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11月10日、イランではハーメネイ最高指導者やアフマディネジャド大統領が、米国の共和党の敗北はブッシュ米政権の敵対的外交政策が失敗したことを意味している、と述べた。今後、イラン革命以来、関係回復が見られない米国・イラン関係に変化は見られるのか、少し考えてみたい。 現状の両国の関係を見る上でのポイントとして、第1はペルシャ湾の安全保障問題、第2は核の拡散問題が挙げられる。 米国は現在、バハレーンには海軍基地を、カタルには空軍基地をおいている。また、ペルシャ湾岸諸国間には領土(海上、海底)不確定問題が現在でも存在しており、GCC諸国の多数は米国と締結している軍事協定に意味を見出している。これに対しイランは、1980〜88年のイラン・イラク戦争後の国連安保理決議に含まれるペルシャ湾における外国勢力の撤退を理由に、同地域における米軍の存在を非難してきた。11月7日には、イランの国防相はペルシャ湾岸諸国のみの安全保障協定を提案すると述べた(8日付イラン・デイリー電子版)。このように見ると、米国とイラン間の利害調整は難しい。 第2の核拡散問題では、10日、ロシアを訪問中のイランのラリジャニ最高安全保障委員会事務局長は、英仏米のイラン制裁安保理決議案を否定するかのように、同決議案を修正するロシア案が採択されなければイランが国際原子力機構(IAEA)から脱退することもあると述べた。国際エネルギー機構(IEA)によれば、国際社会には現在、443の原子炉が稼動中で、26基が建設中である。国際法上は、イランにも核開発の権利がある。この点は、10月のイスラム諸国会議(IOC)の外相会議でもその旨の声明が出されている。このように開発途上国の代表者としてイランが核開発を続ける限り、国際社会の核開発管理者となろうとする国(P5、国連常任理事国)との関係は難しい。 以上のような点を改善するには、「イラク研究グループ」が言及すると思われる、イランとシリアを含む周辺諸国との協調体制によるイラクの安定化政策が動き出す必要があるだろう。この政策は、単にイラク問題の解決を図ろうとするものではなく、イラン・米国対話という新たな外交局面を生み出し、さらに中東和平問題においても、シリア・イスラエル交渉の再開の動きを導き出すことが視野にある。そのことで、イスラエル・パレスチナ間の和平交渉も前進する。ブッシュ政権は、アルカイダに気をとられたことによって、アフガニスタンでのタリバンの復活を許し、イラクでのシーア派の発言力を強めさせたことによって、中東地域におけるシーア派の台頭を生んでしまった。この大きな2つの情勢変化に米国が対応するには、イランとの対話しかないのかもしれない。ゲイツ新国務長官は、米外交評議会の対イラン関係の特別チームに所属し、イランとの対話の重要性を唱えた人物でもあり、同氏の就任は対イラン関係の変更をも意味するのかもしれない。 ☆もう一つのブログ「複眼で見る中東報道」(http://cigvi.exblog.jp/ )では、中東現地報道(英語、電子版)より、日本のマスメディアの落穂拾いを中心に掲載しています。ご興味があれば覗いてみてください。
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米国を見る目
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国際社会が米国の中間選挙に注目している間に、再び、パレスチナ自治区のガザ地区で民間人を巻き込む悲劇がイスラエル軍によって引き起こされた。11月8日、ガザ地区の北部のベイトハヌーンにおいて、イスラエル軍の戦車部隊が民家7件に砲撃を加えた。この事件でパレスチナ側に、死者18人、負傷者54人の犠牲者が出た(ロイター通信)。これは過去4年間で最悪の民間人被害者の数である。こうした、イスラエル・パレスチナ関係をめぐる状況を考えてみたい。
今年6月、イスラエル兵の拉致事件が発生して以来、イスラエル軍の自治区への展開がしばしば見られており、ベイトハヌーンでも武装勢力掃討作戦(1日から1週間)が終了したばかりであった。イスラエルが当初、同事件はイスラエル軍へのロケット弾攻撃の拠点を攻撃したものだと説明し、正当性を主張していた。しかし後日、同軍の調査チームはレーダーの故障が原因だと発表した。このイスラエルに対し、国際社会は9日、国連安保理事会を開催し、公開で同問題を協議した。また、アラブ諸国は10日頃には安保理で非難決議案を提案する方向である。 イスラエルは占領地において、占領に対する解放運動を標榜し活動するパレスチナ側武装勢力への攻撃の際、しばしば誤爆、誤射によりパレスチナの民間人犠牲者を出してきた。