エネルギー問題

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9月29日、時事通信社は、日本政府が米政府に対し、イランが安保理決議を履行しなければ、アザデガン油田開発の公的資金や債務保証を行わないことを伝えていた、と報じた。アザデガン油田の開発は、その産出量が日本の石油輸入量の約6%に相当する大型プロジェクトである。この開発について、就任したばかりの甘利経済産業相はイラン側に対し、交渉の期限(9月末)の先延ばしを要求している。しかし、イランのカーゼム石油相は油田開発について、実施すべき期限が迫っているため、中国企業にも開発の意向を打診していることを明らかにし、日本に交渉妥結を迫っている。
8月末とされていた安保理決議に対するイラン側の回答期限が延長される中で、フランス、中国、ロシアは、9月18日のシラク大統領が提案したイランとの外交問題全般をテーマにした交渉に希望を持っている。イランがこのシラク提案を受け入れ、ウラン濃縮計画を停止すれば、米国との交渉の道も開かれる可能性も出てきた。9月27、28日、国連安保理常任理事国とドイツからなるイラン・コミットメントグループは、ソラーナEU共通外交・安全保障上級代表を窓口として、ベルリンでイランのラリジャニ最高安全保障事務局長と協議を行った。ソラーナ代表は協議後の記者会見で、決議の履行について合意には至らなかったが、前進があったとし、来週半ばまでには交渉を再開したいと述べた。
こうして、安保理決議の履行問題の結論がアザデガン油田開発に関する日本の回答期限までに出なかったため、日本は独自の判断をイラン側に伝えねばならない可能性が高まった。
一方、米国議会の下院は28日、本会議で、イランが安保理決議を履行する意思はないと判断し、イランおよび同国と取引をする企業に対し、経済制裁を行う法案の延長および強化を可決している。同法案が、同盟国の企業にも適用されるため、国際協調の面から反対の声も上ったが、今後、上院に送付され協議されることとなった。これにより、安倍政権は日米関係への配慮か、エネルギーの安全保障かの選択に迫られることになる。
イランへの米国の外交圧力が加われば加わるほど、イランの、イラクでの活動は活発になる。例えば、ムクタダ・サドルのマフディー軍への支援強化である。それには、レバノンのヒズボラに対するイランの武器供与や資金援助と同様の方法がとられることが予想される。このようなイランの行動が明確に確認できれば、米国はより厳しいイラン政策を打ち出してくると考えられる。こうしたことを勘案すれば、日本は、イランからの原油供給が途絶えることも想定し、エネルギーに関する危機管理のあり方を早急に検討しておく必要があるだろう。

☆もう一つのブログ「複眼で見る中東報道」(http://cigvi.exblog.jp/ )では、中東現地報道(英語、電子版)より、日本のマスメディアの落穂拾いを中心に掲載しています。ご興味があれば覗いてみてください。
7月17日、北海ブレントが1バレル78.18ドルをつけ、原油価格の最高値を更新した。主要国首脳会議(G8)では、サンクトペテルブルク行動計画の中で、エネルギー安全保障に関する特別文書がまとめられた。しかし、中東地域の情勢不安が、原油価格を押し上げ続けている。そこで、エネルギー問題について、少し考えてみたい。
7月12日、国際エネルギー機構(IEA)の中期石油市場報告によると、2011年まで、世界の原油の需要は、年平均2.0%で拡大し、日量9370万バレルに達すると予測されている。一方、今年6月の時点でのOPECの余剰生産力は、日量200万バレル程度であるが、2011年には、420万〜610万バレル程度まで拡大することも予想され、需給バランスに関しては余剰が見込まれている。このような中で、G8会議は、原油価格上昇の短期的対策として、(1)産油国と消費国の対話の増進、(2)エネルギー分野への投資促進の障害の削減、(3)省エネの自主目標の設定、(4)原子力エネルギー利用の検討を挙げた。注目されるのは、原子力エネルギーへの期待が強まったことである。米国は、これにより中東の原油への依存度の軽減を図ろうとしている。今回、原子力利用を特別文書で明文化した背景には、中国やインドの経済成長にともなう需要の急増がある。また、温暖化ガス削減効果も理由の一つである。これまで、“脱原発”の方向で進んでいた欧州でも、米国同様の動きが見られている。7月11日、イギリスは7年ぶりに政策を変更し、原発の建設を発表した。また、ドイツのメルケル首相もG8会議において、脱原発政策の見直しを検討している旨を報告した。その背景には、欧州の特殊事情として、ロシアの天然ガスへの依存度を下げ、エネルギーを多様化したいとの考えがある。
ここで問題となるのが、イランの核開発の例を見るように、核の拡散問題をどのように防ぐかである。米国はこの対策の一つとして、今年2月6日にグローバル核エネルギー強調構想(GNEP)を発表した。これは、米国において核のリサイクル技術を確立し、濃縮・再処理施設を放棄した国に対し、核燃料の供給、使用済み燃料の引き取りを行うというシステムである。今回のサミットでは、今後の国際社会のエネルギー安全保障の観点からも重要な会議であったが、北朝鮮問題、イラン問題、イスラエルとヒズボラの武力衝突といった政治課題に注目が集まる状況となった。このことで、核の拡散問題や原油価格上昇に対する決め手となる政策を打ち出せなかったことは残念である。

