米国を見る目

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全20ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]

世界各地でクリスマスイヴを迎えようとしている人々がいる。
1215日にバグダードで静かな式典をもって米軍の「自由イラク作戦」は公式に終了し、18日に最終の部隊がクウェートに出国し、イラクからの撤退が完了した。このイラク駐留米軍兵士も家族のもとでのクリスマスを迎えようとしている。
その一方、ひと時の幸せに水を差すかのように、米軍第4師団には「2012年夏にアフガニスタンに駐留する」との伝達がなされた。
 
オバマ米大統領は、アフガニスタンでの米軍の展開について、2012年末までに33000人を撤退させ、2014年末までに残り68000人も撤退させる計画を示している。
しかし、アフガニスタンでのタリバン勢力の抵抗が継続する中、北大西洋条約機構(NATO)軍のヘリによる空爆でパキスタン兵24人が死亡する事件が起き、これまでも関係が悪化していた米国・パキスタン関係は最悪の状況となっている。さらに、同事件に関する米国側調査報告に対し、パキスタンは異なる見解を示している。
このため、(1)国際治安部隊(ISAF)への補給路がパキスタンによって遮断されており、再開のめどが立っていない、(2)パキスタンのザルダリ政権とギラニ陸軍参謀長を中心とする軍との対立が表面化している。
こうした状況に鑑みれば、ISAFのアレン司令官が2016年までの軍事力維持に言及し始めているように、2014年に完全撤退することは難しくなり始めている。
 
2001年の9.11米国同時多発テロ事件を契機として、同年10月に開始したアフガニスタンでの武力行使から11年が過ぎた。今後も数年間は、アフガニスタンでクリスマスを迎える兵士と、その安全を祈る家族を米国は抱えることになる。
先日逝去したチェコのハベル元大統領は、かつて、幸せになるための手段として市民は「自由」を求めたと語ったと聞いた。米軍の兵士たちは、アフガニスタンの戦場で、何を願いながらクリスマスイヴを過ごすのだろうか。

米国の中東からの撤退

米国のオバマ政権と野党の共和党の財政赤字削減協議は、ぎりぎりのせめぎ合いが続いている。米国は82日までに、この問題に決着をつけ、連邦債務の法定上限の引き上げ合意ができない場合、債務不履行(デフォルト)になる。
米国が債務不履行になると、年金の支払い、軍人の恩給などをはじめ政府支出に大きな障害をきたす。そして、米国債の信頼が揺らぐと、米国債を大量に保有している中国、日本、サウジアラビアなどの国々は打撃を受け、世界経済に大きな影響が出ることが懸念される。
 
その中、アフガニスタンからの米軍の撤退が予定通り開始された。そして、米軍は本年末にもイラクからの撤退が予定されている。
オバマ政権にとって、財政面を考えれば、中東地域への関与を低レベルにするとの選択には合理性がある。
そして、その方向性を明示したともいえるのが、「アラブの春」への対応である。中でも、リビア問題においてNATOの関係で見せた後方支援の姿勢、バーレーンの市民抗議活動に対するGCC諸国の「湾岸の盾軍」の派遣を黙認したことは象徴的であった。
 
このような米国の内向な対外政策は、オバマ政権だけでなく全米市長会議でも見られている。米軍のアフガニスタン完全撤退を早めて、その分の費用を国内の雇用促進策に回すようにとの宣言を行った。
米国は国家財政が悪化する中、連邦、州などで39000人(6月だけで)の雇用をカットしたこともあり失業率は高止まっており(年率9%台)、多くの米国民の関心の中心はオバマ政権の経済政策となっている。
 
では、オバマ政権はこうした国民の声を受け、経済政策に力を入れることで、来年の大統領選挙で再選できるだろうか。
恐らく、その問題への対応だけで再選できるとは言い難いだろう。大統領選挙のカギとなるのは、国際経済の動向および中東諸国の政治面での安定化だろう。
特に、イラク問題ではシーア派過激派武装組織の動き、アフガニスタンではタリバーンの今後の動向が注目される。
また、アルカイダをはじめとしたイスラム過激派の国際テロ組織の動向も目が離せない。
 
そこで気になる国はパキスタンである。
パキスタンと米国は5月のビンラディン容疑者殺害事件以降、不協和音が高まり、米国は711日に対パキスタン軍事援助の凍結を発表した(5億凍結、3億返還)。
このような米国の対外政策は、一層パキスタンを中国寄りにさせている。さらにパキスタン国内のイスラム過激派組織が対インド・テロ活動を行う素地をつくることにもなっている(2008年に続いて、713日にインドのムンバイで同時テロ事件が発生した)。
 
オバマ政権は、シリア、イエメンなどでも燻り続ける「中東の春」への対応について、そろそろ重い腰を上げなければならなくなっている一方、南アジア政策への見直しも迫られている。
中東、イスラム諸国からの米国の存在感の後退が、国際情勢と来年の米大統領選挙にどのような影響を及ぼすのか、注目される。
 
