中東地域情勢

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110日の原油先物市場で、北海ブレント原油が1バレル113.48ドルを付けた。価格上昇の要因は、ナイジェリアの宗教対立とイラン問題だと報じられている(10日付けロイター)。
イランの核開発問題については、19日に同国最高指導者ハーメネイ師が核開発計画を放棄することはない旨の演説をした。
今のところ、EU123日の外相会議でイランからの原油輸入禁止措置を決定する予定である。
 
今後、国際社会でイランの原油輸入禁止という制裁圧力が強まれば、イランは「一滴の原油もホルムズ海峡を通さない」(127日のモハンマド・レザー・ラヒーミー第一副大統領)との言葉に沿って行動するのだろうか。
そのことについて考える上で、条件を少し整理しておこう。
 
まず、第1はイランの封鎖能力である。
イランがホルムズ海峡(幅34km)を封鎖する手段としては、(1)機雷敷設、(2)対艦ミサイルの活用、(3)ロシア製潜水艦の活用が考えられる。
かつて、イラン・イラク戦争時に、イランは高速ゴムボートでペルシャ湾を航行するタンカーを攻撃した。その当時と比較すると、封鎖能力は数段上がっている。
2は、EUが経済危機の最中におかれていること。
3は、米国がイラクから兵を撤収し、アフガニスタンでは撤退過程にあること。
4は、イランが現在も北朝鮮と友好な関係にあることである。
 
こうした条件がある中、イランの政治指導部の選択肢は、
(1)交渉による問題解決
(2)中国を巻き込んで、現状維持
(3)軍事的に強硬姿勢を貫く
等が考えられる。
蓋然性の高さは(1)⇒(3)になる。
おそらくイランが軍事演習など強硬姿勢に出ているのは、原油価格を上昇させ、交渉において揺さぶりをかけるためだろう。
 
中国は制裁強化を否定する姿勢を早くも示している。
近く、トルコの仲介で1年ぶりに実施される見通しの安保理5カ国プラス・ドイツのグループと、イランとの協議に注目したい。
国営シリア・アラブ通信(SANA)は16日、ダマスカスで自爆テロとされる爆発があり、死者26人、負傷者63人が出たと報じた。自爆テロは、死者44人を出した昨年1223日に次いで2回目である。
同事件についてシリアの国営テレビは、国際テロ組織アルカイダ系勢力の犯行だと伝えている。一方、反体制派組織のシリア国民評議会(SNC)はアサド政権の犯行との見解を表明している。
 
シリアでの市民抗議活動は、国連の推計によると20113月に始まって以来、同政権の弾圧により市民約5000人が死亡しており、治安関係者の使者も約2000人に上っている。
この問題への対応として、アラブ連盟は現在シリアに監視団(100人)を派遣しており、18日にも外相会議を開催し、今後の対応を決定するとの報道がある(16日付CNN)。またアラブ連盟は、同問題に関し同月5日にカイロを訪問した米国のフェルトマン国務次官補と協議を行っている。
そこで、以下にアラブ連盟が今後シリア問題でどのような政策をとるのか考えてみる。
 
ここでは、政策は「政策決定の場に参加するアクター間の利益の相互作用の産物」であるとする(多元主義的政策観)。
まず、アクターは国際的には(1)アラブ連盟、(2)国連、(3)米国・EU、(4)イスラエル、(5)トルコである。
これらのアクターの利益を制約する要因としては、アラブ連盟と国連が昨年3月からシリアに対して発している「いかなる暴力も容認できない」との表明が挙げられる。これにより、リビアで行われたような「保護する責任」のもとでの国際的軍事介入は難しいものとなっている。
 
その背景には、軍事介入による問題解決は、リビアの事例でも見られたように、短期的なものでない限り協調行動に不協和音の発生や財政負担が重くなるというリスクがあるとの米国・EUの認識がある。また、アラブ連盟もイスラエルもポスト・アサド体制におけるイスラム主義勢力の台頭を恐れている。そして、トルコは国内への難民流入を阻止しシリアとの緊張関係を緩和するための「緩衝地帯」が設定できれば、それ以上のリスクをとる必要はない。
したがって、国連、米国・EU、トルコは、アサド政権による市民への弾圧を止める手段として、アラブ連盟による監視員の増員を要請する政策を優先することになる。これは自国への飛び火を恐れるアラブ連盟諸国およびイスラエルの利益とも一致すると考えられる。
このように分析すると、アラブ連盟はシリア市民の人道問題の監視を強化する政策を選択する蓋然性が高い。
しかし、シリア情勢はその閉塞状況の打開を求め、離反した自由シリア軍が政府機関を標的とした攻撃を激化させる蓋然性が高まっていると言える。そして、それによりアサド政権が市民弾圧をエスカレートさせ負のスパイラルが生まれるという最悪のシナリオも見えてくる。
 
