米国を見る目

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12月28日、2004年の米大統領選挙で民主党の副大統領候補であったジョン・エドワード氏が、ハリケーンの被災地ニューオーリンズで、2008年大統領選の出馬表明を行った。この2008年の大統領選挙に関し、現在のところ注目点が2つある。
1つ目は、白人男性以外が大統領に選出されるのか、という点である(これまでの43人のうちカトリックはケネディー大統領のみで、他は全て白人でプロテスタント)。10月の世論調査では女性が大統領に選出されても良いと、61%が回答している。2つ目は、中国を除く国連安保理常任理事国の政治指導者がこの時期までに交替している予定という点である。2007年にはブレア英首相とシラク仏大統領が、そして2008年にはプーチン大統領(プーチン氏の続投を予想する報道もある)が退任予定である。
話題が豊富な次期米大統領選挙の立候補者として、民主党ではエドワーズ氏以外に、ヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク州選出、元大統領夫人)、ビル・リチャードソン・ニューメキシコ州知事(ヒスパニック系)、バラク・オバマ上院議員(イリノイ州選出、アフリカ系)などが話題に上っている。中でもヒラリー上院議員は、現在、世論調査ではトップを走っている。また、12月20日付のワシントン・タイムズは、選挙資金に関して、同議員は予備選挙で3億5000万ドル、一般投票で2億5000万ドルは調達できると報じている。一方の共和党であるが、通常は副大統領が出馬するのだが、チェイニー副大統領は健康不安を抱えており、年齢的に見ても立候補しない可能性が高い。候補者としては、ジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)、ルディ・ジュリアーニ(前ニューヨーク市長)、ミット・ロムニー・マサチューセッツ州知事(モルモン教徒)、そしてコンドリーザ・ライス国務長官(本人は否定している)などの名前が挙がっている。
米大統領選挙のポイントの一つは選挙資金である。大額の資金が必要であるため、大口の献金を集めねばならない。このため、ユダヤ系移民の人々が大きな影響力を持っていると言われている。2007年の米国の中東政策を注目する所以がここにある。
こうして見ていくと、Forward newspaper(週刊紙)が、ブッシュ政権は2007年末までにパレスチナ国家樹立を目指していると報じたことも理解できる。どうやら、2007年は、現在の常任理事国の首脳が残っている第2四半期までに、様々な政治変化がみられる可能性がありそうだ。
なお、中東地域であるが、来年は火薬庫に火がつく可能性がいくつかある。イラク、レバノン、パレスチナ、イラン、アフガニスタンの動向はいうまでもないが、シリア(3月)、アルジェリア(5月)、ヨルダン(6月)、モロッコ(9月)、オマーン(10月)、トルコ(11月)などで国民議会選挙が予定されており、イスラム主義者の政治参加や台頭など、その動きも注目される。
12月7日、ブッシュ・ブレア両首脳会談がホワイトハウスで持たれた。会談後の共同記者会見で、ブッシュ大統領は、6日の発表された「イラク研究グループ(ISG)」の報告書の内容に言及し、「真剣な検討に値する」との評価を示した。そして、両首脳ともイラクに対する新たなアプローチが必要であるとの見解を表明した。ブッシュ大統領の“新アプローチ”は、クリスマス前までに発表される予定である。そこでは、ブレア首相が望んでいる内容――(1)マリキ政権支持、(2)周辺諸国によるマリキ政権支援、(3)パレスチナ問題への取り組みなど――にも十分配慮されると見られる。
その中で、気になる報道がある。それは、12月3日付英紙サンデー・タイムズのイスラエルのオルメルト首相とサウジアラビア高官との会談(再度)に関するものである。この両国が会談を行うとすれば、その目的は、(1)レバノンのヒズボラ、(2)イランの核開発、(3)パレスチナのハマスなどへの対応であろう。この両国は、イラン、シリアをはじめとするシーア派の対等に関する懸念を共有しており、ブッシュ大統領の“新アプローチ”に重要な役割を演じることが出来る。そうすると、11月25日のサウジのアブドゥッラー国王とチェイニー米大統領の緊急会談が大きな意味を持って浮き上がってくる。同会談は、ロイターの報道によると、アブドゥッラー国王がチェイニー副大統領を招待し、米国のイラク政策や中東和平政策との調整を行ったとされている。