617日付朝日新聞が、「ウィキリークス」提供の米公電の中から、20087月の北海道洞爺湖サミット時の日米首脳会談で、ブッシュ米大統領(当時)がアフガニスタン本土への自衛隊派遣を要求していたことを明らかにした。その内容は、CH47大型輸送ヘリの派遣、または軍民一体型の地域復興支援(PRT)の実施の選択を迫るというものだったようだ。
報道によると、この要求に対し福田総理(当時)は、陸上自衛隊の大規模な派遣は自らの政権が弱体であるため不可能と回答をしたとのことだ。
 
このように、日本の対外政策立案において、米国の外交圧力という国際要因が大きな影響力を持つことがしばしば見られる。しかし、この場合は違った。当時の福田総理が、自衛隊の海外派遣と憲法9条問題について、どのような信念を持っていたのかは確認できないが、当時のアフガニスタン情勢に鑑みても、この意思決定は妥当性があったと評価できるのではないだろうか。
 
さて、福田総理と異なり、政策選択において国内要因よりも国際要因を重視したのが、リビア問題でのオバマ米大統領ではないだろうか。
米国のゲーツ国防長官が610日、北大西洋条約機構(NATO)本部で、NATOの対リビア作戦について米国に過度に依存していると述べた。
リビア問題では、フランス、英国が主導でNATOを動かし、国連の安保理決議に基づく軍事介入という正統性を得て現在の解決策が実施されている。
米国にとってこの問題は、環地中海の安全保障の確立という観点から武力行使という政策立案を検討する必要性はあった、しかし必ず行動を選択しなければならないという死活的問題ではなかった。
したがって、617日付ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)が報じているように、司法省と国防省は、米国がリビアの軍事作戦に参加するに当たっては、議会承認の必要性があると指摘したと考えられる。
こうした国内要因となる指摘をオバマ大統領が無視して意思決定を行ったとすると、よほど強い国際的要因が存在していたと考えられる。
 
このオバマ政権の意思決定について、615日(米国時間)、米下院の超党派議員10人(共和党7人、民主党3人)が、ワシントン連邦地裁に、憲法や戦争権限法に違反していると提訴した。この提訴の前には、下院議長のペイナー氏がオバマ大統領に、リビアでの軍事作戦は違法となる可能性がある旨を警告した書簡も送っている。
これに対し、オバマ政権側は、(1)作戦の指揮権はNATOに移っている点、(2)米軍の軍事行動は無人機によるリビアの防空施設攻撃や後方支援(給油、情報収集)である点、(3)地上部隊の展開をしない点などを根拠に、議会承認を得る必要がある戦争行為ではないとの見解を示している。
 
ここで注目したい点は、安保理決議1973号に基づく限定的軍事作戦であれば戦争行為とはみなされず、「平和強制」としての武力行使とみなされるとの解釈が、米国の司法でどのように判断されるかである。
仮に合法であるとの判断がなされると、先のブッシュ前大統領が国連安保理の武力容認決議に基づくアフガニスタンでの平和構築活動に日本も参加するよう促したことについて、その理由を考える糸口ともなる。
日本においても、国連安保理決議のもとでの自衛隊派遣は、日本国憲法の前文に謳われている、国際平和を追求する精神から考えて合法であるとの考えに立つ人もいる。
 
このような法的論争とは別に、対外政策決定に影響する国内要因の一つに「世論」がある。
オバマ政権は、このリビア問題で既に71590万ドル(573億円)を投入したと公表している。
米国の景気が低迷している中、同政権の経済政策については米国民からの厳しい批判がある。したがって、イラク、アフガニスタンでの米軍の関与の縮小を進める一方で、リビアでの戦費を拡大することは矛盾した政策だとの指摘が強まる可能性がある。
見方によっては、オバマ政権はブッシュ前政権との違いを強調しようと国際協調の対外政策をとるあまり、かえって国内の批判を大きくしてしまったとも見える。
ここからも、今日の国際社会における対外政策立案、そして政策選択の難しさがわかる。

開く トラックバック(1)

この1920日と仙台市、青森市を訪問し、東日本大震災の被災地の状況について学び、翌21日には金沢市で開催された日本行政学会に参加し、民主党政権の政策立案に関する発表を聞いた。
この3日間、「がんばろう日本」という標語は掲げられているが、統一的方向に日本全体が動いていないのではないかとの感を持った。政治家と公務員、市町村と県、県と国など、様々なレベルで現状認識にギャップがあるようで、復興以前の復旧さえおぼつかない状況にあるようだ。今更ながら、「政治指導者の資質」がいかに重要であるかを痛感する。
 
