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シリア・アラブ通信(SANA)は1月5日、アサド大統領が6日(日本時間の同日午後)に演説を行うと報じた。
AFPは、同演説の内容について、レバノン紙「アル・アクバル」の記事より、
(1)停戦案
(2)国際監視団の受け入れ
(3)新憲法制定に向けた制憲議会の設置
(4)新たな人民議会選挙の実施
などの内戦解決に向けた具体案を提示すると報じている。
戦局は、反体制派がタフタナズ空軍基地の攻防戦に勝利しつつあり、アサド政権の空軍力をほぼ削ぐことが確実視されている(1月6日CNN)中での演説である。
演説内容は、年末にブラヒミ特使とロシアの協議内容に沿ったものであり、反体制派としては受諾しにくいものであると思われる。
アサド大統領の演説は、昨年6月以来である。
また、アラブの一部報道では、アサド政権は関係者142人(家族および軍・治安関係者)の国際的身柄保護について要請しているとの記事が流されており、この点も注目したい。
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中東地域情勢
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新年おめでとうございます。
1996年からゴラン高原の国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)に参加していた自衛隊部隊の33人が昨年12月31日に帰国した。シリア情勢の悪化によって日本の国連平和維持活動(PKO)の1つの撤収である。
シリア問題の解決は現在も難航しており、昨年末のブラヒミ特別代表のロシア訪問が期待通りの結果をもたらすことはなかった。その最大の要因は、ロシアとブラヒミがアサド政権の処遇に関し今後1年の続投を認めるという条件を持ち出して、シリアの反体制勢力との妥協を図ろうとしている点である。
この条件を、「アサド政権の残虐性を明確に非難し、同市の退陣をはっきりと呼びかける」と訴える反体制派の「国民連合」のハティブ議長が飲むはずはない。
シリアでの戦闘による昨年の死者は4万5000人以上(12月26日時点)、国内避難民は200万人、周辺国への難民は54万に達している。
ロシアの対シリア政策は、平和構築の観点から分析すると、「停戦と移行政権樹立をリンケージさせる」というものだと言える。
その実現のために、ロシアは米国を巻き込み1月中にロシア、米国、ブラヒミ会談を予定し、その流れの中でエジプト、サウジアラビア、トルコなどの周辺諸国も巻き込もうとしている。そして、移行政権のもとで大統領選挙、国民議会選挙という政治プロセスを動かす一方、国際的な経済支援会議において緊急人道支援、復興支援の計画づくりを進めて「平和の果実」を提示しようとしていると考えられる。
つまり、まず、平和強制という国際介入なしに停戦状態に持ち込む――国連をはじめとする平和監視軍のもとで兵力を引き離し、休戦維持から停戦へと向かわせる。その後、政治プロセスを進めるとともに経済復興に着手するという3分野で平和構築を行っていこうとの計画案であると分析できる。
この案に問題点はないだろうか。
仮に、アサド政権が再び「真剣な対話」を広範な国民に呼びかける一方、ロシアがアルカイダの勢力浸透を防ぐためだとして米国やEUに協力を要請したとする。その場合、「国民連合」と、アサド政権のどちらが正当な政権なのかという点で鋭い対立が生じるだけでなく、「国民連合」を承認した米国、EU、アラブ連盟諸国などの行為自体の正当性も問われることになる。穿った見方をすれば、ロシアの提案の狙いはそこにあるとも考えられる。
まして、ロシア側から流されている案――アサド政権の退陣に言及せず、移行政権(暫定政権)が全権限を持ち、シャラ副大統領の下で国民対話を進めるとの事態収束案――は、あまりにも現実性を欠いている。
ロシアのラブロフ外相の発言(12月21日)によると、アサド大統領は中国とロシアが圧力をかけても退任しないという。ならば、シャラ副大統領に国民対話を進めさせても意味がない。