今回も、子供7人、女性4人が犠牲となった。こうした中、パレスチナ側は、ハマスが対イスラエル武力攻撃を宣言した。また、パレスチナ暫定政府内ではアッバス議長とハニヤ首相が協議を重ね、ファタハとハマスによる挙国一致政府の樹立に向けて動いている(アッバス議長とハマスのメシャル政治指導者が和解の方向にあるとも報じられている)。しかし、挙国一致内閣がイスラエルの生存権や過去の合意文書を認めない限り、国際的な支援は受けにくい状況にある。 一方、米国は、中東和平問題で、イスラエルの良い理解者であり続けてきた。しかし、今月に入り、パレスチナの死者は80人を超えている。この状況で、両者に自制を呼びかけるだけでは国際社会の対米不信が募るだけである。中間選挙を終え、立法府に対する国内のユダヤ圧力が影響を弱める中、ブッシュ政権がイスラエル非難決議案に対し、国連安保理において拒否権行使を行うかどうかが注目されるところである。 かつて、冷戦(封じ込め政策)をとったトルーマン、アイゼンハワー両大統領とも2期目の中間選挙は大敗している。しかし、彼らの業績への評価は今日でも高い。ブッシュ大統領にとって、選挙がないこの2年間こそ、国内のユダヤ・ロビーの活動や福音派を気にせず、中東和平プロセスを動かせる好機といえるのかもしれない。 |
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11月8日(現地時間)、米国の第21代国防長官ラムズフェルド氏が退任した。同氏の米国防長官としての任期は最長で、2001年1月20日から2006年11月8日であった。私としては、米国の昨日のブログで指摘した内容が、このように早く現実のものになるとは、予想外であった。それだけ、ブッシュ政権のイラク政策が行き詰ってきたといえるだろう。
11月6日就けのフィナンシャル・タイムズ紙は、米中央軍司令官によるイラクはほぼ完全な混沌状態に陥りつつあるとの報告を紹介している。現状、米軍の増派も効果がなく、イラク連邦制を推進すれば内戦の懸念が高まるなど、打つ手は限られている。治安回復、国家再建に期待できる数少ない方策の一つが、国民和解会議であり、それに周辺諸国を巻き込むという案である。これは後任となるロバート・ゲイツ元CIA長官も所属している「イラク研究グループ」が模索している有力な打開策だといわれている。 ブッシュ政権の中東政策は、イラク、アフガニスタンに対して武力介入を行っており、パレスチナ(ハマス)、レバノン(ヒズボラ)、イラン、シリアとの政治対立は日に日に厳しくなっている。そして、イスラム過激派(組織)のテロとその対応としての対テロ戦争は、米国を苦しい状況に追い立てている。ブッシュ大統領の残りの任期2年は、民主党に議会を押さえられている。その中では、民主・共和が協調した政策立案を心がけるよう動かざるを得ないだろう。 そうした米国とは離れて、中東地域のイランやイスラエルはさらに独自の国益を求めた政策を実施するようになるだろう。それに加え、エジプトやサウジアラビアなどでのイスラム原理主義者の勢いが増すと考えられる。こうしてみると、中東情勢の今後は不安なトレンドを描いていくと予想される。 |
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11月7日、米国の中間選挙で12年ぶりに民主党が下院(定数435)で過半数を奪還した。接戦が予想されていたオハイオ、ニュージャージー、メリーランド、ミズーリ、ロードアイランドなどの選挙区で民主党が勝利したことは大きい。また、上院でも民主党が過半数を制する可能性が見えてきた。さらに、38州で争われた州知事選では民主党が20州を制し、全50州中28州が民主党となった。 今回の中間選挙は、ブッシュ政権のイラク政策に対する信任投票であったと報じるメディアも多い。そこで、選挙の争点について少し見てみたい。 11月1日、CBSやニューヨーク・タイムズの世論調査では、米国民の70%が現職交代を求めている。また、CNNの出口調査(複数回答)では、投票のポイントは「政治倫理と汚職」が42%でトップであった。次いで、テロ(40%)、経済(39%)となり、イラク問題は第4位で37%と報じられた。また、AP通信の世論調査でも、4分の3が政治倫理を選挙の争点に挙げていた。大物ロビイストのエーブラモフ氏を取り巻く政界汚職事件は、イラク問題と合わせて、共和党にはかなり打撃だったようだ。また、倫理面でも共和党は不利であった。10月、議会のアルバイト少年へのわいせつ電子メッセージ送付問題から来るダメージは予想外に大きかったといえるのではないだろうか。