国際社会の政治指導者たちは、このようなシリアの「人道危機」の高まりを認識する洞察力を持っている。しかし、現在のところ国際社会は、再度、国連安保理においてシリア問題における「保護する責任」を踏まえた制裁決議案を採択するための行動をとろうとしていない。
その理由としては、国際社会では2012年が選挙の年に当っていること、財政危機を抱える各国政治指導者たちはリーダーシップを発揮できない、などがあるだろう。
そうだとすれば、シリア問題だけでなく、イランの核開発問題、米軍撤退後のイラク、アフガニスタンの安定化問題の解決も、短期的には難しいと言える。
 
イラン制裁問題に関し、20111231日にオバマ政権は国内法ではあるが、イラン中央銀行と取引がある外国金融機関に制裁を課す法案に署名した。また、欧州連合(EU)は、イラン産原油の輸入禁止を今月末の首脳会議で決定する方針である。
この問題に日本の政策立案者や決定者が注目しているのは、エネルギーの安定供給問題と国際協調という2つの政策課題があり、それらを解決するための政策案を策定することが求められるからである。
 
日本の対外政策がよって立つ基本理念は、憲法前文の精神に求められている。それは、(1)自由と民主主義、(2)平和主義、(3)国際協調主義、(4)人類への貢献である。
この基本理念を踏まえれば、日本の対イラン政策は次の方向性をとることになるだろう。
まず、平和主義の観点である。
憲法前文には「恒久の平和を念願し・・・・全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と謳われている。この点から、日本の政策は、国際社会がイランの核開発を脅威と認識し、ウラン濃縮活動の停止を国連安保理決議で求めていることに賛同し、世界平和の実現を目的として国際社会に働きかけるものとなるだろう。
次に、国際協調主義の観点である。
憲法前文には、「いずれの国も自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」「われらは・・・・国際社会において名誉ある地位を占めたい」とある。このことから、日本国内の特殊な事情を理由に国際的な秩序づくりに参画しないことは望ましくないとの考えが導き出されるだろう。
以上のことから考えると、日本の原油総輸入量の約1割をイラン産が占めており、その決済はイラン中央銀行を介しているという特殊事情を国際社会に説明し、特別な配慮を求めるといった対イラン政策は、基本理念にそぐわないと言えるのではないだろうか。
 
政策過程において、政策決定の中心である総理がすべての問題に注意をはらい、それらの政策案に目を通すことは困難である。このため、大臣が分掌し各省庁の各部門が事務を分担する。この時、省内での政策立案において対立が見られることがある。日本の対イラン政策もその1事例である。
1979年のイラン革命以来、外務省内部で政策立案について、北米局や総合政策局と中東・アフリカ局との対立が生じることもあった。その背景には、日本が(1)安全保障を米国に依存してきたこと、(2)資源を持たざる国でありながら、第二次世界大戦後も資源外交をおろそかにしてきたこと、(3)イラン・北朝鮮の軍事協力に対する無関心さがあったことがあると言えるだろう。
そして、その結果、政府開発援助を使ったカルーン・ダムの建設やアザデガン油田開発などに関し米国の対イラン政策と摩擦が生じることもあった。
 
核開発問題をはじめとして、国連のもとでの国際秩序づくりは、北朝鮮における政治不安が高まっている現在、より重要なものとなってきている。
112日に予定されているガイトナー米国財務長官と野田総理の会談は、「対米配慮」という外交姿勢ではなく、「グローバルパートナーシップ」に基づいた対イラン政策をアピールしてほしい。
それによって、シーレーン問題への関与を示した昨年末の総理のインド訪問や、エネルギー問題に対応する玄葉外相の中東歴訪もより生きてくるのではないだろうか。

年頭の日本への警告

新たな年を迎えました。
 
2012年は「政治の年」といわれるように、政治体制を決める選挙が世界各地で実施される。また、昨年12月の北朝鮮の政治指導者の交代により、日本の安全保障上、これまで以上に朝鮮半島を注視すべき時期に入った。
このような国際情勢の不安定さが増す要因に加え、エネルギー問題でも懸念材料が増えている。以下にこの点について考えてみる。
 