サウジをはじめ、中東地域のスンニー派諸国は、(1)米国のイラク撤退にともなうイラクでのイランの影響力の拡大への懸念、(2)レバノンのシニオラ政権の崩壊への懸念、(3)イランの核開発への脅威、(4)中東和平の進展の希求、を共有している。12月5日、のカイロでのアラブ連盟主催の外相会議、12月8日のGCC外相会議(9日より首脳会議)では、これらの点への対応策が協議されている。そこでは、(1)中東和平問題に関して2002年のアラブ首脳会議(ベイルート)でのアブドゥッラー提案の実現を目指し、イスラエルに働きかけを行うこと(サウジアラビア、バハレーン、カタル、オマーン、UAE,モロッコ、チュニジアとイスラエルとの和平条約締結を検討との報道もある)、(2)米軍がイラク安定化までの駐留を要求することなどが検討されているとの報道もある。
ISG報告書は、昨日のブログでも書いたように、米国の国内の亀裂(政府と国民、共和党と民主党)を修復するには、超党派の政策提言が不可欠との認識から生まれたものであろう。しかし、同提案の実現においては、上記のような中東地域でのシーア派の台頭に対するスンニー派アラブおよびイスラエルの懸念を払拭できるようなアプローチが不可欠となる。ブッシュ大統領の“新アプローチ”は、こうした懸念の声をどのようにくみ上げるのか、注目したい。
12月6日、米国の超党派(共和党、民主党各5人)による「イラク研究グループ(ISG)」が、イラク情勢について約9ヶ月の検討を重ね、全会一致の提言(79項目)を報告書(ISG報告書)にまとめ、発表した。米国のイラク政策については、ホワイトハウス、国務省、国防省などでも見直しに入っており、今回の提言がそのまま受け入れられるわけではないだろう。しかし、中間選挙から約1ヵ月という時期に超党派の政策提言が出されたことは、イラク戦争を巡り米国内の政治的対立がいかに大きかったかを物語っているようにも思える。そして、この提言を“超党派”でまとめることにより、米国がその対立を乗り越えて、反テロ戦争に向き合う体制を再構築しようとしていることが見て取れる。
ISG報告書を受け、ブッシュ政権は近くイラク政策の変更を発表する予定である。そこでは、同報告書で提言された(1)イラク駐留米軍の任務を戦闘からイラクの治安部隊の教育や後方支援に変更、(2)この変更により戦闘部隊の多くを撤収させるという考え(2008年第1四半期を目標に削減)に関しては、おそらく同様の政策が打ち出されるだろう。また、ISG報告書の提言には、マリキ政権が既に実施を発表した政策と類似しているものも含まれている。特に、イラクの国民和解と治安回復を目的とした周辺諸国も含めた会議の開催によって、「イラク支援グループ」の形成がはかられようとしている点が注目される。
ISG報告書の中の、反テロ戦争への言及はより注目すべき点かもしれない。同報告書は、イラク情勢が現状のまま混沌とするとアルカイダが政治宣伝上の勝利を得て、活動拠点を広げかねないとの懸念を表明している。そして、戦闘部隊のイラク撤退後も特殊部隊は残し、アルカイダ掃討の任務に当たらせるとしている。ここに、ISGメンバーがブッシュ政権と共有している中東地域情勢についての認識が見て取れる。それは、アルカイダの活動も含めた中東地域のイスラムの覚醒が、中東の穏健諸国の指導者や米国の政策に悪影響を与えることに対する懸念である。例えば、今年10月15日に「イラクのアルカイダ機構」が核となるスンニー派武装組織「イラクのムジャヒディーン評議会」が行った、「イラク・イスラム国」の建国宣言である。これは、現行の“イスラムは法根源の一つ”とするイラク憲法に基づく国家とは異なり、イスラム法に基づく国家を目指すとの宣言である。内戦の最中、アフガニスタンでタリバーンが台頭してきたことを髣髴とさせる動きである。
このようなイスラム主義に基づく政治の動きは、レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマス、さらにはエジプトのムスリム同胞団など中東地域に拡散している。ISG報告書は、こうしたイスラム潮流が高まる中、その一つの震源となっているイラクへの対応はもちろん、中東地域全体の動向に、米国が国内的に団結して対応せねばならないと警告しているように思う。穿った見方かもしれないが、ISGのメンバー10人は9ヶ月をかけて、国際社会の近未来を洞察し、イラク問題だけでなく「イスラム主義の台頭の中での米国の新中東戦略」の方向性も示したのではないだろうか。これに対し、ブッシュ政権がどのような答えを出すのか、注目される。