なお、共和党では過去2年間でスキャンダルで4人が辞職している。 経済については、7−9月期の実質国内総生産(GDP)の伸びは1.6%と減速している。また、製造業雇用も減少している。選挙戦終盤で、共和党が経済政策の実績を強調したが、こうしたこともあって、あまり効果が見られなかった。 イラク問題が争点だったとすると、有権者は、とりあえずブッシュ政権に「NO」を示すために投票したのだろうか。7月に民主党が発表した選挙公約にはイラク問題への言及はない。イラク問題では、同党内には極端なリベラル派が即時撤退を求める一方、ケリー上院議員のように段階的撤退案を指示する人物もおり、党としてのまとまりがないことは一般に言われていることである。 こうしてみると、今回の選挙結果は、“不人気な大統領と失敗した戦争”というイメージによって浮動票が動かされる一方、2004年の大統領選挙で共和党を支えた福音派などのバリュー・ポーター(価値観を重視する有権者)の積極的投票行動をとらなかったことが大きな要因だと推測される。もちろん、ブッシュ政権のイラク政策の失敗や、同政策をめぐる共和党内の対立も要因であることは確かではある。このような選挙結果を踏まえ、今後、ブッシュ政権のイラク政策は、ラムズフェルド国防長官の退任問題をはじめ、議会を中心とした国内調整に比重が移っていくだろう。それは、とりもなおさず、イラクにとっての悲劇となる可能もある。 ☆もう一つのブログ「複眼で見る中東報道」(http://cigvi.exblog.jp/ )では、中東現地報道(英語、電子版)より、日本のマスメディアの落穂拾いを中心に掲載しています。ご興味があれば覗いてみてください。
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10月26日、イラクのマリキ首相はロイター通信とのインタビューで、米国の武器援助と治安権限の委譲があれば、6ヶ月以内で治安回復が可能だと述べた。しかし、現実のイラクの治安は回復の兆しが見えず、10月の米兵の死者数は26日現在で100人を超えた。一方、イランでは27日、2基目のウラン濃縮装置にガスが注入されたとの報道が流れた。このように、ブッシュ政権の中東政策は現在まで大きな成果を上げられずにいる。ここで、その背景にある冷戦後の米国の中東政策について簡単に抑えておきたい。
第2次世界大戦後、米国の大統領は33代のトルーマン氏から43代のブッシュ氏まで、11人の大統領が中東政策に関わってきた。冷戦期間中の中東政策は、ソ連の影響力の封じ込め、石油資源の確保、イスラエルの生存権へのコミットが戦略の中心であった。この戦略は、ソ連封じ込めという大きな外交目的の一環であり、比較的明確な政策立案および実施を行っていた。 これに対し、冷戦後のクリントン大統領(1993年に就任)と現ブッシュ大統領は、対ソ封じ込め戦略という明確な目的を失ったため、中東外交の目的、目標を新に模索せねばならなくなった。とはいえ、国際経済の安定化に欠かせない石油の安定供給やイスラエルの安全保障という目的は冷戦後も継続されている。こうした状況下で打ち出された目標がクリントン大統領の「ならず者国家の封じ込め」とブッシュ大統領の「反テロ戦争」である。これらの米国の両政策に対し、国際社会ではグローバル化が進む中、多様な見方が表出てきた。米国もこの点に配慮し、国益を維持しつつ、戦略的敵対者になる可能性がある中国およびロシア関係に配慮しながら協調政策を進めてきた。しかし現実には、イラク戦争やイラン核開発問題など各国の国益が対立する問題では、国連などの舞台においても顕著な不協和音が聞かれている。それはロシアが資源大国として復権してきたことや、中国が経済力を高め自信を持ち始めていることとも関係しているのだろう。 米国の外交の基本的姿勢は歴史的に、「内向き」「外向き」に大別されることがある。また、「大西洋向き」「太平洋向き」に区分されることもある。さらに、「単独行動主義」と「多国間協調主義」にも分けられる。ブッシュ大統領は、冷戦期に対ソ戦略を積極的に展開したアイゼンハワー大統領やスターウォーズ計画を発表したレーガン大統領などと同様に、2001年9.11同時多発テロ以後は、外向きの外交政策をとってきた。仮に、11月の米中間選挙で民主党が勝利すれば、ホワイトハウスと議会のねじれが生じ、ブッシュ大統領も政策変更を迫られることになるだろう。また、大統領の2期目の残り2年はレームダック状況になるといわれている。こうしたことから、ブッシュ政権は内向きになり、何とか任期中に結果を出そうとするだろう。その結果、イラク、イランなど中東政策で、今以上に国際協調路線をとる可能性が高いのではないか。 |