地球の人口は、201110月に70億人を超えた。これからも人類は数を増やし、生活を向上させる方向に進むだろう。今後しばらく、その中心地域はインドを含めたアジアである。現在、その人口動態のボーナスがアジア地域の経済成長を支えている。
しかし、このボーナスは気候変動問題、食糧問題、水問題、感染症といった地球規模問題などへの負の影響という「不安感」を人々に抱かせる要因になっている。
また、昨年の東日本大震災に伴う福島原発事故による原子力発電の継続問題が、地球規模問題の1つであるエネルギー問題に新たな課題を投げかけている。それは、再生エネルギーへのエネルギーシフトの早期達成の困難さに伴う原油・天然ガスの需要増にどう対処するか、というものである。
 
現在の国際情勢において、この課題の難しさを改めて認識させられる出来事が新年早々起きた。それはイラン海軍によるミサイル試射であり、国際的に多くのメディアが報じた。
問題は、イラン側が国際経済の不安定性を踏まえて、グローバルメディアの力を利用して原油価格を上昇(これにともない天然ガス価格も上昇する)させることができることを、国際社会に見せつけていることである。
イランは今回の試射を、国際社会が同国の核開発問題に対し、イラン中央銀行との取引禁止まで実施し始めたことへの対抗措置と位置付けているとも考えられる。
 
イランは、ペルシャ湾の出入り口であるホルムズ海峡を軍事的に封鎖できる能力(射程200kmの対艦ミサイルやレーダー追尾を避けられるミサイル)を示すことで、国際社会の対イラン経済制裁を強める流れを阻止することに加え、次のような政策効果も視野に入れているだろう。
(1)対イランの海軍兵力、空軍兵力の展開に対する警告
(2)イランが原油価格上昇に影響力があることを明示
(3)湾岸アラブ産油国に対イラン政策を変更させるための圧力
(4)原油価格上昇による石油収入の拡大
 
このイランの行動によって、国際社会は原油・天然ガスの供給が減少するリスク、先物市場での原油価格上昇による経済リスク、さらに保険料金の上昇に伴う輸送コスト上昇の経済リスクなどへの対応を迫られることになった。
そして、その対応が長期化することに加え、イランの(1)核開発の進展状況、(2)イラクでの影響力増加、(3)アフガニスタンでの反体制派への支援行動いかんでは、対イラン武力行使といった不確実な状態を想定する必要性が高まっていると言えるだろう。
 
2012年初頭から、日本は近隣の朝鮮半島問題に加え、エネルギー安全保障問題から生じるリスク連鎖に十分気を配るようにとの警告を受けたようだ。

2011年の終わりに

2011年の中東地域の一番の話題は、チュニジア、エジプト、リビアとドミノ倒しのように長期政権が崩壊したことである。
そして、1123日にはイエメンのサレハ大統領が権限を副大統領に移譲する文書に署名し退任の意向を示した。
さらに、シリアではアサド政権に対する市民の抵抗運動が9か月以上を経た現在も続いている。
 
こうした政治変化以外にも、51日には米国の特殊部隊シールズがパキスタンでアルカイダの指導者オサマ・ビンラディンを殺害したことも大きな出来事である。
アルカイダは、ビンラディンの後任の指導者としてエジプト人のザワヒリ容疑者を選択した。現在、アルカイダの力は衰えたとの分析が主流ではあるが、イエメンに拠点を置くアラビア半島のアルカイダ、アルジェリアなどのマグレブ(北アフリカ)のアルカイダなどの活動が依然として見られている。また、カダフィ後のリビアでアルカイダが拠点づくりを進めているとの報道がある。さらに、米軍撤退に合わせてイラクでもテロ活動を活発化させているようだ。
 
2012年は、この2つに、イラク、アフガニスタンの平和維持の動向、対イラン制裁の動向などが加わり、中東地域の不安定性が増す蓋然性は高い。
したがって、本ブログでも気を引き締めて、これらの情勢に関する情報、見方などを掲載できればと思っている。
 
本年は、東日本大震災の被災地支援活動の関係などもあり、かなり長期にブログを休みました。ここにお詫び申し上げます。
2012年が希望の年となるよう、心より祈念申し上げます。

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