さて本日は、中東情勢に関する「指導者」にまつわる話題を拾ってみる。
1はオバマ米大統領の519日の新中東政策の発表、第2はアルカイダ指導者ビンラディン容疑者が殺害されて後、518日に報じられたサイフ・アデル容疑者(エジプト出身、48歳といわれている)の暫定指導者選出、第3は、20日に訪米したイスラエルのネタニヤフ首相の発言、第4は、イエメンのサーレハ大統領の進退意思の揺らぎである。また、リビアのカッザーフィー指導者の政権への執着、シリアのバッシャール大統領のバアス党体制への拘りも、問題解決を長期化させている。
 
この中でリーダーシップを一番感じさせたのは、やはりオバマ米大統領の新中東政策の発表だろう。
同大統領はその中で、(1)中東和平問題の解決について1967年以前(第3次中東戦争前)のパレスチナの地を基本に「パレスチナ国家」の創設を支持すると明言、(2)中東の政治社会改革を推進するために国際社会に債権放棄や貿易・投資の進行を提案した。
(1)については、ブッシュ前大統領も言及していたが、政策として明示したのは米大統領として初めてである。また、(2)については、「中東の春」と形容される中東の政治変化の成果を得る上で欠くことのできない国際協調政策の提示である。
そして、これらを推進することは、「テロとの戦い」を好転させる蓋然性を高めることにもなる。
 
このオバマ大統領の新中東政策について、20日、ホワイトハウスで会談したネタニヤフ首相は「幻想に基づく和平は、中東の強固な現実に潰される」と述べた。おそらく、イスラエルは同政策を、驚きをもって受け止めたのだろう。
来年に大統領選挙を控え、在米ユダヤ人団体の投票行動、資金力に鑑みれば、オバマ大統領の発表は、勇気と正義感を強く示すことができた行動であったと言える。
そして、パレスチナの市民をはじめ、他の中東諸国の市民に新たな時代の到来を予感させる発表であったと言える。
東日本大震災の被災地の人々をはじめ日本の国民が求めているのは、こうした予感を感じることだといえるだろう。
 
政治指導者として必要な資質の中に、人の意見に広く耳を傾ける能力、その上で、合理的思考で政策選択ができる能力、そして人に共感してもらえる高い表現能力が含まれることは間違いないだろう。
 

米国の戦略課題と日本

新年に入り、早くも13日経ってしまいました。
ドバイ視察後、雑務に追われてブログを更新できずにいたこと、お詫びいたします。
本年も、掲載記事に関する多様なご意見をいただければ幸いです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
113日、訪日中のエリオット・コーエン博士(ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際研究大学院教授、元ライス国務長官の上級顧問)が、「アメリカにとっての戦略的選択肢」というテーマで講演を行った。
 
博士は、今日の国際社会において、①中国の台頭、②現在の国際社会の秩序を否定する国(北朝鮮、イラン、ベネズエラなど)の存在、③国際テロリスト集団(アルカイダ)との戦いが、米国の戦略課題であると指摘した。そして、米国は、①政治的安定性と自己刷新能力、②軍事力、③経済力、④恵まれた同盟関係、⑤移民の流入による活力などを有しており、これらの戦略課題を解決する力があると自信を示した。
 
博士の話の中で印象的であったのは、北朝鮮もイランも、核兵器を保有することに価値を見出しており、決して開発を放棄しないだろうと述べたことだ。
この前提に立つと、「イランの核の脅威」を身近に感じているGCC諸国の中から、核軍備体制の構築を試みる国が出てくる蓋然性は高くなる。こうした核拡散を防ぐ方法の1つとして、北朝鮮やイランの国内外で反政府活動が活発になることが期待されている。
 
このイランについて、対岸のドバイから見ると、国連の経済制裁(4度目)の効果が出てきていると言えそうだ。
その背景の1つに、ドバイの経済バブルが弾けたことがあるらしい。ドバイは歴史的にイランとの結びつきが強く、多数のイラン人が経済活動を行っていることで知られている。しかし、ドバイ経済が落ち込んだことで、およそ20万のイラン人がドバイを離れたと言われている(しかし、現在でもおよそ40万人いるとみられている)。さらに、ドバイは経済再建のために、イランと領土問題で対立状況にあるアブダビから財政支援を受けたことも関係している。
しかし、主要な要因は、110日からクリントン米国務長官がUAE、オマーン、カタールを歴訪し、対イラン経済制裁への協力を要請していることからもわかるように、米国がイランに対する姿勢を明確にしはじめたことだと言える。
 
米国がこのように政策を変化させているのは、北朝鮮とイランの軍事協力関係が進み、今後5年以内に両国がミサイル技術を向上させ、核弾頭を小型化させることで、米国への脅威がさらに高まると見ているからだろう。
米国の同盟国である日本の外交政策は、こうした米国の危機感を共有した上で、決定すべきだろう。それは、日本の北東アジア地域における安全保障の確保の観点からも必要なことだと言える。
 

全20ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]


.
cigvi2006
cigvi2006
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

過去の記事一覧

検索 検索

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

お肉、魚介、お米、おせちまで
おすすめ特産品がランキングで選べる
ふるさと納税サイト『さとふる』
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事