5月2日、ボリビアのモラレス大統領が天然ガス事業を国有会社の管理下に置くことを発表した。この他、エネルギー分野での国有化問題で注目されているのが、ベネズエラやペルーである。これらの国有化が推進されると、(1)エネルギー価格の上昇、(2)エネルギー分野での投資の停滞が懸念材料となる。
エネルギーの需給バランスは、4月23、24日にカタルのドーハで開催された国際エネルギー・フォーラムに参加した同国のナイミ石油相が述べたように、供給量は不足していない(OPECの余剰生産は200万B/Dある)。では何故、原油価格が高止まりしているのだろうか。政治面では、(1)イラクの治安回復の遅れ(原油輸出の低迷)、(2)イランの核開発問題、(3)ナイジェリアの供給不安が挙げられている。これに、ボリビア、ベネズエラなどの南米の国有化問題が加わることになる。次に、石油製品からみると、米国のガソリンは低温でも燃焼をよくするため冬季に揮発成分を多くするが、夏季には揮発成分を除去するため、通常でも精製コストが上昇し、2月頃からその兆候が見られ6月がピークになるといわれている。また、現在の米国の製油所の稼働率をみると、米エネルギー情報局の調査でも、昨年のハリケーン・カトリーナの影響や大型製油所の点検・補修も加わり、80%代(ピークは96%)に留まっている。このように、石油製品不足がニューヨークの先物市場に影響を与え、本来とは逆に、原油価格の上昇に結びついている。なお、米国の製油所の状況は、今後5〜6年は現在の脆弱な状態が続くといわれている。また、原油が金、為替、株と同様に、投機の対象となっていることも高止まりの要因である。
さて、注目されるエネルギー分野の国有化であるが、過去の例では、税金、ロイヤリティー(使用料)を引き上げるカードとして使用されるケースが多かった。また、株式保有率を51対49などとする合弁会社になるケースが見られる。逆に、交渉条件次第では、メジャー側が開発権を売却したり、契約を盾に法的保障を求めるケースも見られている。国有化政策の実施については、中長期的に見ると、実施国では、外国からの投資の減退や技術革新の遅れなどのデメリットが生じている。今回、中南米諸国がこのような強気の姿勢を示す背景には、エネルギー消費大国の中国の存在が大きく、欧米メジャーと対立しても問題ないとの読みがあると思われる。
4月27日、フィナンシャル・タイムズ紙は、ブッシュ米大統領が戦略備蓄の一部取り崩しや大気汚染防止法の一部緩和に着手したことを報じる一方、米国の石油依存症の治療に同大統領が失敗したと指摘している(一人当たりのエネルギー消費世界第1位)。このまま米国でガソリン価格が1ガロン(3.8リットル)3ドルを超える状態が続くと、国民消費にも影響が出るとの懸念もある。そして、それは11月の中間選挙に悪影響を与える問題ともなる。また日本でも、ガソリンの小売価格が1リットル3=10円上昇し、製品コスト、輸送コストに影響が出始めている。同様の問題は、アジア諸国やアフリカ諸国でも見られている。この南米エネルギー供給国の国有化の動向によっては、途上国の経済危機という新たな問題も視野に入れるべき状況になる。このように見ると、南米の国有化問題は国際社会の多方面に影響を与えかねない。アジア外交を推進する日本として、この問題から生じるリスク・マネージメントを真剣に検討すべき時期であろう。