より現実的な案としては、停戦までの平和構築、政治プロセス、経済復興の主導権は「国民連合」にとらせて、それを国連安保理常任理事国やアラブ連盟がサポートするというコミットメントの体制を構築するというものではないだろうか。
ロシアはアサド政権の転覆が、イラクのように新たな内戦のステージをつくると見ている。確かに、その蓋然性は高い。
しかし、そうだからこそ、しっかりとした「脱アサド家」の移行体制づくりを急ぐべきではないだろうか。
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2012年の中東アナリストとしての自己評価は「不合格」としました。
情報資料の収集はできても、情報として発信できるだけの付加価値がつけられませんでした。
今年の反省を踏まえ、2013年はまたブログを少しずつ書いていこうと思っております。
ご意見、ご批判をいただければ幸いです。
2013年の私の注目する国とテーマのBest5は以下の通りです(注目点を挙げるときりがないのですが)。
<国>
1.シリア
2.イスラエル
3.エジプト
4.イラン
5.バーレーン
<テーマ>
1.イラン核開発問題
2.アフガニスタンおよびイラクからの有志連合軍の撤退
3.GCC諸国の連邦化の行方
4.中東諸国の市民の政治・社会運動の高揚
5.クルド自治地域の動向(イラク、シリア)
では、良いお年をお迎えください。
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先週、国際問題研究所主催のシリア問題に関する講演会で、鈴木敏郎前駐シリア大使、国連開発計画(UNDP)主催のセミナーのパネルディスカッションで岡浩外務省中東アフリカ局審議官お講和を聞く機会を得た。両氏はアラビストで中東外交において大変経験豊かな方々である。
両氏の話から、私は、中東地域の格差(国レベル、都市と地方、個人レベル)と若者層の失業問題が引き金となった市民の政治改革のエネルギーを鎮静化することの難しさを改めて認識した。
暴力行為へと発展する憎しみのエネルギーを鎮めることの難しさは、イスラエルとガザのハマスとの間で起きている現在の戦闘行為からも見て取れる。
以下では、このイスラエル・パレスチナ間の動向をはじめ中東地域での気になる2つの動きについて、それらの関係性を中心に考えてみる。
まず、前提として「今という時期」を確認しておく。
第1は、国連総会でパレスチナの「オブザーバー国家」への地位格上げ協議が本格化しようとしている。この動きに対し、イスラエルは阻止するための打倒アッバース案を作成したと報じられている(11月14日付AFP)。
第2は、シリア問題で11日にドーハで反体制運動の統一組織「シリア国民連合」が発足した(12日にアラブ連盟、13日にフランスが承認)。
第3は、11日にイスラエルの占領下にあるシリア領ゴラン高原へシリア軍からの迫撃弾が着弾した(1973年の第4次中東戦争以来初めて)。
第4は、14日にヨルダンのアンマンでアブドラ国王体制打倒の抗議デモが起き、治安部隊と衝突した。
まず気になるのは、イランの核開発問題の動きである。
16日、国際原子力機関(IAEA)がイランの中部フォルドゥの地下施設において2784基のウラン濃縮用遠心分離器の設置を終えたとの報告を発表した(8月時点で2140基、また20%の濃縮ウランは43.4kg増の232.8kgとなった)。
ここからもわかるように、イランは核開発問題への国際圧力をかわしながら能力を高めている。IAEAは、12月13日にテヘランで協議を行う予定である。
このイランの核開発問題に関し、イスラエルはいつまで、オバマ政権のイランとの対話路線を静観できるだろうか。仮に、イスラエルが静観を続けるとすれば、直面する安全保障上の脅威であるパレスチナ問題に関し米国の政治的助力を求めることが十分考えられるだろう。
そうなると、18日にイスラエルの閣議後、ネタニヤフ首相が表明したように、ガザでの軍事作戦を大幅に拡大することが現実味を帯びてくるだろう。
次に、イスラエルの軍事関係者が懸念している、ガザ(ハマス)、南レバノン方面(レバノンのヒズボラ勢力)、ゴラン高原方面(シリア軍)という反イスラエル戦線の共同軍事行動の動向である。