中間選挙後、米国のイラク政策の前面見直しが国際社会の注目を集めている。民主党のカール・レビン氏(次期上院軍事委員会の委員長候補)などが提唱する段階的撤退案に対し、撤退目標を設定することは武装勢力を勢いづかせることになるとの反対意見が、ボルテン大統領首席補佐官やマケイン上院議員(共和党の有力な次期大統領候補の一人)から出されている。こうした議論に加え、周辺諸国(イランとシリアも含む)で構成する国際会議設置案なども出されている。そこで、イラクの復興状況について少し見ておきたい。
政治面では、11月12日、非公式な会議の席ではあったが、マリキ首相が現状の帰属利益集団間の対立を打開するために内閣改造の必要性があると言及したと報じられている。治安面では、国連は1日につき100人が抗争で死亡していると推定している。また、イラク保健省は、2003年3月以降でイラク民間人の死者数は15万人に達したと発表した。地域差はあるもののイラクの治安は悪化しており、このため経済面での復興も遅れている。仮に、こうした状況でイラクから米軍が段階的に撤退すれば、ベトナム問題がカンボジアに飛び火し大変な犠牲者を出した歴史の悲劇を、繰り返す恐れもある。つまり、イラクでのイスラム過激派の自爆テロ攻撃が成功したとみなされ、それがアフガニスタンに飛び火し、タリバン勢力がカルザイ政権を飲み込んでしまわないとも限らない。
イラクでの自爆テロや帰属利益集団間の抗争は、米国の撤退如何に関わらず、続いていくだろう。国際協力の観点からみれば、イラク問題をローカルな地域紛争レベルに封じ込める努力が大切となる。ブッシュ大統領は、ペース統合参謀本部長に対し、イラク戦略の見直しを示唆した。政策の修正は、単にイラクだけではなく、周辺諸国への影響も考慮知れなされるべきである。これに失敗すると、アフガニスタンやレバノン、パレスチナなどに悪影響を与えることは確かである。さらに、武装イスラム過激派勢力を勢いづかせ、反テロ戦争をますます混迷させていくことになるだろう。米国が中東地域全体のバランスにどれだけ細やかに配慮できるかが注目される。
11月11日、中東地域に関係する2つの大きな出来事があった。第1は、国連安保理において米国がイスラエル軍のパレスチナのガザ地区のベイトハヌーンで起きた住宅砲撃事件への非難決議案(カタルが提出)に拒否権を発動したことである。第2は、レバノンで2005年のハリーリ元首相暗殺を裁く国際法廷設立案(国連最終案)に対しシニオラ首相が支持の姿勢を示したことにより、ヒズボラとアマルのシーア派の5閣僚が辞任したことである。この2つによって、東地中海地域の将来に対する不安は一層高まったと言ってよいだろう。
第1について、決議案に対する米国以外の動向は、安保理15カ国中10カ国が賛成、英国、日本、デンマーク、スロバキアが棄権に回っている。ボルトン米国連大使は拒否権行使の理由について、「決議案は事件を公正に性格付けていない。イスラエルに対する偏見に満ち、政治的動機で満ちている」(11月12日付CNN日本語電子版)と述べている。こうした米国の対応に、国際社会の多くの人々に失望感を抱いている。
第2の点について、故ハリーリ氏と親交が深かったシニオラ首相が支持を表明するのは当然であろう。ヒズボラ他の閣僚の辞任の直接の理由は、ヒズボラとキリスト教徒への閣僚ポスト増加の要求に、反シリア派閣僚たちが反対したことによる。しかし、ヒズボラのナスラッラー師は、ハリーリ氏暗殺に関与したとの疑いがかけられているシリアを擁護するため、シニオラ首相を退陣に追い込む姿勢を強めた感もある。11月6日、ようやく国民融和のため協議のテーブルに着いたレバノン各派であったが、今回のヒズボラ等の行動で国内には緊張感が高まっている。シニオラ首相は日本の報道機関とのインタビュー(11月12日)で、国内に二重の権力は認められない旨述べ、国連安保理決意に基づくヒズボラの武装解除も視野に入れていることもにおわせた。
米国にとって、レバノンからシリアを撤退させたことは、同国の中東政策における数少ない成果である。また、中東地域でのシーア派の対等を恐れるスンニー派諸国と共通戦略が取れるところでもある。しかし、今回の安保理での拒否権の行使は、アラブ諸国の反米意識を一層高め、この成果をも台無しにする恐れがある。11月11日、スノー米大統領報道官が、ヒズボラとイランは危険かつ国際的なテロと強い結びつきがあると述べている。このヒズボラ、イラン、そしてシリアのシーア派勢力は、中長期的には中東地域からの米軍の影響力の排除を目指している。その意味では、今回の拒否権行使の代償は高いものになる可能性もある。

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