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ブッシュ政権がイラン空爆作戦を検討していると4月8日に米誌ニューヨーカーが伝えて以来、原油価格が上昇している。ニューヨークの原油先物市場では、4月17日には1バーレル当り70ドルをつけた。これは、昨年8月30日のハリケーン・カトリーナにより原油施設が被害を受けた際に、付けた価格70.85ドルに迫るものとなっている。
4月17日の国際通貨基金(IMF)の世界経済の見通し報告においても、原油価格上昇は、(1)経済格差の拡大、(2)米国の経常赤字への影響、(3)景気後退の懸念が指摘された。また、この問題は、21日にワシントンで開催予定の先進国7カ国財務相・中央銀行総裁会議での中心議題となる。同会議では、世界銀行主導で、原油価格の上昇による開発途上国の経済的ダメージを軽減する枠組みも検討されるといわれている。
このような原油価格の上昇は、イラン情勢の緊迫化から、ペルシャ湾ルートの原油供給が逼迫するとの懸念だけが要因だろうか。通常、インドや中国の潜在的なエネルギー需給が高まる中で、株式市場から原油先物市場に資金が流入することがしばしば指摘されていた。しかし、この3月末から4月にかけての価格上昇では、むしろ米国国債相場から資金が流入したとの分析がある。このように、先物市場においては、多額の流動資金が動くことによって、原油価格の上昇が見られており、実際の需給バランスでは供給量が依然として多い。現在の価格の上昇について、カタルのアティーヤ・エネルギー産業相は4月17日、原油価格が高すぎるとの認識を示した上で、OPECには原油価格を抑える手立てはないと語っている。
現在、米国経済を支えている外国からの資金流入は、アジア(日本を含む)からが41.2%、欧州からが39.7%であるが、原油価格の上昇にともない、対米投資資金を絞り込む可能性もある。仮に、米国の経常赤字を埋めている外国からの資金流入に影響を与えるようなことになれば、ドル安の発生が懸念される。そして、現在も基軸通貨であり続けているドル安の影響としては、(1)対米貿易、(2)米国債の為替差損等が挙げられる。
こうした状況を見るだけでも、米国がイランとの交渉で殆どカードを切れない状態にあり、イラクへの武力介入前とは、かなり様子を異にしていることが分かる。

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3月21日、国連安全保障理事会のイラン核問題に関する2回目の非公開協議が延期された。その理由は、中国・ロシアが歩調をあわせ、議長声明に盛り込まれる「核兵器と生物・科学兵器の拡散は国際の平和と安全に対する脅威になりうる」との文言の削除を求めたからだと報じられている。
このロシア・中国関係では、プーチン大統領が同21日から2日間の日程で中国を訪問している。そこでは、イラン問題、北朝鮮問題の協議に加え、エネルギー協力、宇宙開発協力の強化・拡大が検討されている。中でも、エネルギー分野では、東シベリアと西シベリアからの中国への天然ガス供給パイプライン建設計画が合意され、ロシアが年間600〜800億㎥の天然ガスを供給することとなった。このような両国関係と対照的に、中国外務省は、米国の「国家安全保障戦略」(3月16日発表)に対し、無責任な指摘との反駁を行っている。急増するエネルギー需要から見れば、中国がエネルギー安全保障の観点からロシアを戦略的パートナーと捉え、政策を展開するのは当然だろう。
ここで注目されるエネルギーは、ロシアのイルクーツク平原部の地下にあると推定される莫大な埋蔵量の石油・天然ガスである。これを中国と結ぶルートとしては、イルクーツク州コヴィクタのガス田を中国北東部につなぐパイプライン建設とモンゴル共和国の領土を通るルートが考えられた。このうち、モンゴル・ルートについては、距離が短くコストが低く抑えられるためロシア等は推進を検討したのだが、モンゴルを自国領とみなす中国の一部の政治指導者の反対で進展を見なかったといわれている(2004年10月のプーチン訪中では合意できず)。未確認ではあるが、今回合意のアルタイ・ガスパイプラインが報道で伝えられるようにモンゴルの領土を通るものであれば、中国の政策転換として注目されるものとなる。さらに、もう一つのSiberiaパイプラインでは、エネルギー供給源が問題となる。中央Siberia東部の生産力は潜在的には大きいが、現状では、タイシェト=ナホトカ間の本線(日本)と大慶への支線(中国)の両方への供給はできない。中国は、大慶ルートの先行をロシアに求めており、日ロ平和条約が結ばれていない中、中国の動きが気がかりである。中国は、エネルギー供給源として、その他にもカザフスタンとの石油・天然ガス・パイプライン計画を有している。しかし、このようなパイプライン計画には巨額の費用がかかる。また、天然ガスの市場価格も上昇している。この現状から、中国は、スーダンでの人権問題、イランでの核開発問題等でも国際秩序形成より国益優先の資源外交を展開している。中国が人治国家から法治国家となったのは20世紀末である。今後、この国がどのような資源外交を展開するのか、大いに注目されるところである。

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