でのリスクにはどのようなものがあるのか、以下に書き出してみる。
 
1.イランのシリア支援
(1)ヒズボラ、ハマス、シリアによるイスラエルに対する軍事行動が選択、実施される蓋然性が高まっている。
(2)シリア・イスラエル付近での緊張感が高まっている。
(3)ヒズボラのイスラエルに対する攻撃がエスカレートする。
 
2.ペルシャ湾岸地域情勢
(1)バーレーンのシーア派の反体制運動が活発化している。
(2)サウジ東部州でのシーア派住民の抵抗活動が活発化している。
(3)ホルムズ海峡封鎖が実施される可能性がある。
 
3.難民・国境管理
(1)クルド民族の武力闘争の機運が高まっている(シリア、イラン、イラク、トルコ)。
(2)隣国の難民受け入れ国での政治・経済不安が高まっている(特にヨルダン)。
(3)国境管理でのトラブルが起きる可能性がある(例:トルコ)。
 
以上、今後起こるリスク連鎖の分析に何がしかの参考になればと思う。
 

湾岸地域の不安

719日、米国務省は今後数か月間、ペルシャ湾周辺に空母を2隻配備する方針を明らかにした。そのことが何を意味するかについて、まだ十分な分析はできない。
こうしたペルシャ湾岸に面するアラブ諸国では気になる動きが幾つかある。
 
サウジアラビアでは、東部州におけるシーア派住民の抗議デモに関係して78日、アル・ニムル師が治安部隊に身柄を拘束された。
また、バーレーンでは人権団体の理事長ナジャフ氏が79日に逮捕され、シーア派の政治団体「イスラム行動協会」が解散命令を受けた。
さらに、71516日にアラブ首長国連邦(UAE)で「アル・イスラーハ」(改革)を名乗るイスラム主義組織のメンバーが逮捕されている(UAE国営通信によると逮捕者は7名)。
 
こうした湾岸アラブ諸国で起きている政治活動が、チュニジア、エジプト、リビア、イエメン、そしてシリアで見られてきた市民による政府への抗議行動と同様のものなのか、外国勢力の支援に基づく政治活動なのかはわからない。
 
一方、クウェートは6月以来、政治改革めぐり揺れ動いてきたが、716日、野党勢力が「国家宣言」を発表し憲法改正、議会・司法の制度改革を求める動きが出てきた。
 
ソーシャルネットワークの普及にともなって、アラブ社会では市民が、富の格差の是正、政治的権利の要求、腐敗の是正など公平性、公正性の問題解決を各国政府に突き付けている。
中東諸国においてインターネット、携帯電話の普及がいち早く進んだ豊かな湾岸アラブ産油国でも、そのうねりが続いている。
 
この大きな中東地域での政治・社会変動は、国際政治・経済に加え、エネルギー安全保障の面でも世界規模のリスク連鎖を生じさせる可能性が高い。
シリア情勢の行方が、湾岸アラブ産油国に与える影響も多面的観点で見ておく必要があるだろう。

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