今回のハマスによるイスラエルに対するロケット弾攻撃は、関係の深いシリアの現政権支援という目的もあるのではないかとも考えられる。仮にそうだとすれば、ハマスが単独で実施しているのか、それともシリア、レバノンのヒズボラ、ハマスを支援しているイランが反イスラエル戦線を連動させて動かそうとしていることの一環なのか、との疑問も湧いてくる(11月17日付電子版シャルクル・アウサト紙のオピニオンで、イラン説が取り上げられていた *)。
イスラエルのネタニヤフ首相は、来年1月の総選挙を前に、安全保障問題で国民の信頼を得る必要がある。したがって、ハマスがイスラエルを攻撃すれば、ネタニヤフ首相が過剰反応をすることが予想できる。そうすると、シリア問題に関し欧米諸国とアラブ諸国の歩調が乱れることも予想がつく。
また、ヒズボラの指導者ナスラッラー師は、アラブ諸国に対しシリア問題からパレスチナ問題に関心を移すべきだと強く主張している。
果たして、今回のハマスのロケット弾攻撃はシリア問題やイラン核開発問題との関係がないのだろうか。
こうした疑問を持つのも、イランとシリアがこれまで周辺諸国での緊張関係を利用し、存在感を示してきた国だからだ。
現在、両国が「ブラックメール」の手法により欧米による国際秩序づくりに抵抗しているとも考えられる状況にある。
国際社会は、恐らくこれらのことを念頭に、「怯むことなく」イスラエルにガザへの軍事行動の停止を求める一方、シリア国民連合への「経済支援」「正当性の承認」を速やかに実施することが望まれる。
その際、ノーベル平和賞を受賞しているオバマ大統領の決断力が問われることになるだろう。
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11月1日、シリア情勢において主要反政府各グループが打倒アサド政権に向けて新たな統合体を組むことに合意した。
シリア政府の戦闘機による反政府勢力への空爆が前例のないほど増加しており、シリアからトルコに越境した難民は11月8日から9日の晩の間だけで1万1000人に上った(現在のところ、トルコにおけるシリア難民は約12万人)。
その中、反体制勢力は8日からカタールのドーハで、カタールおよびトルコの外相、アラブ連盟事務局長、米国国務次官補の参加のもと拡大会合を開催した。
その結果、11日に新たな反体制勢力の統一体「シリア国民連合」を結成した。同連合の議長にはイスラム法学者のムアズ・ハティブ師(ウマイヤド・モスクの元イマーム、52歳)が選出された。
シリア国民連合は今後、国際社会の対シリア武器支援や経済支援の窓口になる。
シリア情勢は10月31日に米国が「シリア国民評議会」に対する支持を撤回し、シリア国内の前線で戦っているシリア人の多くを代表する機構の設置に動いた(11月3日付「ニューヨーク・タイムズ」)。
また、中国も北京を訪問したアラブ連盟国連特使のブラヒミ氏との協議を通し、平和的解決に向けての4項目を提案している。この中国は、広い基盤を持った暫定統治機関の設置にはアサド政権の存在が含まれないとの考えを示した(11月2日付「アル・ハヤート」)。
今後の注目点は、ハティブ師のもとで60人からなる評議会メンバーが一体化を保てるかである。特に、アサド政権の基盤であるアラウィ派をどれだけ取り込めるか、また、これまで反体制派勢力の中核的存在であった「シリア国民評議会」のメンバーの不満を解消できるかどうかがポイントとなる。
一方、ロシアのテレビ局とのインタビューで、バッシャール・アサド大統領は、「私はシリアで死ぬ」と述べており、アサド政権を支える人々の力は今でも決して侮れない。
また、11日にはゴラン高原でシリアとイスラエルの間で砲撃が交わされている(39年ぶりの戦闘)。
さらに、NATO軍のラスムセン事務局長が12日にプラハで、シリア国境で戦闘が散見されるトルコに関し、NATOは同盟国としてトルコを保護、防衛するだろうと改めて述べた。
シリアの平和構築の道のりはまだまだ紆余曲折があると思われる。その意味でも、11月末の日本でのシリア問題会議の開催の重要性が増している。
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